2回目 その3
「ふぅ~、やっと収まってきたぁ。それじゃ続き始めよっか」
「「「王様れーじ君♪」」」
「お、次は俺だな。そうだなぁ。うーむ」
なるべくエロくならない奴がいいな。この王様ゲームはどうにもエロ方面に偏っている気がするので、ここで一度クールダウンが必要だろう。
「それじゃスタンダードに、王様へ順番に肩たたきでもしてもらおっかな」
「あ、それじゃ良い方法があるよー」
「良い方法?」
「うん、まず王様は目隠しをしてくださーい」
「え、目隠し?」
なんで肩たたきに目隠しが必要なのだろうか。
「じゃあ目隠しするから目を閉じてて。目隠しの布準備するから」
「え、タオルもってくるけど」
目隠しを準備するために目隠しってなんだ? 哲学か?
「いいのいいの。とにかく目を閉じてて。開けちゃダメだからね」
「お、おう」
こうやって意見をゴリ押しするってことは、また何か企んでるな。
ここは素直に従っておくとするか。
言われた通り目を閉じて杏奈に身を任せる事にする。
エロくしないようにすると言っても、向こうから積極的に何かするってなら止める理由はない。
まあそれがエロくなるとは限らないし、頭を切り替えようぜ俺。
思考がエロに染まっちゃダメだ。律しろ。
「はいはーい。ズルができないように鈴音が目隠ししちゃいますよ」
温かくて柔らかい手の平の感触が目蓋周りに吸い付いてくる。
あ、シャンプーと香水の良い匂いがする。なんだかんだ言って鈴音も女の子だよなぁ。ドキドキするぜ。
なんだか前回と比べてスキンシップに積極性があるような……。
「じゃあ目隠し準備するねー」
たかが目隠しの布一つで何を準備する必要があるんだろうか?
――シュル……シュル……。
「な、なんだ……? 何の音だ?」
何かが擦れるような音……やがてギシッとベッドが軋む音がして、背後に誰かの気配が回ってきた。
「しっかり目を閉じててよ~」
「お、おう」
こういう時にこっそり開けると杏奈の機嫌が悪くなるからな。
ここは素直に従っておこう。
「はい、じゃあ目隠ししまーす」
そうして目の周りに何かを巻き付けられた。声の位置からしてやったのは杏奈か?
「なんだろう、変わった感触の布だな。タオルでも無さそうだし、なんだこれ」
「あ、触っちゃダメだよ」
「え、なんで?」
「なんでもいいからっ。恥ずかしいじゃない」
恥ずかしいものを人の顔に巻き付けたのか? 一体何を使ったんだろうか。
なんだかフワッと香ってくる良い匂いには嗅ぎ覚えがあるぞ……。
(あ、これ柔軟剤の香りだ。しかし、それに混じって何か違うにおいが混じっているような……なんだろう、答えを知っている筈だけど、それに辿り着いてはいけないような)
まあタオルでも柔軟剤の香りはするだろうから、あんまりヒントにならないな。
マジで何で目隠しされてるんだこれは?
「それじゃ順番に肩を叩いていくから、王様は何番目が誰の叩きか当ててみて」
「なるほど。気配や感触で当てるゲームか。幼馴染み力が試されるな」
「そうだよー。間違えたら罰ゲームだからね」
「え~、でも間違えたかどうかって俺の方じゃ判断できないから不公平じゃないか?」
流石に叩かれている感触だけだと判断は難しそうだ。
「オッケー、それなら叩き終わった人はベッドから降りて、れー君の手を握っていればいいよね。両手で握っていれば動けないし、れー君は手の感触で誰が終わったのかのヒントにもなるしね」
「なるほど。手の大きさとかはかなりのヒントになるな」
「それじゃまずは順番シャッフルしよっか。全員ベッドに上がって」
「はーい♪」
「いきますよー♪」
シングルのベッドに4人が乗ると、流石に凄い勢いで軋んでいく。
しかも女の子が3人も。なんかドキドキする……。
「それじゃ始めるよ。しっかり当ててね」
トントントントンッ
「お、気持ち良いぞ」
軽快なリズムを刻みながら首の根元を叩き始める誰か。
まさしくリズミカルといった感じで心地良い振動が心を癒やしてくれる。
俺は肩こりを経験したことはないから分からないが、優しいリズムで叩かれるというのは何とも言えず心地良いものだ。
「はい、一人目終了~。ベッドの下に移動してくださーい」
司会進行の杏奈の声が右側からしてくる。最初は杏奈ではない……と見せかけてフェイクを入れているかもしれない。
ベッドの上を移動する3人の体重移動の気配も大きなヒントになるはずだ。
直接言ったらぶっ飛ばされるので言わないが、やはり体格差があるのでベッドにかかる体重もかなり違う。
集中しろ。最初に移動したのは比較的軽い音がした。
やがて俺の指先がそっと握られる。これは恐らく鈴音だな。
3人の中でもっとも体重が軽いであろう鈴音を基準にすると、残り2人の気配も分かりやすくなる。
手をしっかり握らないのは、手の大きさもヒントになってしまうからだろう。
指先だけ摘ままれる程度じゃ流石に大きさまでは分からないし。
トトトトトトトッ
次の人が始まった。今度は素早く強めの力で叩いてくれる。
ゆったりとしたリズムもいいが、より軽快に強い力で叩かれるリズムも中々だ。
やがて叩き終わった二人目が移動し始め、反対の手の指がそっと握られた。
次が三人目だな。
――シュル……シュル……。
「な、なんだ? また布が擦れる音がする。何をしてるの?」
――――シュル……。ファサ……ゴソゴソ、パチンッ……シュル……ファサ
今聞いた音を擬音で表するならこんな感じだった。
これはなんだ? もしかして服を脱いでるのか?
「……(クスッ)」
誰かが笑う声がした。そして最後に残った体重が重心を変え、動き始めたのが分かる。
――ばるんっ、ベチッ!
「うおっ⁉ な、なんだ今の感触はっ⁉」
大きくて弾力のある何かが首根っこから肩にかけて叩き付けられる。
大きいのに痛くはない。むしろ感触としては柔らかい。
――ばるるんっ! ベチチンッ! ばるるんっ! ベチチンッ!
「こ、今度は両側ッ⁉ なんだっ⁉ 何で叩いてるのッ⁉ 目隠しッ、目隠しの取り外しを要求するっ!」
俺はこの事実を探求する義務があるっ!
この弾力っ、この衝撃っ、素肌のような感触っ! その奥にある柔らかさっ!
――――べちっべちっ、ぶるんっ、べちんっ!
「くぅう、何かがっ、冒涜的な何かが叩き付けられているっ!」
断固として視覚的確認が必要だっ! これは正義だっ! 人類の進化のためには必要な探求なのだっ!
俺が正義の行いを実行しようと目隠しに手を掛けるが、すぐに両側から取り押さえられてしまった。
「ぬぅうっ、離せ二人ともっ。俺は後ろの光景を確認する義務があるのだっ! なんとしても――もぎゅうっ⁉」
抗議の声を上げると【黙れっ】と言わんばかりに両耳が塞がれる。
俺の頭部を丸ごと包み込んでしまう柔らかい大質量なんて一つしかない。
しかしその単語を口に出すと、何かが変わってしまいそうで言えない。
「はーい、時間でーす」
「では目隠しをっ」
「いま取ったら一生軽蔑するよ~♪」
「それはイヤだぁあっ!」
失うものが大きいっ! でも見たいっ! なんという理不尽っ!
くそっ、答えは分かっているのに口に出せないっ!
男には、失うと分かっていても突き進む事を試される時があるっ!
それから再び布地が擦れる音が収まるまで、目隠しを取ることは許されなかったのだった。
ちなみに目隠しの布をとる時も目を開けることは許されなかった。
答え合わせをするために目を開けた時、杏奈のニーソックスが妙にヨレヨレだったような気がするが、俺がそれを指摘することはなかった。




