2回目 その4
「肩たたきの順番は、鈴音、杏奈、ふわりの順だな」
「正解~。ちなみにそれぞれ答えが分かった理由は?」
ここで俺の幼馴染み力が試される。
明確に体重の軽さとか冒涜的な感触が~とか言うと軽蔑まっしぐらだ。
考えろ俺。幼馴染みらしく、何か女の子の地雷を回避しながら明確な答えに辿り着く回答を導きだすのだ。
くっ、答えを考えるよりこっちの方が難易度が高いじゃないか。
「え~、まず最初が鈴音だと思った理由だが~、これはシンプルだ。叩いてる時に息遣いが聞こえてな。声の感じから鈴音だと分かった」
「なるほど~」
よし、無難な答えだ。見る限り感情に変化はなさそうなので無事にクリア。
「次に二番目が杏奈だった理由だが、これは杏奈が新体操部だったからだな。叩いている時の体重移動の軸がぶれなかった。不安定なベッドの上で膝立ちになってても体が非常に安定していたんだ」
「えへへ~、凄いねれー君。そんな事で分かっちゃうんだ」
「俺も曲がりなりにスポーツ選手だったからな。最後の一人は消去法だ」
「おお~、ぱちぱちぱち~。見事にNGワードを回避しながら説得力のある答えを出したね」
「口八丁もここまでいくと見事ですね。将来は営業職かペテン師に就けますよ」
「なんでそんな極端なジョブなんだよ」
なんだか絶妙に褒められている気がしないけど、気にしない方がいいな。
「ちなみに~、私が使った肩たたきの道具はおっp」
「俺の気遣い無駄にしないでっ!」
「じゃなくてビーズクッションですよ~♪」
絶対嘘だ。そもそもそんなしゃれたものはこの部屋には置いていない。
いや、ある意味クッションだけどさ……。
「それじゃ次のターンいってみよーっ」
◇◇◇
「「「王様れーじ君♪♪♪」」」
「よっしゃーっ! また鈴音ですよーっ!」
「引きがいいな鈴音は。次はどうするんだ?」
「そうですね~。今度は王様に体を張ってもらいましょうか。腕立て伏せ10回から」
「え、そんなんでいいの?」
「ただし、腕立て伏せは逆立ちした状態で」
「逆立ち腕立て伏せか。バランス取るのは難しそうだけど、10回くらいならなんとかなるか」
「倒れてもいいようにふわりちゃんに補助をお願いしましょう」
「はーい♪」
「ああ、それなら安心だな。この部屋狭いし、倒れたら色々大変だ」
逆立ち状態とはいえ、腕立て10回くらいなら軽いもんだ。
「よっこら、っせ……と。っととと、ふわり、補助頼むぞ」
「大丈夫だよー。倒れたらおっぱいに当たるからセクハラで訴えるからねぇ」
「理不尽ッ!」
ふわりの両手が足首を支えてくれているのでバランスは安定している。
大丈夫。10回くらいならなんとかなるぜ……。
「それじゃ、準備の仕上げですよー。よっこらせっと」
「お、おい鈴音、なにやってるんだお前」
あろうことか鈴音が逆立ちしている俺の真下に入り込んで来やがった。
「お、おいおい、そんな所にいたらキスしちまうぞ」
「ふ、へへ……。鈴音の顔に触れるギリギリまで寄せてくださいね。肌が触れたら罰ゲームですからね。息遣いを感じたらカウントしますから、それまで体を上げたらダメですよ」
「ぬぅう。一気に難易度が上がったぞ」
俺がバランスを崩すと鈴音に頭がごっつんこして大変な事になるし、触れたらセクハラで訴えられる。
これは条件が厳しそうだ。ゆっくりやると勢いが利用できないので相当キツくなるし。
「ちなみにこの位置からだとふわわんのおパンティがハッキリ見えますよ」
「いやーん♪ リンちゃんエッチ~」
足を開いたふわりの間から顔を出したと思ったらそれが目的だったのか。
「くっ、心理作戦とは卑怯な。俺の心はそんな事では揺さぶられないぞ。ちなみに何色?」
「うーん、回答を拒否しまーす。ふわわんの人権優先ですねぇ」
「じゃあ私も反対側から参加しよっかな~。こっち側に倒れても危ないからね。両方から支えてあげるね、れー君」
「お、おう、サンキュー。ち、ちなみに鈴音、その位置から何色が見える?」
「え~、ノーコメントで」
「れー君のエッチ~」
くそっ。二回目なら行けると思ったがダメだったか。まあさっき見たんだけどね。
少し顔を動かせば頭上にはパラダイスが広がっているというのに、倫理観がそれを許さない。
目の前の鈴音がそれを許してくれないだろう。
ニヤニヤしやがって。俺が欲望で葛藤しているのを楽しんでやがるな。
「ふぅ~♡」
「うひぃんっ、こ、こらっ、どっちか知らんけど足の裏に息を吹きかけるな。くすぐったいじゃないかっ!」
危うくバランス崩す所だった。ファーストキスで歯同士ごっちんこじゃあんまりだからな。
「ふぅ、ふぅ……。ほらほら、早く始めないと筋肉が疲労していきますよ。その格好してるだけで消耗するでしょ」
「よ、よし、始めるぞ」
確かに逆立ちしてジッとしているだけでもかなりの乳酸が溜まる。
早いところ始めないと無条件で罰ゲームになってしまうじゃないか。
「まずは、一回目~、い~ちっ」
ゆっくりとゆっくりと腕を曲げ、鈴音の顔に近づいていく。
「~、~、ふぅ~、ふぅ~」
心なしか鈴音の瞳が潤んで息遣いが荒くなってきてる気がする。
目が血走って鼻息が荒い。まさか興奮してるのか?
「お、おい、早くカウント数えてくれ。一回一回がキツい~」
「もう少し、もう少し近づいてください。はい、そこで一回」
あわや唇同士が触れ合おうという至近距離になって、ようやくカウントが許された。
「ふぬぅ~、二回目~、そ~れ~ぇ」
「が~んばれ♪ が~んばれ♪」
いくら足を支えてもらってると言っても逆立ち腕立てはキッツいな。
しかもこの厳しい条件で10回も。
「にーかいめ、さーんかいめ♪」
よーし、順調だ。四回目、五回目、六回目と成功。
ようやく通過点を超えたところで、更なる厳しい妨害工作が始まる。
「ふ~、こちょこちょこちょ~」
「ふひゃひゃひゃひゃっ⁉ こ、こら杏奈ッ、ふわりかっ⁉ どっちか分からんけど足の裏をくすぐるのは反則だろっ! 危ないじゃないかっ!」
「ぶほっ、れーじ君の顔が福笑いみたいでクッソおもれぇですよ」
好き勝手言いやがって。完全に俺で遊んでやがるな。
「うわっ、ヨダレ垂らさないでくださいよっ、きったいないなぁ」
「そんにゃこと言われても、あひゃひゃひゃっ、ぐぬぬぬっ、気合いだぁあ」
くおおっ、と、とにかく後4回だけだ。気合いでなんとか乗り切るしかない。
「ぬぁああ、七回目~~」
「はーい七回~。頑張れれーじ君~。やり切ったらふわわんのおパンティの色を教えてあげますよ~」
「ぐぬぬぬっ、それも気になるけど、それのタメに頑張るのは何か違う気がする~~~っ」
「八回目~。ほらほら後二回ですよっ! 気合いだ気合いッ。もうちょっと近づいて、はい八回目~。杏奈ちゃんのパンツの色知りたくないですか~」
「ぬううぁあ、それはさっき見たから知ってる~、イテッ、つねるなよ杏奈ッ」
「セクハラする人にはお仕置きでーすっ」
「不可抗力だ~~」
見たくて見たんじゃないやいっ! いや嬉しくないわけじゃないが……。
「ぐぬぁああっ、あと少し~~~」
ぐおおおっ、あと少しっ、ゴールが見えてきたぞっ。
「ほらぁ、もっと近づいて。キスしたらセクハラですからね」
そう言いながら舌先をレロレロと突き出してからかって来やがる。
くそっ、このままマジでベロチューしてやろうか。
「ぐぬぬぬっ、あと、もう、少し~」
「おおお、凄い凄いっ。九回目ですよ~。ところで~杏奈ちゃ~ん」
「なーにー?♪」
何か猛烈に嫌な予感がするぞ。何を始める気だ。
「今何時ですか? この位置からだと時計が見えなくて~」
「えっとねぇ、今は~」
「おいこらっ! ”時そば”はやめろっ! マジでシャレにならんぞっ!」
この上数を追加されたらマジで崩れ落ちる。
「ぐぬううう、10回目~~っ」
「もう少し近づいてぇ。ちゃんと腕を曲げないとカウントしませんからねぇ」
あと少しで鈴音の唇に触れてしまう。
あと3㎝……2㎝……1㎝……。ま、まだかっ、まだお許しはでないのか……。
腕が悲鳴を上げている。このままでは落ちる。
『チュッ♡』
「えっ⁉ おわっ、しまっt――――」
――――何かが、触れた。唇に、何かが、柔らかい何かが自分から向かってきた。
「おとっととっ、危ないよ~」
バランスを崩してヒジで体重を支えるが、疲労した筋肉では支えきれなかった。
あわや倒れ込む寸前でふわりと杏奈が支えてくれる。
足の裏に巨大なスライムがダブル密着している感触を知覚するが、それよりも……。
「り、鈴音……」
「えへへ……触れたから反則負けでーす……♡」
顔を真っ赤にして唇に指を当てる鈴音の色っぽい表情が、俺の思考を停止させたのだった。




