3 十二歳の死刑囚
司会者と見られるスーツ姿の男が、椅子に縛り付けられ、深く項垂れた灰色の髪の少女の隣に立った。
「お忙しい中、お集まりいただきました、我が国の偉大なる同盟国の誇り高きボーダーガーディアンの皆様。本日は、闘魔の囚人の受け入れ審査会にお越しいただき、誠にありがとうございます……」
司会の男は、オークションでも始めたかのような軽快さで、受け入れ審査会を進行した。
「まず、この少女は、六階建ての建造物を半壊させるほどの危険な力を有しており……」
会場の内の疑問の声が、ざわめきとなった。
「……我が国にでは、魔導性危険人物と判断され、裁判が行われました。その結果、闘魔の刑が適正であるという実刑判決が下されました……」
嗚咽し始めた少女を見ていられなくなった者たちが、目を背けるように下を向いた。
「……なお、今回受け入れ先が見つからなかった場合、魔導性危険人物対策法に則り、数日の内に死刑が執行されます……」
むせび泣く少女を無視して、司会者は淀みなく進行を続けた。その冷淡さは、人の心がない機械のようで、不気味に見えた。
「なぁバリゼさん。こいつらこんなことを毎回やってんのか?」
「いや、境界の街を所有していない第三翼王国では約百三年ぶりに闘魔の刑が執行された。王国内では、今回の異例の判決に多くの者が驚いているらしい。それどころか、こんな旧時代の刑法がまだ存在していたことに、驚きを隠せない国民も多くいるようだ」
憤るグラゼルターカに、オールバックの男バリゼがそう説明した。
「――それでは、囚人の『ゲート・オブ・ソウル』を解放して見せましょう」
司会者は、少女にあごで早くやれと促した。
灰色の髪の少女は、激しく首を横に振って、それを拒絶した。
「……では、皆様ご覧ください。この囚人が身に宿した鳥の魂の姿です」
司会者は左手に何らかの魔法を発動させると、それを少女背中に押し当てた。
「うぁぁあああああぁッ!」
絶叫と共に、少女の体を放電現象が包み込んだ。
放電現象が終わると、彼女の背中には、風切り羽根の無い奇妙な灰色の翼が出現していた。
「ゲート・オブ・ソウルの強制解放は、体にも、魂にも大きな負担がかかると知っていてやってんのかあの野郎は……」
「マジかよ……」
暴れ出す寸前のグラゼルと、国の名を背負っている人間のやることではないと青ざめるフィズド。
少女は、舞台の上で項垂れたまま、苦しみに耐えるように涙を流し続けていた。
その姿から、助けを求めることさえも無意味と悟ってしまうほど過酷な環境に、彼女が置かれていることは容易に想像できた。
グラゼルターカは、自身の隣で、顔を手で隠して涙を流しているバリゼの肩を優しく叩いた。
「これは、審査会という名の人身競売だったな。組織の金を腐った国に流したクソリーダーと呼ばれても、人の心を捨てるわけにはいかねぇ。あの子は、絶対にうちで受け入れるぞ」
「仲間の人命第一が、うちの基本方針だ。家族助けるために金を使うんだ。筋は通ってるぜ」
グラゼルターカとフィズドは、少女を受け入れる覚悟を決めた。それが原因で、自分たち組織の中に亀裂を生むことになったとしても、それさえも覚悟の上だった。
そして、この男たちの決断が、当時十二歳だったスィンザの運命を大きく変えることになった。




