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23回目 その3

「はいはーい♡ 次のお題は私が決めるよ!」

杏奈が布団の中でごそごそ起き上がって、毛布を肩まで引き寄せながら宣言する。


「題して、“おやすみポーズ選手権”♡」


「なにそれ?」って俺が呆れると、杏奈がにやりと笑った。

「簡単♪ れー君の隣で“こうやって寝たい♡”ってポーズを実演するの。で、どれが一番“眠れる幸せ”を感じられるか、れー君がジャッジ♡」


……また俺を真ん中にして遊ぶ気満々だな。いや、分かってるけど。逃げ場なんて、布団の中にはない。


一番に飛び出したのは、やっぱりふわり。

大きな身体が布団の後ろ側から迫ってきて、俺をすっぽり抱き込む。背中にぴたりと張り付く温度。肩越しにかかる呼吸。まるで布団そのものが巨大なぬくもりになったみたいだ。


「れーじくん……こうやって眠ったら、夢の中でもずっと一緒~♡」

囁きはのんびりしてるのに、背中に伝わる心拍のリズムがやたら速くて、逆に俺の胸の音まで意識してしまう。


「……っ、反則だろこれ」

小声でぼやいたら、ふわりが背中越しに「えへへ~♡」って笑った。その笑いが震動ごと伝わってきて、余計に意識が乱れる。


次に動いたのは鈴音。

布団の中を器用にすり抜け、正面から俺に近づいてくる。視線がまっすぐで、逃げ場を与えてくれない。


「レージ君……こうすると、鼓動が聞こえます。……安心できます」

そう言って、俺の胸に額をそっと置いた。


額に触れた髪の感触。俺の鼓動に合わせて小さく上下する肩。

真剣すぎる眼差しと、ほんのり震える声。その一途さに胸がじんわり熱くなる。


「……おい、そんな顔で言われたら眠れなくなるって」

俺が苦しい声で返すと、鈴音は「……っ♡」と真っ赤になり、慌てて目を伏せた。

その仕草がまた直撃で、俺の理性はさらに削られていく。



最後は杏奈。

俺の右腕を強引に抱き寄せて、布団の中で腕まくらポジションに収まる。

「れー君は私の腕まくらが似合うの♡ 毎日こうして眠ったら、私が一番“正室”ってことでしょ?」


挑発的に見上げてくる瞳。だけど耳の先が赤く染まっていて、からかいと同じくらい本気が混ざっているのが分かる。

腕にかかる重みがじわじわと近さを訴えてきて、俺の喉はひりつき、呼吸が浅くなる。


「……あー、ダメだ。選べねえ」

観念して言った俺に、杏奈はにやっと笑って――

「ふふ♡ それでいいの。だって、どれもぜーんぶれー君のもんだから♪」



結果は「全員優勝」。

その瞬間、三人が同時に寄り添ってきて、布団の中は一気に団子状態になった。

肩と胸と背中に押し寄せるぬくもり。頬に髪が触れる。吐息が耳をかすめる。

理性が「落ち着け」って叫ぶのに、体の奥から「このままでいい」って甘い声が返ってくる。


「じゃあお祝いに、“おやすみキス”ね♡」杏奈が宣言する。

「わたしも~♡」ふわりが楽しそうに追随。

「レージ君……承知しました」鈴音も顔を赤くしながらきっぱり。


額、頬、唇の端――三方向から一斉に、軽いキス。


「っ……!」

思わず情けない声が漏れる。軽いはずなのに、熱が刺青みたいに残って、顔中が火照っていく。

羞恥で顔を隠したいのに、三人の体温に囲まれて動けない。


「れー君、今の顔……最高にかわいい♡」杏奈。

「れーじくん、耳まで赤いよ~♡」ふわり。

「レージ君……完全に崩壊してます」鈴音。


頭が真っ白で、言い返す言葉なんて出てこない。

思春期の理性なんて、こうして簡単に溶かされるんだって実感する。


眠れるわけない。

でも、この夜は眠れなくてもいい。そう思えてしまう自分が、いちばんどうしようもなかった。


「はいっ、第4ラウンドは私が決めるよ♡」

杏奈が毛布から半分身を起こして、いたずらっ子の目を光らせる。


「題して、“秘密ワードゲーム”! ルールは簡単。れー君に内緒で、私たちがひとりずつ“言わせたい言葉”を決めるの。で、どれだけ自然に言わせられるか勝負♡」


「……また俺をターゲットにするやつかよ」

抗議の声を出したけど、すでに三人はにやにや。

はい、拒否権なし。




最初の挑戦者はふわり。

のんびりした動きで俺の肩に顔を近づけ、囁くみたいに言ってくる。


「ねぇねぇ……れーじくん。今日のわたし、どうだった? かわいかった~?」


……あ、これは狙ってるな。完全に“可愛い”って言わせる気満々だ。

分かってるのに、背中に回された腕の温度と、耳元で甘く落ちてくる声に押されて――


「……か、可愛かったよ」

口から滑り出した瞬間、ふわりの顔が花みたいにほころんだ。

「やったぁ♡ れーじくんの“可愛い”ゲット~!」


俺の胸の奥が、羞恥でドクンと跳ねる。わざと狙われてるのに、素直に言っちまった。理性、崩壊その一。


次は鈴音。

正座みたいにきゅっと膝を揃えてから、俺の真正面に座り込む。

その仕草だけで、緊張が伝わってくる。


「……レージ君。鈴音のこと、どう思っていますか?」

真剣な目で、真正面から。


うわ、それは反則。布団の中、至近距離、逃げ場なし。

真面目な問いを真正面からぶつけられて、喉がひりつく。


「ど、どうって……その……大事、に……思ってる」

途切れ途切れに言葉が落ちた瞬間、鈴音の耳が真っ赤に染まった。


「……っ♡ だ、大成功です……!」

手で顔を隠して震えてるけど、嬉しさで口元がほころんでるのが分かる。

こっちの方が耐えられない。羞恥で視線を逸らすのは俺の方だ。理性、崩壊その二。


最後は杏奈。

もう完全に余裕の笑顔で、俺の右手を握りながら耳元に身を寄せてくる。


「れー君。正直に言ってみて♡ 一番好きなのは、誰?」


「っっ!?」

息が止まる。

ふわりと鈴音が一斉に「えっ!?」とこっちを見て、布団の空気が一気に熱を帯びる。


「ほらほら♡ 言って? 誰でもいいよ? もちろん私でもいいけど~♪」

挑発的な杏奈の声に、心臓がバクバクと跳ねる。

ここで一人の名前を言えば、大混乱確定。かといって黙ってても逃げ道はない。


「……っ、そ、そんなの……選べるか!」

思わず叫んだ。

額にじんわり汗がにじむ。羞恥と動揺で、理性が完全に崩壊する。


杏奈は「ふふっ♡ そう来ると思った!」と笑い、ふわりと鈴音も安堵したように笑う。

「れーじくん、顔まっか~♡」

「レージ君……でも、今の答え、ちょっと嬉しいです」


結果は「全員大成功」。

三人同時に布団の中で寄り添ってきて、額や頬に軽いキスをばらまいてくる。


「れー君、“可愛い”も“好き”もぜーんぶ言ってくれたからね♡」

「れーじくん、理性オーバーヒートだねぇ~♡」

「レージ君……完全降参ですね」


羞恥で顔を覆っても、逃げ場なんてどこにもない。

思春期の赤面とドキドキは、布団の中で際限なく続いていった。



~ゲーム23回目 終了~








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