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韻踏み評価SSSで勝手に姫を召喚した僕、妖精界にモテて困る(予定は未定)  作者: vincent_madder
転生娼女のやり直し

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第6話 王子サマ登場!

王城って、こう…その、なんていうか。


絵本の“すごいやつ”を全部盛りにしたみたいな場所だった。


2、3日三人で歩いて。


たどり着いて門をくぐって。

目の前の景色に疲れも吹き飛んでしまった。


街は普通に通れてしまった。

あの詠唱の当人とは誰も思ってないらしい。


黒髪ってめずらしくないのかな?

それとも気にしない種族なのか。


で、その“すごいやつ”の話なんだけど。


石畳は磨かれすぎて光を反射してるし、壁は彫刻まみれ。


(これ、城じゃなくて美術館では?)


ってツッコむ暇もなく、案内された客室の扉が開いた。


「…広っ」


これで一人用?

ウソでしょ?

部屋ひとつで娼館まるごと分あるじゃん。


天蓋ベッドはふわふわの白。

壁には織物のタペストリー。


床には分厚い絨毯。

窓から差し込む光は、なんかもう神の演出か何か?


思わずクルッとターンしちゃった。

足が沈む。高級絨毯の暴力。


すぐにザナが後ろからついてきて言う。


「ルー、私は侍女用の部屋だから、こっちじゃないの」


「なにそれ!? ザナは召使いじゃないのよ!?」


感情のまま声が出た。

だってレフの婚約者ぞ?

なんで侍女部屋!?


ザナは両手をひらひらと振って、いつもの優しい笑顔。


「気にしないでルー。私もそんなつもりないから」


「イヤよ!ザナ、一緒にココで泊まりましょう?」


勢いで腕を掴んじゃう。

だって広い部屋に一人は不安で死ぬ。


しかしザナは苦笑いしながら一歩引いた。


「それはちょっと…」


「なんで!?大丈夫、痛いことはしないから!」


「でたオッサンめ」


「ダメ?」


ザナは小さく頭を抱えた。


「そうじゃなくて…」


「???」


ザナは部屋の中心を指差した。


「こんなうるさい部屋、私無理なの」


「ああー」


確かに。

金ピカで広すぎて、めまいがする。


静寂のほうが好きなザナには地獄かもしれない。


結局、アタシはベッドに倒れ込み、ザナは侍女部屋へ。


一人残された王城の高級部屋で、広すぎる天井を見上げた。


(…寝れなさそう)


明日はいよいよ謁見。

緊張で胃がキュッとする。


でも――いや、大丈夫。

ここまで来たんだ、アタシ。



翌朝、結局アタシは緊張で胃が痛かった。


貴族の、それも王家との謁見なんて、娼婦時代の自分には縁のかけらもなかった世界だ。


“格式”とか“礼節”とか、道中で全部レフとザナから詰め込まれたけど…覚えきれるわけがない。


鏡の前で深呼吸していると、ザナが後ろからドレスの紐を整えてくれた。


「これで大丈夫。似合ってる」


「ありがとう、でもずっとドキドキしてるの」


ザナは柔らかく笑って、軽く肩を叩いてくれた。


「それも大丈夫。ちゃんと練習したじゃない」


「そうだよね…」


急遽ザナの礼服を借りて、テーラーが徹夜で仕立て直した一着だ。


ウエストはピッタリだけど……胸がね。


どう考えてもアタシよりザナの方が豊胸すぎる。


(ザナ、アタシより豊胸ってどんだけなのよマジで…)


ふと、ザナのドレスが目に入った。


…え?


色違いだけど、形が同じ。

アタシは鏡に映る自分を確認する。


肩のライン、腰の絞り…レースの使い方、やっぱりお揃いだ。


「ザナ?このドレスってもしかして…」


ザナが照れたように笑って小声で言った。


「気づいた? 実は違う生地を同じ仕立てにしてもらった一着なのよ」


「だから私とお揃い」


「それってレフが目立つやつだよね?」


並んで歩いたら完全に“両手に花”。


金髪美女と黒髪娼女を侍らせる貴族のイケメン…絵面が強すぎる。


ザナが急に他人行儀な声で言う。


「ワタシシリマセンワヨ?」


「…フフフ、そうねどうにでもなるから大丈夫よね」


胸のドキドキが、じわりと別の種類に変わった。



王城の重厚な扉がゆっくりと開く。


中は静かで、天井がやたら高くて声が吸い込まれていく。


緋色の絨毯の先には――謁見の間。

アタシ、レフ、ザナは横一列に並んで頭を下げた。


そのとき、扉の向こうで衣擦れの音が聞こえた。

誰かが入ってきて、玉座に腰を下ろした気配。


血圧の上下が止まらない。


宰相の声が凛として響く。


「面をあげよ」


“言われたから、あげていいのよね?”


アタシはゆっくり顔を上げた。

そこにいたのは――


これまた、とんでもないイケメン青年だった。


でも。


玉座に脚組んで?

肘を玉座に乗せて?

手に顎を乗せて?


ついでに目つきが冷たくて、明らかに“見下してる”視線?


いやいやいやいや。

これってアレじゃん。


漫画かパチスロの上位特化ゾーンでしか見ないポーズじゃん。


緊張してたのに、一瞬で冷静になった。

むしろ笑いそう。


(なんだコイツ…クセ強っ)


空気が、ほんの少しだけ軽くなった。


でも相変わらず“上位特化ゾーンみたいな姿勢”のまま、じろりとアタシを見る。


「名を聞こう」


その声は、見た目どおりのイケボだった。

くそ腹立つほどイケボ。


「ルメイラと申します」


膝をついたまま、丁寧に答える。

本当は、緊張で手が震えてるんだけど、バレてないと信じたい。


彼の視線が少し鋭くなる。


「あの詠唱はそなたが詠んだものか?」


「はい」


自分の声が思ったよりはっきりしていて、逆にびっくりする。


「なぜあのような詠唱をしたのだ?」


「私は彼らによって救われた身。妖精は固い韻が喜ぶとのことでしたので」


彼は少しだけ息を吸った。

思考してる気配がした。


「なるほど…」


それから、ふっと表情を変える。

どこか余裕のある笑み。


「ではルメイラ、私のモノにならないか?」


宰相「王子!?」


エコーがかかったみたいに声が響く。


(あっこの人、ほんとに王子サマだったんだ…)


“俺のモノになれ”ムーブにポジションまでセットだったのか。


なるほど説得力あるわけね。ムカつくけど。


王子は続ける。


「そなたが望む物を与えよう。その代わり私に、私だけに詠んで欲しい、どうだ?」


その瞬間――

アタシの脳裏に、娼館で言われた同じセリフが蘇った。


どの男も“与えるから言うとおりにしろ”だった。

アタシの頬を自分の持っているモノで叩きたいんだ。


身分以外、同じ。


(…バカにしてるの?)


アタシは静かに、でもハッキリと答えた。


「お断りします」


謁見の間の空気が一瞬で凍りつく。


王子の眉がわずかに動いた。


「…理由を聞いても?」


アタシは背筋を伸ばして、言葉を選びつつ、でも迷わず言った。


「チャンスを与えるとは、才能を掬って拾い上げるものです。あなたのそれは違う。それは才能のコレクションです」


王子の目がわずかに見開かれる。


アタシは続けた。


「それに、私はまだ箱に収まるつもりはございません」


せっかく娼館という“箱”からやっと出られたのだから。


沈黙がしばらく続いた。


やがて――

王子が肩を震わせ始める。


そして。


「…フフ、ハハハハ!」


笑った。


「さすがあの詠唱をするだけのことはある!気に入った!」


え、気に入るの!?

断られたのに?

どゆこと!?


王子は立ち上がり、軽く手を振った。


「あとで茶でも飲もう、では」


そう言って、そのままスッと謁見の間から出ていった。


残されたアタシ達は――


(え、これ…いつ部屋から出ればいいの?)


とりあえず慌ててもう一度深く頭を下げた。

ザナが隣で「今じゃないのよ!」みたいな顔してる。


レフは無表情のまま固まっている。


謁見の間は広すぎて、沈黙が痛かった。

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