10 死闘訓練
闘技場は訓練場の隣にある。
その中では、スィンザとダバロ、バルターカの死闘が始まろうとしていた。
「「リベレイション……」」
三人が解放語を唱える。三人の体に放電現象が現れた。
「……スカイ・オブ・ザ・バード」
鳥人の解放語を唱えたスィンザの両眼に放電が集中して、強い光を放った。背中には、灰色の風切り羽根のない翼が現れた。
「「……ビースト・アビリティ!」」
獣人の解放語を唱えた、ダバロとバルターカの全身に放電現象が駆け抜け、力むように筋肉が震えた。
そして、ダバロの頭部には槍のような鋭い一本角が現れた。
バルターカの頭部には、水牛の太く緩やかに湾曲した二本角が現れた。
彼らは「ゲート・オブ・ソウル(魂の門)」と呼ばれる、自身の体の中に宿る他の生物の魂の力を解放した。この世界の住人は、自身の体に宿る生物の魂によって自らの人種を定めている。
ゲート・オブ・ソウルの解放により、彼らは魔法の力を行使するための魔力を獲得した。
「行くぞ、スィンザ。おれたちは、お前を殺す気で武器を振るう。故にお前も、おれたちを殺すつもりで、全力で戦え!」
ダバロは剣を抜き、凄まじい殺気を放った。その剣は、何らかの魔法がかけられているのか、緑色の粒子を纏っていた。
「はい……」
スィンザは、ダバロの殺気に怯むこともなく抜刀した。
その刀身は、黒い炎で炎上し、熱を感じない偽りの熱気で空気が揺らいだ。
彼女は、鞘を腰に差さないので、左手には黒色の鞘が握られたままである。
「では、全身全霊を持って、参ります」
スィンザは、刀を右手で片手持ちしたまま中段に構え、そのまま一気に間合いを詰める。
そこから左に小さく振り上げた刀を、ダバロの左肩を狙って鋭く斬り下ろした。
ダバロは、瞬時に太刀筋を見抜き、スィンザの斬撃を剣で受けた。
「ふははは。これでもギリギリか」
ダバロは笑いながら、スィンザの刀を弾いた。
「お前の『闇の陽炎』はやはり素晴らしいな。前回、剣を切断された時の三倍の硬化魔法をかけても、刃が斬り込まれたぞ」
ダバロの剣の刃には、スィンザの斬撃によって斬り込みが刻まれていた。
「そりゃすげぇな。バーモでもここまで上手く使うやつはいねぇぞ」
ダバロの隣に立つバルターカも、驚きを見せた。
「いえ……これくらいしか、取柄がないので」
スィンザが刀身に纏わせている黒い炎は、原始魔法や、失敗魔法と呼ばれるものである。
「闇の陽炎」と名付けられたそれは、魔力を直接燃焼させることで発現する魔法反応である。
主に高ランクのバーモが使用する。
使用者によって、発現する効果が大きく異なり、とにかく扱いにくい。魔法変化式さえ合っていれば、任意の効果を得られる近代魔法の下位互換とされている。
「まさか我々が、失敗魔法と呼ぶその黒い炎にそんな可能性があったとはな。お前の闇の陽炎は、切断力強化魔法を完全に凌駕している」
ダバロは、スィンザの能力を褒めながら、面白いものに出会った少年のように目を輝かせた。
「それに、バリゼに教わった剣術も、身に馴染み始めている。お前は実にいい剣士になった」
「……ありがとうございます」
ダバロの賞賛を受けても、スィンザは構えを崩すことはなかった。それは、彼らから教わった心構えだった。
『いつ、いかなる時も油断をするな』
「だからこそ……」
ダバロは、その場で小さく数回跳ねた。
次の瞬間、ダバロの姿が消えて見えた。
「……慢心させるわけにはいかん!」
姿を消したダバロは、瞬間移動のような速さで、スィンザに急接近。その勢いのまま強烈な剛剣を放った。
スィンザは、その攻撃になすすべなく吹き飛ばされて宙を舞う。




