霧島レナ1
激しい雨が降る中、黒い髪を伸ばした少年は苦しそうに……そして悲しそうに顔を歪めていた。
「なぜ……なぜこんなことをしたんですか!レナ先輩!!」
少年の視線の先には、一人の少女が立っていた。
おかっぱの黒髪に蒼い瞳。
左目のあたりにある泣きぼくろ。
そんな彼女は黒いオーラを纏っており、両手が血で赤く染まっていた。
少女の周りには、多くの人達の死体が転がっている。
「あなたは……あなたはそんなことをする人じゃないはずだ」
少年には分からなかった。
彼女が多くの人の命を奪ったことが。
「……礼くん。私ね……もういやなの。弱い自分でいるの」
「なにを……言って」
「私ね……ずっと……ずっと辛かったの。弱くても、平気なフリでいる自分が。魔法士協会の駒として生きるのが。そして……いい先輩でいる事が」
「レナ…先輩?」
少女は血で染まった手で前髪をかき上げる。
「私は強くありたい。強い存在でいたいんだよ。例え多くの人の命を奪おうと、危険な力だと分かっていても」
少女は瞳を真っ黒に染めながら、告げる。
「私は……強い魔法士でいたいの」
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「マジかよ……」
俺は額に手を当てて、ため息を吐く。
今、俺の目の前にには和風美少女がいる。
そしてその少女を……俺は知っているのだ。
霧島レナ。
『女神使いの復讐者』に登場するキャラクターであり、中ボス。
ゲーム主人公とは先輩と後輩の関係。
レナはゲーム主人公の面倒をよく見て、優しく接していた。
多くのプレイヤーはそんなレナを『よき先輩』『理想の先輩』と思っていた。
だがそれは誤りだ。
本当は魔法士協会の命令でレナはゲーム主人公と仲良くしていただけに過ぎない。
魔法士協会は強い聖霊と契約した者や才能ある者、実力がある者に自分たちの所属の魔法士を送り込む。
そして友人、恋人、夫婦などの関係を作らせ、魔法士協会のものにする。
レナがゲーム主人公に近付いたのは、そのため。
だから彼女はゲーム主人公をよく手助けしていた。
しかし……彼女には強い闇を抱えており、そのせいで主人公と戦うことになる。
そして……命を堕とす。
そんな霧島レナが俺に近付いてきた。
つまりそれは……魔法士協会は俺を取り込もうとしていることを意味する。
「やってくれるぜ……魔法士協会」
魔法士協会が俺に目をつけたということは、スローライフから遠ざかるということ。
それは絶対に避けなければ!!
「初めまして、霧島さん」
「レナでいいよ?」
「いきなり名前を呼びはちょっとね……まぁ、よろしく」
表面上は仲良く……だけど少し距離を取ろう。
できるだけゲームキャラクターとは関わらないようにしないと。
読んでくれてありがとうございます。
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