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韻踏み評価SSSで勝手に姫を召喚した僕、妖精界にモテて困る(予定は未定)  作者: vincent_madder
鎖の妖精と無頼の男

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第7話 友人の正体とは!

それから何日か経って。


山賊の一軒は姐さんがうまくアンナちゃんに言ってくれたらしく、特になにか言われることはなかった。


アンナちゃんには、会いたくない。


会ったが最後、折檻が待っている。


俺とフィノアは軽いギルドの依頼で今日の夕飯代を稼いできた帰りだ。


最近のフィノアは、打ち解けてきたのか、ロリババアの本性なのか、小言が増えてきた。


やれもっと実入りのいい仕事を受けろ、とか。


やれもっと二人の将来のために貯蓄を始めよう、とか。


今日は飯食いながらどんな話が飛び出すことやら。


夕方の食堂は、油の匂いと、鉄製の皿がぶつかる音で騒がしい。


俺とフィノアは、そんな騒がしい空気の中でいつも通り夕飯を始めようとしていた。


肉は固い。パンはそれなり。

まぁ他の味を知らないから、美味いも不味いもねーんだが。


フィノアは目を輝かせて食っている。目の保養になるな。


そんな時だ。


「久しくみないから死んだかと思ったよ」


いきなり背中を叩かれた。

声の主は昔からの顔馴染み——いろんな意味で信用ならん友人だ。


「勝手に殺してくれるなっての」


「そちらのお嬢さんは? 誘拐って訳じゃないんでしょ?」


誘拐ならとっくに俺が殺されてるだろ。

って言う前に、反応したのはフィノアだった。


「おいジルマド。この失礼な小僧は誰だ?」


いつもの調子で睨んでいる。

ホント他人に対する威嚇がいい感じだぜ。


友人は一瞬固まって、俺とフィノアを交互に見た後——なんとも言えない顔で俺に近づいてきた。


「…おいジルマド。まさか見つけたのかい?」


その言い方は誤解を生むだろうが、まあ事実だ。


「ああ…! 見てくれよ! 俺の、俺だけのロリババアだ…!」


言ってから気づいた。

フィノアのこめかみ、ぴくって動いたよな?


俺と友人はそんな事気にせず、がっちり固い握手を交わした。


「失礼なのは二人ともか」


フィノアがむすっと言う。


友人は、気にしない顔で俺たちと相席してきた。

そこから先は、くだらん冒険話と噛み合わない自慢話の応酬。


酒も入って、ますます盛り上がっていく。

フィノアは呆れた顔で肉を齧り、俺は笑い、友人は調子に乗る。


バカみてえだが、こういう時間が明日への活力なのさ。


やがて、俺は立ち上がった。


「ちょっとトイレ行ってくる」


軽く手を振って席を離れた。

フィノアは返事もしなかったが、あれはあれで機嫌がいい顔、のはず。


……戻ってきたら、どんな顔してるだろうか。



ジルマドが席を外すと、食堂の喧噪の中で、残された二人の空気だけがわずかに変わった。


フィノアは肉を噛む手を止め、向かいの男——ジルマドの友人をじっと見つめた。


その視線は、剣呑な鋭さを帯びている。


「…おい。何で妖精界の王族がこんな場末の食堂にいる?」


その問いに、男は肩をすくめ、苦笑を浮かべた。


「やっぱりわかっちゃうよね? ジルマドが鈍感なだけなんだよ」


二人のやりとりに人間の客たちは誰も気づく気配がない。


フィノアにとっては、妖精だから分かる格のようなものを感じ取っていた。


男は声を落とし、少し身を寄せる。


「そーゆー貴方は、見た事ないね? いや…」


「…もしかして失われた五大守護の一族の…?」


フィノアはわずかに目を細める。


「…昔過ぎて覚えとらんよ」


それは拒絶ではなく、事実を述べるだけにすぎなかった。


「ここで嘘ついたって良いことないしねぇ」


男は納得したように頷き、自分のカップを指で回す。


「吾輩だって文献でしか知らないのだよ」


そのセリフは、やや芝居がかった言い方だった。


フィノアが静かに息をつく。


「私のことを知っているのか?」


「…封印から出れたんでしょ? もう昔のことはいいじゃない、ジルマドと契約したんでしょ?」


その声音は軽く見えて、どこか優しさを含んでいた。


フィノアは少しだけ戸惑ったように目を伏せる。


「そうだが…」


男は満面の笑みを返した。


「じゃあいいじゃない! 仲良くやりなよ」


その“当然”とでも言いたげな態度に、フィノアは数秒だけ沈黙した。


そして、小さく呟くように本音を漏らした。


「おい…お前アイツの友人なんだろう? 聞いてもいいか?」


「なぁに?」


「…アイツ、本当は優しいんだ」


男は目を瞬かせた。


「???」


フィノアは視線を皿に落とす。


「手を出してこんのだ」


「ああー」


男は妙に納得したように頷き、そしてふいに顔を近づけた。


「優しいとも言うし、ヘタレ紳士とも言うし…そうだ!」


「ねぇ…ちょっと耳貸してくれる?」


フィノアが怪訝な目で見つめる。


「なんじゃ?」


男は口元を手で隠し、こそこそと“ある提案”を囁いた。


「ゴニョゴニョ」


数秒後——フィノアの肩がびくりと震える。


「…それを言えと?」


「効く。ゼッタイ効く。王位継承権を賭けてもいいよ」


断言する友人の表情は、妙に自信に満ちていた。


フィノアは少し迷ったが、やがてふん…と鼻を鳴らす。


その横顔には、どこか覚悟めいた色が浮かんでいた。



俺はトイレから戻ったときには、友人とフィノアの間に、ヘンな空気が漂っていた。


ん?なんか地雷踏んだのか?


まぁいいや。


「フィノア。そろそろ帰ろう」


「…ん」


「? 俺達は帰るぜ、じゃあな」


「うん。またねジルマド」



穏やかな夜風が流れる中、俺とフィノアは宿までの夜道を歩く。


フィノアは、俯いたまま、俺達は特に会話もないまま。


宿に戻ったのは、腹もほどよく落ち着いた頃だった。


扉を閉めると同時に、フィノアが俺の腕にぴたりと寄り添ってくる。


どうしたんだ? 寒いのか?

さっきからヘンなヤツだな。


「さて寝るかな」


床に布団を敷くために向かおうとした瞬間、そのまま袖をつままれた。


「フィノア? どうした?」


フィノアは上目遣いで、妙に芝居がかった声を出した。


「い、イヤじゃあ…」


いや、棒読みだろこれ。


「何その棒読み」


指摘すると、フィノアはむっ、と唇をすぼめた。


次の瞬間、俺の胸に顔を埋めてくる。


「ひ、人の仔など孕みとぅない…イヤじゃあ…(チラッ)」


そのセリフを聞いた瞬間。

俺の理性とフィノアを大事にしたいという最後の防波堤が、決壊した。


気づけば、フィノアを抱き上げていた。

マジで軽い。羽みたいだ。 そのままベッドにぽんっと投げる。


そのまま俺もベッドの上に乗り、フィノアを覆うように見つめ合う。


瞳に刻まれた契約の紋章が震えている。

それは怯えや恐怖からの震えではなく、興奮からのものに見えた。


お互いの息が荒い。


「…お前が悪いんだからな?」


フィノアは頬を赤くして、ベッドの上でもぞもぞしていた。


俺の胸板に両手を当てて、押し返そうと、抵抗しようとしている。


明らかに興奮するための演技だろ、どこで覚えてきたんだよ。


「…優しくして?」


俺は満面の笑みで答える。


「無☆理」


もう服なんて着てられなかった。



後日。


街外れの舗道で、フィノアはひょっこり姿を現した人物に目を丸くした。


「フィノアさん、奇遇ですね」


軽く手を振ってきたのは、あのジルマドの友人を気取る、妖精界の王族だった。


フィノアは半眼になり、ため息をひとつ落とす。


「おい小僧」


呼び方は容赦ない。

だが彼はまったく堪えていない。


フィノアは腕を組み、少しだけ視線を逸らした。


「その節は世話になったな」


「でしょ! やっぱりね!」


彼は胸を張って満足げに笑う。

フィノアは、先日の自分の“台詞”を思い出したのか、頬をひくつかせた。


「ひとつ聞きたい。なぜあんな悪魔的な呪文を知っておる?」


「知識って偉大だよねぇ」


フィノアは返す言葉を失い、ほんの少しだけ友人を睨む。


だが彼はどこ吹く風だ。


「お前はここで何をしているのだ?」


問いかけると、彼は軽く背伸びをして答えた。


「リハビリだよ」


「りはびり? 何だそれ」


フィノアの眉が寄る。

友人は苦笑しながら補足した。


「ああゴメン、矯正みたいなものさ」


彼は胸元を整えながら、少し芝居がかった口調で続ける。


「つまりね…」


「本来の私は、このような下賎な場は相応しくないのだ、分かるか? 忘却の妖精姫よ」


突然の“権威がありそうな謎の王族ムーブ”に、フィノアはさらに眉をひそめた。


「何してるのだ?」


「王子モードが抜けなくなっちゃうから、息抜きに来てるんだ」


「さっぱり分からん」


フィノアの率直な返しに、王子はくすっと笑った。


「あと、人探し」


「ほう?」


興味を示したフィノアに、王子は指を2本立てる。


「人間と妖精の女二人組。見たら教えてね」


「なんだその組み合わせ」


「まぁなんというか、ね?」


「…見かけたら憶えておこう」


「ジルマドには期待できない部分だし、そんなに城から抜け出せないし…頼むよ」


それが誰なのか、王子は説明しなかった。


ただ、少し悲しそうな顔をして笑っていた。

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