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1話 異世界と旅立ち

自分の目を疑う。

そんな体験、皆はあるか?

俺は今、自分の目を疑っている。


夢・・・か?これはいったい・・・


何度も瞬きを繰り返し、何度も自分の目をこすってみる。

自分の頬を何度も抓った。

しかし、状況は一向に変化しない。


「どこだよ、ここ!?なんだよあれ!?」


俺が今わかっていることそれはこれが夢ではないこと。

そしてここが俺の知らない世界であること。

この2つだ。

さっきまでいたはずの薄暗い裏路地とはまったく別の明るい世界。

そしてそこを歩く人の姿、それが異様なのである。

自分がワープしたことなど忘れてしまうほどに。

茶・金・赤・緑・青、様々な髪の色。

それだけではない。

こちらの世界でエルフと呼ばれるもの。ドワーフと呼ばれるもの。

そのような人が道を悠々闊歩しているのだ。

俺は色々な可能性を考えた。

そして俺の考えはある事に辿り着いた。こんなこと言ったら馬鹿にされるであろう。しかし、もうこれしか考えられない。


「ここは異世界で・・・俺はあの老人の呪文でここに飛ばされた・・・?」





俺はしばらくその場に立ち尽くした。

これから自分はどうしたらいいのか?今日泊まる場所は?食料は?

先のことを考えると不安でしかない。

日本にいた時も将来が不安であったが今はそれとは違う。そんな将来のことなんて考える余裕は無い。今は今の不安でいっぱいだ。

しかし、いつまで悩んでいてもしょうがない。


「とりあえず辺りの探索から始めるか・・・」


そう思い立った瞬間である。


「なぁ君、君の左腕についているものは時計かい?」


金髪眼鏡のお兄さんが声をかけてきた。

顔とにつかぬ流暢な日本語。


「はい、ゼンマイ式腕時計です。」


「・・・ゼンマイ式腕時計?」


どうやらゼンマイ式腕時計を知らないようだ。

もしかしたらこっちの世界ではこれが貴重なものだったりするとか・・・?

なんていう淡い希望半分。

この人は物盗りだったり・・・?

なんていう疑心半分。

そんな心の葛藤の中、俺はとりあえず普通に会話を続けることにした。


「えぇ、このゼンマイを巻くことによって時計を動かしているんです。」


「中の構造はどうなっているんだい?」


この時計に興味津々といったご様子。

もしかしたら本当に貴重なものなのかもしれない。

その為、より一層、疑心が深まる。


「詳しくはわからないですけど、歯車がいくつも入っているんじゃないでしょうか?」


「そうか・・・では、その時計を私に譲ってもらえないかい?勿論ただとは言わない。私にできることなら何だってしよう。」


この時計は俺の父親の形見である。

俺が小さいころ母を亡くし、1人で俺を育ててくれた父。その父が愛用していた腕時計だ。

俺の中では決して安いものではない。

それにこの人はなんでもしてやると言っている。物盗りであったらこんな交渉しないであろう。

この言葉に甘えるのが現時点での最善手だといえるのではないか?

俺はこの交渉に賭けることにした。


「何だっていいんですよね・・・じゃあ、俺をあなたの家にしばらく泊めてください!あと、この世界の知識が欲しい!何でもいいので教えてください!」


ふかぶかと頭を下げる。

少しばかり図々しいお願いであるかもしれない。時計1つでほぼ無期限で知らない少年を家に泊め、常識を知るお勉強がしたいと言っているのだ。断られることも覚悟の上の交渉。


「・・・・・」


無言が空間を占拠する。

流石に無理だったか・・・


「あの・・・」


長い沈黙に耐えられなくなり声を発する。


「あぁ、ごめんごめん。君が予想外な条件を出してきたから少々驚いてしまってね。いいよ、その条件飲んだ。とりあえず私の家までおいで。」


「はい!」


無理だと思っていた条件を飲んでくれた為か、しばらくの自分の宿を確保できた為かつい嬉しくなり声が弾む。そして、俺は彼の家へと向かうのであった・・・





名前も知らない彼についていくこと約20分。

俺達は1つの馬鹿でかい門の前にいた。


「さぁ入って」


「ここ・・・ですか?」


「あぁ、そうだよ。」


さぁ、入った入ったと門の中へ招き入れられる。

門を入るとすぐ立派な家が待ち構えていた。


「アッシュー今帰ったよー」


その言葉と共に大きな扉が開かれる。

そして中からアッシュと呼ばれた女性が姿を現した。


「お帰りなさい、アレン。そちらは?」


「今日からここに住むことになった・・・あれ?君、名前はなんだったっけ?」


「あ、俺は北条ほうじょう 龍一りゅういちです。よろしくおねがいします!」


「よろしく、北条君。私はアッシュ、そして彼がアレンよ。それで何で北条君がこの家で住むことになったの?」


「そうだっ!聞いてくれよアッシュ!凄いんだ!小型時計だよ小型時計!ゼンマイ式腕時計って言うらしいんだけどこれの動力が魔法じゃないみたいなんだよ!ほら、この時計から魔力を感じないのに動いているだろう?その時計と引き換えに北条君を住まわすことになったんだ。いいだろ?」


「まったく・・・興味を持ったら後先考えずに突っ走っちゃうんだから・・・まぁ、私達2人だけじゃ広すぎる家だし、1人くらい増えても全く問題ないけどね。まぁ詳しい話は中で聞きましょうか。さぁ2人とも入って入ってー」





「それで、君の時計はどこで手に入れたんだい?私は様々な国を見てきたがそのようなものは無かった。」


「・・・・・」


客間のような場所に通された俺はアレンさんとアッシュさんと向かい合うように座り話をしている。


「答えたくないことなら答えなくていいのよ。」


「いや、ダメだアッシュ。これだけは教えてもらいたい。この時計はどこで手に入れたんだい?」


俺は、悩んでいた。

自分が異世界から来たと言うべきかどうかを・・・

もしも正直に言ったら信じてもらえるのであろうか?





少しばかり悩んだ結果俺は正直に言う事にした。


「俺は・・・俺は、異世界から来たんです。」


互いの顔を見合うアレンさんたち。


「わかってます、おかしなことを言っているっていうのは・・・でも、俺も信じられないけど、でも現実で実際に起きているんです。俺はこの世界について何も知らないし、この国がどういう状況かなんてこれっぽっちもわからない。この時計は俺のいた世界のものです。」


「そうか・・・じゃあ、色々この世界について教えないとな!アッシュ、北条君にこの世界の知識と魔法を教えてやってくれないか?」


「勿論よ、何から教えればいいかしら?」


俺は予想外の反応に驚く。


「こんな突拍子も無い話信じてくれるんですか?」


「確かに信じ難い事だ。でも、私には君が嘘をついているようには見えなかったんだよ。アッシュもそうだろう?」


「えぇ」


「ただそれだけの理由だよ。とりあえず聞くことは聞けたし、君の部屋を用意しなくてはいけないね。」


そのあと俺は自分の部屋を貰った。そして他の部屋も一通り案内され、夕食を頂いた。






俺は約束どおり時計を渡した。

目的を果たした後もアレンさんたちは最初と変わらず優しく接してくれた。そして色々と教えてくれた。

この世界についての常識といえることから細かいところまで、それに俺が1人でやっていけるだけの力をくれた。

あれから約1年、俺は今日2人のもとを旅立つ。


「じゃあ、気をつけてね・・・あまり無茶なことはしてはダメよ・・・」


「君は、強くなった。でも、まだまだだ。自分の力を過信してはダメだよ。それを忘れないでくれ。いいかい?」


「はい!自分の力量に見合ったところでやっていくことにします!ありがとうございました!」


俺は、精一杯の感謝を籠めてお礼を言いアレンさんの家を旅立った。

ご精読ありがとうございました(´∀`)

次話で1年間の説明いれます

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