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魔霊討伐

 転生してから一年ぐらいが過ぎた頃。


「フッ!ハッ!」


 俺は無属性ダンジョンの中でダンスをしていた。

 汗を流しながら、音楽に合わせて踊る。

 そして音楽が終わった後、女性の声が部屋に響く。


『無属性ダンジョン『舞乱(まいらん)』攻略成功』


 なにもないところから金属の箱が現れた。

 俺は腕で汗を拭きながら、ハァハァと口から荒い息を漏らす。


「流石に一時間ぶっ続けでダンスするのはキッツ」

「グアアァァァァ」


 真白は俺に近付くと、頬を舐めた。

 どうやら心配してくれているらしい。


「大丈夫だよ。これぐらいすぐなんとかできる」


 俺は息を整えた後、スキルを発動する。


「〈疲労回復(ひろうかいふく)〉」


 直後、身体が嘘のように軽くなった。

 一瞬で疲労がなくなったのが分かる。

 流石はスキルだな。


「さて……今日のお宝は……」


 俺は宝箱を開けた。

 宝箱に入っていたのは、分厚く……そして古そうな白い本。


「おお!古代の無属性の魔導書か!また一冊、手に入った!」


 俺は魔導書に頬ずりした。

 魔導書は読むだけで魔法が使えるようになる特別なアイテム。

 古代の魔導書は現代では作られていない魔法が書かれている。

 特に……古代の無属性魔法は途轍もなくヤバイ。

 この世界で生き残るためには必要なものだ。


「これで古代の魔導書は十八冊。その内、五冊は無属性。フフフ、これでさらに強くなれる」


 俺はスキル〈収納空間(しゅうのうくうかん)〉を発動。

 なにもないところから黒い穴が出現。

 その穴に魔導書を入れた。


 この一年で俺は多くの無属性ダンジョンを攻略した。

 そして多くのスキルを獲得。

 古代の無属性の魔導書で魔法を習得した。

 ついでに肉体の鍛錬や、格闘技を独学で勉強。

 そして真白との戦闘訓練もしている。

 少しずつではあるが強くなっていた。


<><><><>


 ダンジョンをクリアしたことで外に瞬間移動させられた俺と真白。

 俺は背伸びをする。


「さて、帰るか……真白。そろそろ電車に乗って帰らないとお母ちゃんとお父ちゃんに怒られる」

「グア!」


 今、俺達がいるのは住んでいる街から、少し離れた街だった。

 この一年で住んでいた場所の無属性ダンジョンは全て攻略したため、電車で別の街に行く必要があるのだ。

 因みに電車代は、家の畑仕事の手伝いで稼いだバイト代だ。


「あ!コンビニで唐揚げでも買って食べるか」

「グアアアアアアアアアアア!」


 真白は嬉しそうに雄叫びを上げた。

 可愛い奴め。

 俺達は街の中を歩きながら、コンビニに向かう。

 街の中には多くの人が聖霊と共に歩いている。

 前世を知っている俺には、少し違和感があった。


「ん?」


 なんだ?……誰かに見られてる?

 視線を感じた俺は振り返る。

 だが見ている人の姿はない。

 まただ。

 この一年で誰かに見られているような感じがする。


「まさか……魔法士協会(まほうしきょうかい)の人か?」


 魔法士協会。

 魔法士を管理する超巨大組織。

 この世界がまだ存在できているのは、魔法士協会のおかげだ。

 魔法士協会は才能ある者を魔法士育成学園に入学させたりなどもしている。

 そして……強力な聖霊と契約した者や、いくつもの属性の適性を持つ者を監視するのも仕事だ。


「いや……それはないか」


 色々と考えたが俺を魔法士協会の人が監視する可能性はほぼない。

 だって俺の属性適性は無属性のみ。

 加えて俺の契約聖霊は聖霊の中では、中の下。

 監視対象にされるほどすごくないし、ヤバくない。


「とりあえず、さっさとコンビニに行って帰るか」


 ハァと俺がため息を吐いたその時、頭の中でビー!ビー!と警鐘が鳴り響いた。

 これはスキル〈危険感知(きけんかんち)〉が発動してる!?


「まさか!」


 俺が空を見上げた。

 視線の先では翼を生やした巨大なトカゲが飛んでいる。

 ワイバーンだ。

 それも一体じゃない。

 十五体だ。


「まずい!」


 俺は真白と一緒に逃げようとした時、ワイバーンたちは街に向かって炎の球を口から吐き出した。


「無属性魔法《多重防御盾(たじゅうぼうぎょたて)》!」


 俺は頭の上にぶ厚い白い盾を生み出した。

 次の瞬間、炎球の雨が街を襲う。

 炎球は建物や地面に直撃し、爆発する。

 白い盾の下にいた俺と真白は、炎球の雨が止むまでジッと待った。

 人々は悲鳴を上げることしかできない。

 やがて炎の球の雨が止むとワイバーンは地上に下りて、人々を襲い始める。


「に、逃げろおおおぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!」

「キャアアァァァァァァァァァァァァァ!!」


 人々は聖霊を連れて、逃げ出した。

 お、俺も真白と一緒に逃げないと!

 そう思った時、


「ママ~……ママ~……」


 女の子の泣き声が聞こえた。

 視線を向けるとそこには俺と同じぐらいの歳の少女が、子犬型聖霊を抱き締めながら泣いていた。

 そして……その少女にワイバーンの一体が口を大きく開けて近づく。


「!無属性魔法《聖霊武装(せいれいぶそう)》!」


 俺が魔法を唱えた直後、真白の身体が白く光り出し、二つのメリケンサックへと形を変えた。

 二つのメリケンサックを両手に装備した俺は、スキルを発動する。


「〈超加速〉〈硬化〉〈超集中〉〈筋力増強〉〈思考加速〉〈打撃強化〉〈脚力強化〉〈腕力強化〉!」


 複数のスキルで己の肉体を強化した俺は、脚に力を込める。


「行くぞ、真白」


 白きメリケンサックが輝く。

 俺は地面を強く蹴り、ワイバーンに突撃。

 一瞬で距離を詰めた俺は右腕を振るう。


「オラァ!」


 俺の右ストレートがワイバーンの顔に直撃。

 大きな打撃音が鳴り響く。

 ワイバーンは勢いよく吹き飛び、ビルに激突する。


「グ……ガ……」


 口から血を吐き、白目を剥くワイバーン。

 他のワイバーンたちは鋭い目つきで俺を睨む。


「まったく……戦うつもりはなかったんだがな」


 拳を構え、フゥ―と息を吐く。

 無駄な力を抜け。

 心を落ち着かせろ。

 魔霊と戦えるように鍛えてきたはずだ。


「来いよ、トカゲ共」


 俺の言葉を合図に、ワイバーンたちは俺に向かって襲い掛かった。

 口を大きく開けて、ワイバーンは突進してくる。


「シッ!」


 俺はワイバーンの噛みつきを紙一重で躱し、拳を放つ。

 スキルによる強化とメリケンサックを装備した拳は、ワイバーンの頭を破壊。

 赤い血と脳みそが飛び散る。


「次!」


 俺は素早く移動し、突撃してくるワイバーンたちの頭を破壊していく。


『女神使いの復讐者』には色々なゲームスタイルが存在する。


 強力な魔法で遠距離から放つキャスタースタイル。

 聖霊のみで戦わせるテイマースタイル。

 基本はこの二つの内、一つだ。

 だがもう一つだけ、別のスタイルが存在する。


 それは……聖霊を武器や鎧にして、近距離戦闘をするウォーリアスタイルだ。


 魔法や使い魔が存在するこの世界(ゲーム)では、ウォーリアスタイルは使われない。

 キャスタースタイルに必要なのは習得できる魔法の数。

 テイマースタイルに必要なのは聖霊の強さ。

 そしてウォーリアスタイルに必要なのは、プレイヤーのキャラクター操作と敵キャラクターの動きの予測。


 ウォーリアスタイルはとても難しく、誰も使いたがらない。

 だが俺はこのウォーリアスタイルを積極的に使っていた。

 なぜなら……最も敵に大ダメージを与えられるから。


「不乱夜一に転生したのはある意味、正解かもな」


 不乱夜一の適性は無属性のみ。

 だがその無属性はウォーリアスタイルと相性がとてもいい。

 無属性は確かに他の属性に比べて、戦闘には劣っている。

 そう……()()()()()()()()()()()()だ。


 無属性には遠距離魔法攻撃は存在しない。

 だが……肉体を強化し、強力な近距離物理攻撃はできる。

 というか、無属性以外で肉体を強化したり、近距離物理攻撃はできない。


「ハァ!!」


 ワイバーンの尻尾攻撃や噛みつきを全て躱し、一撃で頭を破壊する。

 すでに十四体は倒した。

 残るは、一体。


「ガアァァァァァァァァァァァァァァ!!」


 仲間を殺されて怒っているのか、赤い角を生やしたワイバーンは口を大きく開けた。

 そして口から炎の球を放つ。

 迫りくる大きな炎球。

 だが俺は恐れなかった。


「この程度……大したことない」


 俺は右拳を構え、魔法を唱える。


「無属性魔法《反撃(はんげき)》」


 右拳に白い魔法陣が出現。

 白い魔法陣を宿した右拳で、俺は炎球を力強く殴った。

 直後、炎球は巨大化し、ワイバーンに向かって吹き飛ぶ。


「ガア!?」


 巨大炎球はワイバーンに直撃し、爆発。

 大きな爆発音が鳴り響き、爆風が発生する。

 炎球を受けて黒焦げになったワイバーンは、ゆっくりと地面に倒れる。

 全てのワイバーンを倒した俺は肩の力を抜いた。

 すると足が崩れ、地面に尻もちを付ける。


「ハハハ……流石に疲れたな」


 これが魔霊との戦闘。

 これが初めての実戦。

 予想以上に疲れた。

 手の震えが……止まらない。


「グア!」


 二つの白いメリケンサックは聖霊の姿へと戻った。

 聖霊に戻った真白はぺろぺろと俺の頬を舐める。


「ありがとう真白。俺は大丈夫だよ」


 ゆっくりと立ち上がった俺は、フゥと息を吐く。


「ん?」


 なぜか視線を感じた俺は振り返った。

 そして気付く。

 多くの人や聖霊に見られていることに。

 まずい……これはまずいかも。

 俺の顔から大量の汗が流れる。


「か、帰るぞ、真白!」

「グア!!」


 俺は真白と共に駅に向かった。

 全速力で。


<><><><>


 浮遊巨大都市『魔塔』。

 塔の最上階にある部屋で、ルリーは椅子に座りながら一枚の紙を見ていた。


「LV2の魔霊十五体をたった一人で全て撃破。しかも見たことない魔法を使用したのを確認……か。僕の予想を軽く超えるね……不乱夜一は」


 ルリーは微笑みを浮かべながら、紙を執務机の上に置く。


「俺をこのまま放置するわけにはいかないね……」


 瞳を怪しく光らせたルリーは、執務机の上にある電話機を手に取る。


「もしもし、僕だよ。今すぐ……霧島家(きりしまけ)にこう伝えて」



「子供を一人……不乱夜一の幼馴染にさせて……と」

 読んでくれてありがとうございます。

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