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韻踏み評価SSSで勝手に姫を召喚した僕、妖精界にモテて困る(予定は未定)  作者: vincent_madder
転生娼女のやり直し

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第7話 テンプレムーブの正体

お城の中庭って、ほんとに絵みたいなんだよね。


自分の語彙力がなさすぎて、景色は全部違うのに出てくる感想は全部いっしょ。


スゲー!キレー!…みたいな。


王城の庭園は、公爵家のそれよりさらに一段キラキラしてて。


どこを見ても「はい異世界!」って感じ。


噴水の水しぶきが陽に透けて、花の香りが風に混ざってくる。


そのど真ん中に、優雅なテーブルセット。


アタシとレフとザナ、そしてさっき玉座で偉そうに座ってた王子サマ。


この四人でお茶会って、なんなのこの顔ぶれ。


出されたお茶は、緊張して味がよく分からない。


とりあえずカップだけ両手で持って「貴族っぽさ」を装ってみる。


「三人が知り合いだなんて」


緊張のあまり、素直な疑問が、口からこぼれた。


レフは肩肘張らないいつもの調子で、お茶を一口飲んでから言う。


「社交界が狭いのだ。王家と守護を任されてる四家だけだからな」


ああ、そういえば公爵って“四大守護”のひとつだって言ってたっけ。


王子が軽く笑って、当たり前みたいに続ける。


「二人とは子供の頃からの付き合いだ」


え、幼なじみ属性も追加なの?

それだけで人気投票上位食いそうな関係性やめてほしいんだけど。


「人の形までになる妖精は一握りなんだ」


「どういうこと?」


つい口を挟むと、ザナがアタシの方を向いて、分かりやすく説明してくれる。


「あのねルー、妖精でも姿形は様々だから、扱える力の大きさがそのまま家の格に繋がるのよ」


へぇー。


「もちろん仕えている妖精たちもいるからそれなりの人数にはなるだろうが、人間の数よりはずっと少ない」


レフが補足してくれてた。


つまり、“人型で、しかも強い力を扱える妖精”ってだけで、かなりレアってことね。


アタシはカップのふちを指でなぞりながら、ぽろっと本音が漏れた。


「へぁーファンタジーだわぁー」


「…ん?」


王子サマが、じろりとこっちを見る。


マズい、緊張が一周まわって地が出たかも。


でも責められるわけでもなく、彼は少し間を置いてから口を開いた。


「ルメイラ殿。一つ聞きたい」


その声だけ、さっきまでの雑談モードから一段階トーンが落ちた。


空気が、少しだけ重たくなる。


「なんでしょうか」


背筋を伸ばして答えると、王子の視線が真正面から刺さってくる。


「…そなたは一体何者なのだ?」



アタシはわざと肩の力を抜いて、あっさり返した。


「人間の元娼婦よ」


それが事実だし、それ以上でも以下でもない。


この世界に来てからのアタシの肩書きなんて、そんなもんだ。


「そうではない」


即答。

まるで自分の望んだ答えではないかのような否定。


…は?


胸の奥が、きゅっと鳴った。

“そうではない”って、じゃああんた、アタシの何を知ってんのよ。


お茶の香りより先に、警戒の匂いが鼻につき始めた。


王子の視線が、まっすぐアタシの喉奥の言葉まで測るみたいに刺さってくる。


何者かって、知らんがな。


でも王子の言い方は、そうじゃない、もっと別の“何か”を見てる目だった。


「???」


王子はカップを置き、少し身を乗り出した。


「3文字の韻を全部踏んで連打するのは、かろうじて理解できる。ただ、」


その“ただ”の言い方が、すでに嫌な予感しかしない。


「フロウで子音を潰して踏んでいるように聞かせる、あれはラップの技法だ」


…はい?


空気が止まった。


レフもザナも「ラップ?」と目を瞬かせる中、アタシだけは固まる。


この世界、音楽はあるけど“ラップ”なんて文化ないはずなのに。


なのに――目の前の妖精界の王子が。

《フロウがどう》とか言ってるんだよ?


おかしすぎる。

思わず声が裏返る。


「ちょっと待って…なんでラップを知ってるの?」


「あっ…」


“やばいの言っちゃった”みたいな顔。


完全にやらかした顔。


レフもザナも「ラップって何?」みたいな困惑で固まってる。


アタシはゆっくり立ち上がった。


椅子がギィ…って鳴って、三人がビクっとする。


「…レフ?ザナ?ちょっと席を外させていただくわ」


「ルー?」


「ルー?どういうこと?」


アタシはにっこり微笑んで、扇子でも持ってそうな動作で言った。


「ちょっと王子サマと散策してくるわオホホホ」


「…では行こうかルメイラどの…」


レフとザナは顔を見合わせ、


“なんか始まった”って顔になったけど、止める気はないらしい。


王子が立つ。

アタシも立つ。


四人のお茶会は中断され、王城の回廊へと、アタシと王子だけが歩き出した。



この人、絶対ただの王子じゃない。


とにかく――

ラップを知っている王子サマなんて、普通いるかぁ!!


と、アタシの心の中でツッコミの鐘が鳴り響いていた。


王城の石畳をコツコツ鳴らしながら歩く。

横には王子サマ。


背筋はピンとしてるくせに、目が泳ぎまくっている。


――絶対なんか知ってる。


アタシはそのまま王子の前に立ち塞がった。

仁王立ち。

逃がさん。


王子の顔、見事に引きつってる。


「全部合点がいったわ」


「…」


その無言がすでに答えじゃん。


アタシは指を一本立てる。


「あの上位特化ゾーンみたいな座り方」


「ギクっ」


二本目。


「あの美貌と権力で俺のモノになれムーブ」


王子「ギクギクっ」


王族オラつきムーブは“テンプレ”って理解してんじゃん、この人。


そして三本目。


「そしてラップを知っている」


「ほんとスイマセン…」


ついに白旗。頭を抱えて縮こまる王子。

……王族の威厳とは?


アタシは腕を組んで見下ろす。


「…他に何か言うことは?」


「親ガチャが良かったんです私」


「…あ?」


「ごご、ゴメン!」


謝罪のクセが早い。

この王子、絶対こっち側の人間だ。


アタシはひとつため息をつき、彼を覗き込む。


「…色々融通してね?それで黙っといてあげる。あ、あと」


「あと?」


このときの王子の顔、ちょっとだけ本気で怯えてた。


王族のはずなのに、めっちゃ弱い。


アタシは、わざと甘い声で言った。


「今の所、アタシはレフにしか股を開くつもりないからね」


「…元娼婦だから、って訳じゃなさそうだね」


「彼のお父様と約束してるの」


「カラダを使って成り上がりはダメって」


「レフ君のお父上に性根バレってキツそう…」


ほんとに気の毒そうな顔してて笑った。

王子サマ、案外かわいいじゃん。


「あとね…」


「まだあるの」


顔がひきつりきってる。

でも逃がさない。


アタシはわざとゆっくり近づいて、口元で笑う。

舌をちょっとだけ出して、ぺろり。


「寝取りムーブにハマっちゃって」


「聞きたくなかった」


わかる。

でも言わせてもらう。


王子が完全に項垂れたところで、アタシはスカートを翻し、回れ右。


「さあ戻りましょ?レフに変な勘ぐりされたくないもの」


「………はい」


王子サマ、完全敗北。


でもこれでいい。

アタシは利用される側じゃないし、誰の箱にも入らない。


そして――

またひとつ、この世界の“事情”が見えてきた気がした。



お茶会の席に戻ると、空気がめっちゃ変わってた。


ザナは心配そうにソワソワしてるし、

レフは表情こそ整えているけど――耳がピクピクしてる。


あれ絶対、気にしてるんだろうなぁ。


椅子に戻った瞬間、ザナが小声で詰め寄ってきた。


「ルー?どういうこと?」


「ちょっと王子サマと散策してきたわオホホホ」


わざと上品ぶって笑ってやると、ザナが眉を寄せたまま固まった。


そんな顔しないで、可愛いんだから。


レフは、アタシの顔と王子の顔を交互に見比べている。


その視線が、なんか…怖い。

この子、本当に真面目なんだから。


王子はというと、さっきの弱気モードが嘘みたいに、すました顔して優雅に席に着いた。


でもアタシのほう絶対見ない。

バレバレで笑う。


沈黙を破ったのはレフだった。


「…散策、とは?」


声が、いつもみたいに落ち着いてるのに、ぜんっぜん落ち着いてない。


アタシは平然と紅茶を一口。


「城の中を案内してもらっただけよ?」


「そ、そうだ。た、ただの散策だ」


声裏返ってるじゃない。

こりゃ後で絶対ザナに怪しまれるな。


でも次の瞬間、ザナがアタシの袖を引っ張った。


「ルー…さっきの、ほんとに散策だけ? その…変なことされてない?」


その目がめっちゃ心配してくれてて、胸がチクリと痛んだ。


「ザナちゃん!ヒドくない!?」


王子サマ完全にキャラ崩壊してる。


「…これは、大丈夫そうね」


この子は本当に優しい。

だから壊したくなる。

だから守りたくもなる。


矛盾してるけど、それが本音。

ティーカップを持ったレフの手が、少し震えていた。


レフ「…王子、ルーに無礼は…」


王子「し、していない!」


反応が早すぎる。

それがまた怪しいっての。


でもここはアタシが仕切る。


「レフ。大丈夫って言ってるでしょ?」


その一言でレフは黙った。

けど、目だけはアタシに刺さるみたいに向けられてる。


やっぱり彼氏気取りじゃないの。


胸がじんわり熱くなる。


空気を変えようとしたのか、王子が咳払いをした。


「…その、レフ。ザナ。ルメイラ殿は…危険人物ではあるが、悪人ではない」


キャラは立て直したみたいだけど。

フォローになってないって王子サマ。


「ルーは危険じゃないよ!」


「…危険だと思う」


なんでこのタイミングで正直なのよ。


アタシは苦笑して肩をすくめる。


「はいはい、危険で結構よ」


ペースを完全に崩されているのは王子のほうだ。

王子は急に真面目な顔になって言った。


「レフ、ザナ。…ルメイラ殿のこと、くれぐれも頼んだぞ」


その声は妙に誠実で、三人とも一瞬だけ沈黙した。


――こいつ、ただのアホじゃないな。


そしてレフが静かに頷いた。


「…もちろんです」


「うん、任せて」


その声が、なんだか家族みたいで。

アタシは思わず、カップの縁に笑みを落とした。


「さ、冷めないうちにお茶飲みましょ?」


「…うむ」


なんか変な空気のまま、アタシたちのお茶会は再開した。


でも――


ここから先、アタシ達にもっといろいろ起きる予感しかしなかった。

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