プロローグ2 闘魔の死刑囚
「リベレイション。スカイ・オブ・ザ・バード」
その「解放語」によって、可視化された静電気のような放電現象が少女の体を駆け抜けた。
放電現象が終わると、少女の背中には、風切り羽根の無い奇妙な灰色の翼が現れていた。
その翼は、宙に浮くように存在しており、直接背中から生えているわけではない。
「来るがいい。すべての命は黒砂の下で眠れ」
黒色の大蜥蜴は、少女の変化を見て両手を胸の前まで上げ、両手に力を込めた。その両手には、半透明な黒色の炎が立ち上った。
お互いに戦う意思は見せた。
両者の緊張感で時が止まる。
少女の鋭く冷酷そうな双眸が、敵を屠るためだけに光った。
動き出しは、両者ほぼ同時だった。
しかし、少女の神速の抜刀術が、敵の戦術とその体を横一文字に一刀両断した。
「我らに死はない……」
大蜥蜴の両断された上半身と、右手が、地面に落ちた。
「……命とは闇の中にあるべきもの」
「信心深いんだね。私はもう、神に祈ることをやめてしまったよ」
横血振りを見せた少女の刀の刀身は、半透明な黒い炎で燃えていた。
それは大蜥蜴が、両手に纏わせていたものと同じ炎に見えた。
敵が完全に沈黙した後、少女の灰色の翼は霧散するように消えた。
「…………」
少女は、いつの間にか納刀していた刀を手に持ったまま、ウエストポーチのファスナーを開いた。そして、そのウエストポーチの中に、大蜥蜴の死骸を直接入れ始めた。
彼女のウエストポーチは、「収納魔法」が組み込まれており、物体の大きさを無視して物を収納することができる。さらに、その重さも大幅に軽減してくれる。しかし、取り出す時に元の大きさに戻る関係で、容量が存在する。
高級品であれば、容量はほぼ無制限だが、少女のポーチは安物であるため容量はそれほど多くない。
少女は、大蜥蜴の切断された右手を拾い上げた。大蜥蜴の手を持つ、少女の右手の甲には、魔法によって押された格子柄の黒色の烙印がある。
これは、彼女が犯罪者であることを示す烙印であり、その名を「罪印」と呼ぶ。
彼女は、十二歳の時に実質的な死刑を言い渡された。その刑の名は「闘魔の刑」。
闘魔の刑とは、この異様な黒い森の中に潜む、「呪魔」と呼ばれる黒い魔物と戦い続けることを科された過酷な刑罰である。
この刑に科された者は、バーモに殺されるまで刑罰が続く。死ぬまで戦い続ける運命にある彼女のことを、人々は「闘魔の死刑囚」と呼んだ。




