隣に引っ越してきた女の子は
『—――では次のニュースです。五歳ぐらいの男の子がワイバーン十五体を一人で倒しました』
「……」
朝ごはんを食べながらテレビを見ていた俺は、手に持っていた箸を床に落とす。
テレビの画面には、顔にモザイクが掛けられた幼い少年がワイバーンたちと戦う映像が映し出されていた。
ああ……やっぱりテレビに映ってる。
そりゃあそうだよな。
あんだけ暴れれば、誰だってスマホで録画するよな~。
俺は頭を抱えた。
「どうしたの?頭が痛いの?」
「大丈夫。なんでもないよ……お母ちゃん」
母にそう言って誤魔化す。
まぁ……テレビに映ったのは仕方ない。
それより次はどこのダンジョンに行くかだな。
いや……それより、魔霊との戦闘をやった方がいいかも。
戦闘経験は、武器になる。
だけど……少し危ないかな~。
でももうワイバーンと戦ったし。
「お父さん。なんかよっちゃん……難しい顔で凄い悩んでいるんだけど?」
「どうしたんだろうね?」
<><><><>
朝食を食べ終わった後、俺はいつもの走り込みと格闘技の練習をした。
「よし……こんなものだろう」
数時間ぐらい鍛錬していたから顔には大量の汗が流れていた。
腕で顔に浮かんだ汗を拭っていると、タオルを咥えた真白が近づいてきた。
本当にいい子だな~真白は。
「ありがとな」
「グア!」
タオルで汗を拭いていた俺は、これからのことを考えた。
テレビに俺が映っていたから、魔法士協会がなにかしらの動きを見せるかもしれない。
魔法士協会は優秀な子供や強力な聖霊と契約した人間を絶対に見逃さないし。
まぁ……魔法士協会にスカウトされたら普通の人なら二つ返事でOKするけど。
給料がめちゃくちゃいいし。
それにこの世界の人は魔法士に憧れる人が多い。
だけど……死亡率は高い。
いくら給料がよくても、死ぬんじゃあ意味がないし。
だったら農家でのんびりと仕事をして生きていたほうがいいよな~。
スローライフ最高。
「さて……と。一度、帰ろうか。そろそろお昼ご飯だし」
「グア!」
俺と真白は家に向かって歩く。
ニ十分ぐらい歩いていると、家が見えてきた。
そして……あることに気が付く。
「ん?……あれって」
家の隣で工事が行われていることに気付く。
誰かが引っ越してきた人でもいるのか?
こんな田舎に。
「あ!よっちゃん」
誰かと話をしている朝日が、俺に気が付いて手を振る。
「よっちゃん。ちょうど良かった。実は隣に引っ越してきた人たちによっちゃんのことを話してたの」
「俺のことを?」
母と話をしていた人たちに、俺は視線を向ける。
「初めまして~。隣に引っ越してきた霧島です」
「よろしくね。夜一くん」
優しい口調で話をしてきたのは、和服を着た女性と男性。
どちらも黒髪で、背が高く、そして美形。
だが俺は彼らの見た目じゃなく、名前に驚いていた。
「霧…島……」
俺の頬から一筋の汗が流れる。
霧島。
その名前は『女神使いの復讐者』に登場する重要なキャラクターと同じ。
「それからうちの子も紹介するわ。おいで」
和服を着た女性がそう言うと、彼女の後ろから一人の女の子が現れる。
嘘……だろ!?
俺は言葉を失った。
驚かない方が無理だったから。
「初めまして!わたしは霧島レナと言います。よろしくお願いします」
そう言って親しみやすい笑顔を浮かべるのは、着物を着た幼い女の子。
おかっぱにした黒い髪。
青玉の如く蒼い瞳。
左目あたりには泣きぼくろがあり、それがとても可愛らしい。
和風美少女と呼ばれていいぐらいだ。
「マジかよ……」
俺は頬を引き攣った。
霧島レナ。
彼女のことは知っている。
『女神使いの復讐者』のプレイヤーなら知らないはずがない。
なぜなら……霧島レナは主人公と仲の良い先輩キャラであり、
強力な中ボスキャラなのだから。
読んでくれてありがとうございます。
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