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韻踏み評価SSSで勝手に姫を召喚した僕、妖精界にモテて困る(予定は未定)  作者: vincent_madder
転生娼女のやり直し

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第5話 王家に向かいます!

…やってしまった…


ベッドの上に残った熱が、まだ肌にまとわりついていた。


窓の外では朝の光が差し込み、カーテンの影がゆらゆらと揺れている。


昨夜のことを、何度思い出しても夢みたいに感じる。


でも――現実だ。ちゃんと、肌の温度が覚えてる。


そう。アタシは欲望に負けてしまったのだ。


でもそうでしょ?あんなアツい目で求められたら我慢なんてむしろ毒。


そう自分に言い聞かせていた。


レフが椅子に腰を下ろして、黙ってブーツを履いていた。


彼の横顔がやけに真面目すぎて、思わず言葉が出た。


「レフ、一回寝ただけで彼氏気取り?」


…でもこれはアタシの照れ隠し。


顔を上げたレフの表情が、ほんの少しだけ苦しそうに歪む。


それでも、真っ直ぐに言葉を返してきた。


「ルー。私は、責任を取りたいんだ」


真面目すぎる。優しすぎる。

だから――残酷なんだよ。


「ダメよ、ザナが泣いちゃう」


一瞬、沈黙。

レフの手が止まる。

その静寂が痛かった。


アタシはため息を吐きながら、わざと軽い声で言う。


「内緒にしましょ」


「え?」


「お互いが黙ってれば、気付かれることはないわ」


ほんの少しだけ、レフの眉が動く。

真っ直ぐすぎる男には、こういう逃げ道が必要なんだ。


アタシの声は、思っていたよりずっと落ち着いていた。


「ルーは大人なんだな」


「スレてるだけ。言っておくけど、全部の女がこうじゃないからね?」


アタシはベッドに片肘をついて、レフを見上げた。


その顔はまだどこか少年みたいで、だからこそ可愛く見えた。


「あと…」


「???」


「いつでも部屋に来ていいからね?」


「!!!」


一瞬でレフの顔が真っ赤になる。

その反応が可愛くて、つい笑ってしまった。


笑いながら、胸の奥で小さく呟く。


――ごめんね。


アタシ、ほんとどうしようもない。



次の日、アタシは公爵に呼ばれた。


城の大広間はいつになく張り詰めた空気に包まれていた。


陽の光が高窓から差し込み、床の紋章を淡く照らしている。


緋色のカーペットの上、私の目の前に――公爵が立っていた。


「王家から連絡があった。かの詠唱をした者と王城に来られたし、とな」


“王家から”――その響きだけで、心臓が一拍跳ねた。


やっぱり、アレ聞かれてたんだ。妖精界全土に響いたとか言ってたし。


「連絡? ずいぶん早いですね」


公爵は軽く頷き、まるで何気ない会話のように続ける。


「声を届ける魔法がある。届けるだけだがな」


「便利ですね」


(スマホみたいにはいかないのかぁ)


心の中でそう突っ込むけど、当然声には出さない。


公爵は眉一つ動かさず、淡々と話を続けた。


「…ほとんどの妖精という種族は、悪意に免疫がない。逆にどんな詠唱でも韻を踏んでいれば、力を貸してしまう。ある意味で純粋なのだ」


「???」


よく分かんないけど――?


公爵はゆっくり歩み寄り、目線の高さを私に合わせた。


その瞳には、まるで底なしの湖みたいな静けさがあった。


「あまり息子をいじめないでもらいたい」


空気が、一瞬止まった。

背筋が勝手に伸びる。


…あちゃー。


「…バレてたんですね」


公爵は静かに目を細めた。

怒っているわけじゃない。でも、怖いほど真剣だった。


「…これはあの詠唱に対する私からの礼、いや忠告だと思って聞きなさい」


ごくりと唾を飲む。

この人、ただの貴族じゃない。言葉のひとつひとつが重い。


「王家でも、そなたは注目されるだろう。ただ…」


公爵の声が低くなる。

嫌な予感がする。


その続きを聞く前に、もう胃のあたりがキュッと痛くなってた。


「カラダを使って成り上がろうなどとは、ゆめゆめ思わないことだ」


「……っ」


思わず息を呑んだ。

言葉が胸の奥に突き刺さる。


図星すぎて反論できない。

まるで見透かされている。


「子供達が悲しむ」


「覚えておきます」


それだけで精一杯だった。

声がかすれて、喉が痛い。


公爵はそれ以上は責めなかった。

ただ静かに頷き、言葉を続けた。


「その湧き上がるエネルギーは欲望ではなく、他のことに向けなさい」


「……」


「そなたには可能性があるのだから」


……可能性、か。


そんなもの、今まで考えたこともなかった。

オンナの使い方しか知らなかったから。


「…ありがとうございます」


やっとの思いで言葉を返す。

その瞬間、公爵の表情が少しだけ和らいだ。


「王家にはレフ、ザナと行ってもらう」


「かしこまりました」


膝を折り、深く頭を下げる。

礼儀も作法もまだ分からないけど、今はそれしかできなかった。


彼の背中が遠ざかるのを見ながら、心の中で小さく呟いた。


―― 怖いほど正しい。嫌いじゃないわ。



荷馬車の準備が整うころ、城の裏庭には朝露が残っていた。


妖精界の空は青というより薄い翡翠色で、空気まで澄んでいる。


そんな中、アタシとザナは並んで歩いていた。


「つきあってくれてありがとう、ザナ」


軽く言ったつもりだったけど、声が少し震えてた。


旅の準備なんてほとんど初めてで、落ち着かないんだよね。


ザナはやわらかく微笑んで、腰に手を当てた。


「王家に行くんだから、身の回りのことできる娘が必要でしょ?」


その言い方がいかにも“貴族の婚約者”らしくて、思わず笑ってしまった。


「まあ、レフとの婚前旅行だと思ってくれると気が楽かなー」


「ちょっ、ルー!?」


ザナの頬が一瞬で真っ赤になる。

ぐふふ、こういう反応かわいい。いじりたくなるやつ。


「ねえ、妖精って結婚する前にシちゃいけないとかあるの?」


「な、ないけど…」


言いながら視線を泳がせるザナ。

耳の先まで赤い。――ほんと、正直者だなこの子。


「へぇー? じゃあ2人はどこまで進んでるのかね? んん?」


わざと顔を近づけてみると、ザナが後ずさりした。


「ルー、なんかオッサンっぽい」


「んん?」


首を傾げてにやっと笑う。


「あーもう! まだキスまで! その先は…こ、怖いのよ!」


「なにぃ! そんなのこのルメイラさんに任せなさい!」


「えー!?」


驚き方までピュアすぎて、吹き出してしまう。

ほんと、この世界の子たちはみんなまっすぐで危なっかしい。


「友達でしょう? アタシたち」


「……」


ザナが目を瞬かせる。

そして、そっと頷いた。


「伊達に娼婦やってたわけじゃないのよ」


「なんか、ルーらしいね」


笑い合うその時間が、妙に居心地よくて。


アタシはふと空を見上げた。


太陽が、まるで“とっとと行ってこい”って言ってるようだった。



夜の森を抜ける風は、昼間よりもずっと冷たい。


野営地のテントは、ふたつ。

アタシ用と二人のテント。


焚き火の火が小さく揺れ、パチパチと木を弾いていた。


アタシはテントの中で横になっていた。

眠ってはいない。


レフがゆっくり近づいてくるのがわかる。

まるで、何かに導かれるように。


テントの幕が上がる。

焚き火の火によって、レフの影が浮かび上がっていた。


「――あらレフ。今日は流石に来ないかと思ったのに」


アタシは軽く笑ってみせる。


「ルーが教えてくれたとザナが言っていた」


「フフ、どーだった?」


その瞬間、レフの表情がふっと崩れた。

まるで一枚の仮面を外したように。


「サイコーだった」


「レフまたキャラ変わってる」


「キャラじゃない」


思わず笑ってしまう。

彼の照れた声が、なんか可愛くて。

でも、笑えば笑うほど、胸が痛くなる。


「城じゃできないことだから、ザナも旅で気が緩んだのよ」


「旅なんだから気を引き締めなきゃいけない気がするんだが」


レフの言葉が、妙に真面目で優しい。

そういうところ、ずるい。


アタシの下腹部がまた囁き始める。


「ザナは?」


「…寝てる」


焚き火の炎が一瞬強くなり、レフの顔を照らす。

その瞳の奥が、迷いと罪悪感で揺れている。


――ああ、その顔。もう止まれないや。


「そう…レフは一回じゃ収まんないのにね」


「ルー…」


彼の声が低く震える。

私の名前を呼ぶその響きが、背筋をぞくりと撫でていく。


それだけで濡れてしまっていた。


「いいよ、準備できてる。来て…」


その一言で、レフがためらいもなく近づいてくる。


そして――唇が触れた。


火の粉が舞い、夜の静寂が破れる。


「ザナが起きちゃうから、激しくしないでね?」


そう言ってレフに跨がるアタシ。


押し殺した息と息が混じり合い、影が絡み合っていく。


(あぁー寝取るのハマりそー)


心の奥でそう思ってしまった瞬間。


自分がどれだけ壊れてるかを知った。


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