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ラウンド2:美の基準は誰が決める?

(ラウンド1の熱気を引き継ぎつつ、知的な探求の雰囲気が漂う。あすかが再び口を開く)

あすか: 「ラウンド1、ありがとうございました。美しさが『力』であるか、それとも『虚像』か…。熱い議論でしたが、その中でフリーダさんから非常に重要な問いが投げかけられました。『その美しさの物差し、基準自体が問題なのだ』と。そこで、ラウンド2では、この点をもっと深く掘り下げてみたいと思います。【美の基準は誰が決める?】…皆さま、いかがお考えでしょうか? まずは、美について一家言お持ちのワイルドさん、いかがです?」


オスカー・ワイルド: (待ってましたとばかりに、優雅に脚を組み替える)

「『誰が決めるか』、ですか? 実に面白い問いだ。しかし、答えは明白。それはね…『誰も決めないし、誰もが決めようとしている』のですよ。」

(周囲の反応を楽しむように、ゆっくりと言葉を続ける)

「考えてもごらんなさい。ある時代には豊満な肉体が称賛され、またある時代には少年のような痩せた姿がもてはやされる。かつては日に焼けた肌が労働者の証とされ、貴族は蒼白な肌を誇示した。美の基準など、流行と同じ。実に気まぐれで、移ろいやすく、そしてしばしば…滑稽なほどに根拠がない!」

(嘲笑を浮かべる)

「それを決めているのは、漠然とした『社会』という名の怪物であり、流行を作り出す商人であり、あるいは、我々のような芸術家気取りの人間が提示する、新しい『スタイル』かもしれない。確かなのは、それが決して普遍的なものでも、神聖なものでもない、ということだけですな。」


フリーダ・カーロ: (ワイルドの言葉に頷きつつ、自身の経験を重ねるように)

「ええ、その通りよ。基準なんて、誰かが勝手に作り上げたものに過ぎないわ。特に、私のような…ヨーロッパとは違う文化で育った人間にとってはね。」

(自身の眉を指差しながら)

「例えば、私のこの眉。繋がっているのが自然な形よ。でも、外から来た人たちは、それを奇妙だと言い、整えろと言う。私の民族衣装もそう。これは私のアイデンティティ、メキシコの誇りそのものなのに、それを『時代遅れ』だとか『奇抜すぎる』とか、勝手な物差しで測ろうとする。」

(語気を強める)

「誰が決めたのよ、そんな基準! なぜ私が、あなたたちの決めた『美しさ』に合わせなくちゃいけないの? 私は私。私の美しさは、私が決める。他の誰にも決めさせないわ!」


クレオパトラ: (フリーダの情熱的な言葉を、少し冷ややかに見ながら口を開く)

「お気持ちは分かりますわ、カーロさん。ですけれど…基準というものが全くの無意味だとは、わたくしは思いませんことよ。」

(自身の首筋に優雅に手をやりながら)

「確かに、細かな流行り廃りはありましょう。けれど、例えば…均整の取れた顔立ち、輝く瞳、滑らかな肌。そういったものが、多くの文化や時代で好まれてきたのは事実ではないかしら? 我々ヘレニズムの世界では、ギリシャの彫刻に見られるような調和やプロポーションこそが、美の理想とされました。それは、単なる気まぐれではなく、人間が本能的に心地よいと感じる『型』のようなものが存在するからではないかしら?」

(ワイルドとフリーダに向かって)

「人々が共通して『美しい』と感じる何かがあるからこそ、基準は自然と形作られていく。それを全て否定してしまうのは、いささか乱暴な議論に聞こえますわ。」


ソクラテス: (クレオパトラの言葉にも、ワイルドやフリーダの言葉にも、満足できない様子で口を挟む)

「型、じゃと? 基準が移ろいやすい、じゃと? なんと矮小な議論をしておるのか、おぬしらは!」

(呆れたように首を振る)

「そなたたちが語っておるのは、しょせん、この地上に見られる美の『影』に過ぎん! 流行りの形だの、均整の取れた顔立ちだの…そんなものは、真の『美』そのものではないわい!」

(こぶしでテーブルを軽く叩く)

「真の『美』とは何か! それは、目に見える形のことではない。魂が焦がれる、完全にして永遠なる『イデア』のことじゃ! それは善であり、真理と分かちがたく結びついておる。我々が探求すべきは、その不変の『美そのもの』であって、時代や場所によって変わる見かけの美しさなどではないのじゃ!」


オスカー・ワイルド: (ソクラテスに面白そうに応じる)

「おお、出ましたな、哲学者先生お得意の『イデア』! 目に見えず、手にも取れない、実に不便な美ですこと。ですがね、先生。我々が生きているのは、その『影』がうごめく、この俗世ですよ? 魂が焦がれる高尚な美も結構ですが、目の前にあるドレスの美しいドレープや、若者の輝くような笑顔に心を奪われる…それもまた、否定しがたい人間の真実ではありませんかな?」


ソクラテス: 「ふん、真実を知らぬ者の戯言じゃ! 目に見える美に心を奪われるのは、魂が未熟な証拠に他ならん!」


フリーダ・カーロ: (ソクラテスの言葉に、静かに反論する)

「魂、魂って言うけれど、先生。私たちの身体は、魂の容れ物なんかじゃないわ。身体そのものが、私たちの経験であり、歴史であり、叫びなのよ。私の描く自画像を見て。そこには、傷も、痛みも、生々しい現実もある。でも、それこそが私の『美』なの。あなたが言うような、どこか遠い理想の『美』じゃないわ。」


クレオパトラ: (フリーダの言葉に、少し考え込むような表情を見せるが、すぐに現実的な視点に戻る)

「…カーロさんの言うことも、一つの真実なのでしょう。ですが、現実問題として、人々は目に見える『美』に動かされる。国を治める者としては、その現実から目を背けるわけにはいきませんわ。理想の美を探求するのも結構ですが、今、ここにある基準の中でどう立ち振る舞うかが、重要なのではなくて?」


あすか: (複雑化する議論を整理しようと試みる)

「なるほど…美の基準は、ワイルドさんやフリーダさんがおっしゃるように、社会や文化、あるいは個人の意思によって『作られる』側面がある一方で、クレオパトラ様がおっしゃるように、ある程度、時代や文化を超えて共通する『感覚』のようなものも存在するのかもしれない…。そしてソクラテス先生は、そういった地上の基準とは別に、追求すべき普遍的な『美のイデア』があると説かれる…。」

(少し困ったように微笑む)

「うーん、これは…美しさというものがいかに多面的で、捉えどころがないか、改めて思い知らされますね。基準は移ろうのか、普遍なのか。誰が決め、私たちはそれにどう向き合うのか…。本当に難しい問題です。」


オスカー・ワイルド: 「難しい? いやいや、だからこそ面白い。退屈な答えなど、美しくありませんからな。」


ソクラテス: 「面白いなどと、不真面目な!」


フリーダ・カーロ: (静かに頷く)「…でも、その『物差し』で人が傷つく現実があることは、忘れないでほしいわ。」


クレオパトラ: (黙って他の3人を見ている)


あすか: 「ありがとうございます。美の基準を巡る議論、非常に興味深いものでした。皆さんの意見が出揃ったところで、次のラウンドでは、さらに核心に迫りたいと思います。それは…倫理的な問題。見た目で人を判断することは、果たして『悪』なのか、それとも…?」

(ラウンド2終了の短い効果音、あるいは照明の変化)

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