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19回目 その3

「れー君、はいタオル♡」

杏奈が俺の頬についたクリームをぬぐいながら、にやっと笑う。タオル越しに伝わる圧が妙に優しくて、逆に心臓が騒ぐ。

「……れー君って、こうやって世話焼かれると絶対赤くなるんだよね♡」

「そ、そんなことない!」

「はいバレた~♡」

杏奈の楽しそうな声に、頬がますます熱くなる。


 ふわりもすかさず背中をゴシゴシ。タオルの大きな布面積がごしゅごしゅと動いて、体ごと揺れる。

「れーじくん、ここにもシチューのしみ~♡ あ、脱がすね?」

「いやいやいや、なんで脱がす流れ!?」

「だって~♡ タオルだけじゃ落ちないよぉ~♡」

 耳元に吹きかかる息がくすぐったくて、首筋まで赤くなる。


 鈴音は真顔で俺のエプロンのひもを解きかけながら、きっぱり。

「レージ君。鈴音が“更衣係”を担当します」

「なんで役職付けるんだよ!!」

 固い声なのに、耳までほんのり赤く染まってるのが余計にズルい。――はい、後半戦もカオス確定。


「れー君、“王様試食会”いきます!」

杏奈が目玉焼きを差し出し、ふわりはシチュー、鈴音はおにぎり。三人が一斉に「はい、あーん♡」モードで迫ってくる。


「ちょっと待て、順番を――」

「「「同時あーん♡」」」


 スプーン、レンゲ、ラップに包まれたおにぎりが同時に口元へ。逃げ場なし。結局、口の中は甘い、しょっぱい、熱いがごちゃ混ぜで大暴走。

「……っ! 味の渋滞!!」

 でも、三人の笑顔に囲まれてるだけで、喉の奥から笑いが漏れる。


「れーじくん、どれがいちばん美味しい?」

ふわりの大きな目が至近距離で覗き込んでくる。

「れー君、もちろん私だよね♡」杏奈は圧を強めてくる。

「レージ君、鈴音の……ですよね?」鈴音は真剣勝負の顔。


「ぜ、全部うまい!!」

 必死に答えた瞬間、三人同時に――

「「「ズル~い♡」」」

 膨れっ面で攻撃。けど、その拗ね顔すら愛しい。


「じゃあ次は、“王様のお膝”ご褒美♡」

杏奈が悪戯っぽく宣言した瞬間――三人同時に俺の膝へダイブ。


「ぎゃー! 一度に来るな!!」


 結果、俺の両膝と太ももは完全に埋まり、三人がギュウ詰めで密着。

「れー君、ほら♡ 私が正室席♡」杏奈が堂々と腰を落とす。

「れーじくん、ぎゅむ~♡」ふわりは身体ごと押し寄せ、背中に圧がかかる。

「レージ君、鈴音も……失礼します!」小さな声で言いながらも、しっかり陣取る鈴音。


 重み、柔らかさ、甘い声、熱。四重奏みたいに押し寄せて、体温も思考もぐちゃぐちゃになる。

「ちょっ、待て……! 俺もう潰れる! ゲーム終了! 終了!!」

 両手を上げて必死にギブアップ。


 三人は顔を見合わせて、同時に弾けるように笑った。

「れー君、ギブアップ♡」杏奈。

「れーじくん、可愛い~♡」ふわり。

「レージ君……でも、嬉しそうでした」鈴音。


 結局、俺の膝は完全に占領されたまま。けど、三人の笑顔が眩しすぎて、息が苦しいのに心は満たされていく。

――19回目のゲーム、後半戦もやっぱりハッピーカオスで幕を閉じた。


「さて……そろそろ片付けないとだな」

ため息交じりに言った瞬間、三人の視線が一斉に俺を捕まえる。


「えー♡ れー君が片付け担当でいいんじゃない?」杏奈がにやり。

「れーじくん、今日は“王様ゲーム”だから~。王様は働いちゃダメだよぉ~♡」ふわりはソファにごろん。

「そうです。レージ君は“見守り役”。鈴音たちが奉仕します」鈴音は真顔でエプロンを締め直す。


 ……はい、完全に阻止されました。


 杏奈は食器を片手にシャカシャカ動く。

「れー君見てて♡ 私だって家庭的できるんだから♪」

 だけど泡が飛んで袖までびしょ濡れ。

「わっ、冷たっ! れー君、拭いて~♡」

 結局タオルを押し付けられる俺。

「ほら♡ “れー君がいると生活力+50%”だよ」

……妙に説得力があるのが悔しい。


 ふわりはマイペースに鍋を洗いながら――

「れーじくん~、見て見て。わたし、泡ひげ~♡」

「……子供か!」

「えへへ~♡ ほら、キスして取ってぇ~♡」

「すんな! 自分で拭け!」

 でもほんのり石鹸の匂い。胸がふわっと温かくなる。危うく本当にやられかけた。


 鈴音は几帳面にテーブルを拭きながら、きっぱり。

「レージ君、角の取りこぼしは許しません」

「お前、チェック厳しっ」

「当たり前です。……でも、“褒めるのは忘れません”。レージ君、今日も頑張りました」

 テーブルの端を指でトントンしながら、上目づかいで笑う。

……真面目顔から急に甘い顔に切り替えるの、反則すぎる。心臓がひっくり返る。


「れー君、お片付け見守りお疲れ様♡」杏奈が肩をポン。

「れーじくん、王様らしくソファに座って~♡」ふわりがふかふかクッションを持ってくる。

「レージ君、総仕上げです」鈴音が真剣な声で告げる。


 次の瞬間――三人同時に、俺の両頬と額へ「ちゅっ♡」


「……なんなんだ、このご褒美ラッシュ」

「えへへ♡ れー君が可愛いから♪」杏奈。

「レージ君、今日は“満点”です」鈴音。

「れーじくん、大優勝だよ~♡」ふわり。


 片付けどころか、最後まで徹底的に甘やかされ尽くした夜。

 ――19回目の余韻は、心臓のドキドキを残したまま、甘さ全開で続いていった。


~ゲーム19回目 終了~

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