3話 ミルファ
ゴトンゴトン、ゴトンゴトン、ゴトンゴトン
馬車が揺れる音が辺りに響く。
あの後、俺とミルファはオヤッさんの馬車に乗り再び王都を目指し始めた。
「ミルファさん。戦闘ができて、教養があって、帰る場所が無いという条件で出されたのがあなただったのでしたが本当ですか?」
奴隷にさん付けはどうなのかな?と思いながらも丁寧に話しかける。
「一応、魔法は習っておりました。上級魔法がいくつかと最上級魔法が1種使えます。接近戦は苦手ですが後方から魔法の支援は出来ると思います。」
上級魔法がいくつかに最上級魔法が使えるだって!?
予想以上の返答だ。俺はせいぜい中級魔法が使いこなせるレベルだと思っていた。
魔法だけでいったら1年であるが毎日のように鍛えた俺より上だと思う。
威力や発動までの時間はわからないが最上級魔法が使える時点で4つ星ハンターになることができると思う。
「読み書きや簡単な演算などはできます。基本的なテーブルマナーや目上の方に対しての対応も心得ているつもりです。」
確かに丁寧な口調であるし、粗相の無い対応といっていいだろう。
それに俺はこの世界の文字が読めない。
日本語が通じるから文字も読める者だと思っていたが、ひらがなや漢字、アルファベットとは全く違うものであった。数字だけはアラビア数字であった為助かったが・・・
「帰る場所は・・・その・・・ありません。」
そう言って俯いてしまう。
一体何があったのだろうか?
最上級魔法を使え、かなりの教養があると思う。
それに身なりも立派だ。奴隷という雰囲気をかもしだしていない。
「ミルファさん、もし差し支えなければ君が奴隷になった理由を教えて欲しい。」
「はい・・・私は、私と兄は南の国ユークの貴族でした。私達2人が学校へ通うことが出来る程の余裕がありました。しかし先月私の親の所有地で大火事が起こりました。その火事は親の所有地だけでなく隣の地主の土地までも燃やし尽くしました。私の家はその処理に莫大なお金を払いました。それでもまだ何とか暮らしていけるだけのお金は残りました。そんな時です、ある商人がうまい話があると私の父に声をかけてきました。詳しい内容は知りませんが父はその話に乗りました。しかし、その商人は父が出した出資金を持ち逃げしました。そのせいで暮らしていけるだけのお金も無くなってしまいました。家にあるものもとっくに売り払ってしまい、残ったのは私たち2人だけでした。それで・・・私達の親は私達を条件付で奴隷商へ売りました・・・」
「なんだよそれ・・・全部、何もかも親の都合じゃないか!」
「仕方ないんです・・・だってそれしか方法は無かったんだし・・・それに条件付きで売ってくれたんです。普通はどこへでも売り飛ばしてしまうのに・・・」
「条件付きってどういうこと?」
「ハンターの人に売るという条件です。私も兄もハンターになるのが小さい頃からの夢で・・・」
「そっか・・・」
これ以上俺が何かを言っても辛い思い出を思い出してしまうだろう。
親の都合で売られてしまう。一体どんな気持ちなのだろうか?俺にはわからない・・・
それにもうひとつ気になることがある。
「なぁ、ミルファさん。何であの時兄さんと一緒に逃げなかったんだ?ここから王都までは歩いてでも何とかいける距離だし、向こうでハンターとしてやっていけたんじゃない?」
「確かにそうですけど・・・」
「だったら何で?」
「それは・・・ただ、助けてくれたお礼がしたかったんです。兄は逃げてしまいましたし・・・」
そっか・・・そうだよな・・・
一目惚れ・・・なんてラブコメ的展開は無いですよね・・・
すこーしだけ淡い期待を抱いていただけだよ、うん・・・
「じゃあハンターとしてしっかり働いて貰うから、これからよろしく頼むよ?ミルファさん!」
「はい!ご主人様!」
あれから1日とちょっと馬車で移動し俺達は王都へと辿り着いた。
同じ馬車の下、一夜を過ごしたのだが、まぁ予想通り何も起きなかったわけで・・・
別に期待とかしてなかったんだけどさ・・・いや、ほんとだよ?ほんとに少ししか期待なんて・・・
「おーい、着いたぞ~」
「あっ、はーい。」
馬車を降り王都に入るためのお金をオヤッさんの分を含め3人分を門兵へと渡す。
「オヤッさん送っていただきありがとうございました!」
「いいってもんよ!王都は初めてなんだろ?関所の金額を払ってくれた礼といっちゃ何だが王都について俺の知ってることなら教えてやるよ。」
「じゃあ、お勧めの宿とハンターギルドの場所を教えてください。」
「おうよ!」
落ちていた木の枝で地面に地図を書き始めるオヤッさん。
「んで、この宿屋が少しばかり高いがお勧めだ。ハンターギルドも割と近いしな。」
「わかったよ、ありがとうオヤッさん!」
「おう!達者でな~」
オヤッさんと別れた俺達はミルファのハンター登録より先に宿をとることにした。
オヤッさんの地図は意外と正確で迷うことなく目的の宿へと辿り着くことができた。
カランカラン
ドアを開けると心地良い鈴の音が鳴り響く。
そして出迎えてくれる受付のおばさん。
「いらっしゃい、お二人さん?」
「ええ、部屋に空きはありますか?」
「勿論。そっちの子は奴隷みたいだし1部屋でいいのかい?」
ミルファと1つ同じ部屋か・・・
悪くないな、むしろ良い。
・・・・・・・・・・・・・・・。
「いや、2部屋お願いします。」
まぁつい先日出会った可愛い女の子とひとつ屋根の下、同じ部屋で寝るなんて勇気俺には無いわけで・・・
はぁー
心の中で深い溜息をつく。
まぁ、理性失って襲う可能性が無くなるだけましか・・・
「いえ、1部屋でお願いします!」
「いや、でも2部屋のほうがいいだろ?ミルファさんにだって見られたくないものだってあるだろうし・・・」
「ご主人様、私は奴隷です。奴隷が1部屋使えるなんておかしいですよ。私は奴隷というのがどういうものか奴隷商の荷馬車に乗り合わせた方に聞きました。それはもう酷い扱いを受けると聞いていました。それなのに今の私は何も不自由が無い。それに私のこと、ミルファさんなんて呼ぶし、やはりおかしいですよ!」
まぁ確かに普通の奴隷の扱いとは違うかもしれないけど・・・
こんな可愛い子を物のように扱うなんて俺にはできない。
「でもさ、それは他の人のやり方であって俺は俺だからさ、いいんじゃないか?」
「ご主人様がそれでいいのであれば良いのです。でも・・・」
「俺がミルファさんのことを襲うっていう可能性もあるんだよ?怖くないの?」
「そんなこと、とっくに覚悟できています!」
「いや、襲わないけどさ・・・」
予想外の返答に困惑してしまう俺。とそんな俺を見て困惑の表情を浮かべているおばさん。
「で、どうするんだい?1部屋かい?2部屋かい?」
「そうですね・・・・・じゃあ1部屋でお願いします。」
「はいよ、うちは1階が食堂になっているから朝と夜7時から9時に来れば朝食と夕食を別途料金で用意できるからいつでも頼んでおくれ。部屋は3階の310番、一番奥の部屋だよ。そこの階段から行けるから。それじゃあこれが鍵ね。足りないものがあったら私に言っておくれ。」
「わかりました。」
しっかりとした石造りの階段を登っていく。
宿代は朝、自分の部屋に置いておくというシステムらしい。
値段は1泊1万ギル。
高いといっちゃ高い値段であるが、所持金650万ギルほどあるので特に気にはならない。
「ここか。」
ガチャリ
ドアを開け中に入る。
予想以上に広い室内。
トイレ、お風呂も備え付けられているようだ。
「とりあえず不要な荷物だけ置いてギルドのほうへ向かうとするか。」
「はい!」
こうして俺達はギルドへと向かうのであった。
ご精読ありがとうございました(´∀`)
途中眠い中書いたので文章がおかしくなっているかもしれません。
後々訂正していくと思います。
評価・感想、お待ちしております。