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12 テリル


「スィンザ!」

 魔法の扉を使い、訓練場からロビーに向かったスィンザをずっと待っていた者がいた。


「……テリル」

「おはよう。スィンザ」


「おはよう。こんな早い時間にどうしたの?」

 スィンザを待っていたのは、白い髪の小柄な少女だった。

 雪のような真っ白なショートヘアー。その髪の中には、同じ色の白い羽根が混じっていた。

 人形のように整った小さな顔と、小柄な身長が相まって、とても愛くるしい印象の少女である。


「ねえ見て。わたしもガーディアンになれたよ」

 テリルは、首に下げた白色の認識票をスィンザに見せた。


「おめでとう。訓練は大変だけど、みんな優しい人たちだから、頑張ってね」

「うん! ありがとう。わたしスィンザと同じチーム? ユニットだっけ? とにかく一緒に黒い森に行きたいんだけど……どうしたらいいのかな?」

 テリルは、四日前にこの街に来たばかりの転入者だった。

 それ故に、この街のことも、スィンザが闘魔の死刑囚と呼ばれていることも知らなかった。


「テリルは今、『白色等級』だから、黒い森には行けないよ。トライホーンのボーダーガーディアンとして、黒い森に入るためには、もう一個昇格した先の『黄色等級』にならないとね」

「ええ⁉ そうなの⁉」


 ボーダーガーディアンには、守護者等級というものが定められている。

 全部で六等級(実質的に五等級)存在し、対応できるバーモのランクが違う。


下から順に、

「青色等級(防壁守護)」

「白色等級(見習い)」

「黄色等級(準戦力)」

「青銅等級(主戦力)」

「白銀等級(上位戦力、指揮官)」

「黄金等級(超越戦力、英雄、女傑)」となっている。


 この内、ボーダーガーディアンとしての最上位等級は、実質的に白銀等級である。


 黄金等級は、名誉等級であり、その昇格条件は非常に厳しい。黄金等級を得られた時点で、伝説となり歴史に名が残るほどの偉業成し遂げたと言っても過言ではない。


「……それとね、私は刑罰で黒い森に行く犯罪者だから、テリルが何色になっても、一緒に行くことはできないよ。……ごめんね。他の人とちゃんとした『探索ユニット』を組んで」

「犯罪者? ……スィンザが?」

 テリルは驚いた顔で、スィンザを見た。


 スィンザの首に下げられた認識票は、黒紅色。

 黒紅色等級は、その別名を罪印等級と呼び、正式なボーダーガーディアンではない。


 ボーダーガーディアンは、本来「探索ユニット」と呼ばれる最低人数四名の少数部隊を組む。探索ユニット制は、ガーディアンたちの生存率を高め、より多くのバーモを討伐するための仕組みである。


 チームトライホーンでは、単独出撃は危険行為と定められており、禁止事項となっている。

 しかし闘魔の刑には、条文中に「囚人を守護者と同じ部隊内に編成することを禁止する。ただし二名以下の監視者を置くことは認める」と定められている。


 そのためスィンザは、ボーダーガーディアンの探索ユニットに加わることができないのである。


 また監視者認定を受けるには、街のガーディアンたちが加入する「境界(ボーダー)守護者(ガーディアンズ)組合(ギルド)」の承認を得る必要がある。

 この監視者認定要件は、経歴の長さ、人格、囚人の逃亡を阻止できる能力など多角的かつ、高度な能力を求められる。


 新人のテリルには、どうやっても、この要件は満たせない。


「私は、バーモと戦う刑を科された闘魔の死刑囚。本当は、あなたに友達扱いしてもらえる資格もない重犯罪者だよ。だからあなたはこれ以上、私に関わらないほうがいいよ」

「え? 嘘だよね?」


 スィンザは右手の烙印と、黒紅色の認識票をテリルに見せた。


「この烙印は、犯罪者の証。この認識票は、闘魔の死刑囚の証。全部本当のことだよ」

「…………」


「それじゃ、私、黒い森に行かなきゃだから。訓練頑張ってね」

 言葉を発せないほど固まってしまったテリルを置き去りにして、スィンザはロビーを後にした。



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