表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
(完結保証)全年齢版【絶対俺だけ王様ゲーム】幼馴染み美少女達と男俺1人で始まった王様ゲームがナニかおかしい。ドンドンNGがなくなっていく彼女達とひたすら楽しい事する話(意味深)  作者: かくろう
特別編 夢を勝ち取る冬(全5回)

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

76/135

幕間1/5 求められる零士 

 翌日。

 教室に入った瞬間、背筋がピシッと伸びる。昨日のあの大混乱を思い出すと、どうにも顔が熱くなる。


「れー君、おはよ♡」

 杏奈がいつも通り、明るい声で机に腰かけてくる。黒髪のハーフテールが跳ねるたび、昨日の「正室争奪戦」がフラッシュバックして、俺は思わず目をそらす。


「れーじくん、昨日はよく眠れた~?」

 ふわりはのんびり笑顔で隣の席にどすんと座る。195センチの影がふわっと伸びて、教室の窓際に柔らかく落ちた。……いやいや、昨日あんなに“抱きつき攻撃”してきた人が、それを聞くのかよ。


「レージ君。昨日の“無理やり終了”の件ですが、記録には【王様による強制閉幕】と記しました」

 鈴音は律儀にノートを広げている。茶色のポニーテールがきゅっと結ばれて、真面目にペンを走らせているのが逆に可笑しい。


「いや、記録しなくていいからっ!」

 思わず突っ込む。

 周りのクラスメイトは「またやってるよ」みたいな顔で遠巻きに笑っている。


 昼休み。

 三人に机を囲まれて弁当を食べていると、ふと杏奈が言った。


「ねぇれー君。文化祭も終わって、次のビッグイベントってさ……もう冬だよね♡」


「クリスマス……ですね」鈴音が即答。

「れーじくん、雪合戦とかも楽しそ~♡」ふわりがほんわかとした声を足す。


 俺は唐揚げを一口かじりながら苦笑する。

「お前ら、もう次の“王宮ゲーム”に組み込む気満々だろ」


「当然っ♡」

「もちろん~♡」

「当然です」


 三人の声が見事に揃った。

 ……これじゃあ俺の平穏は、今日も明日も安泰に守られるどころか、甘さとカオスで塗りつぶされる未来しか見えない。


 でもまあ――悪くない。



 ◇◇◇


「――土峰先輩!」

 振り返ると、後輩たちが体育館シューズのまま駆け寄ってきた。額には汗、手にはバスケボール。練習の途中で抜け出してきたのが一目で分かる。


「先輩、やっぱまだカッコいいっすよ!」

「今の紅白戦でも話題でしたよ。“土峰先輩いれば10点は違う”って」


 ……おいおい。

 俺は引退したんだ。って、何回も言ってんだろ。


「俺はもう出ない。夏で終わりにしたんだよ」

 笑って言うつもりが、声の端にまだ少し苦味が残るのが自分でも分かる。


「でも……やっぱり冬まで一緒にやりたかったです」

 後輩の目が真剣で、胸の奥に小さな杭を打たれる感じがした。


(分かってる。俺だって、本当はまだやりたかった。だけど――)


 そのとき、背後から低い声。

「土峰」


 振り返ると顧問の先生が立っていた。ジャージ姿で、いつもの無愛想な顔。けど目の奥が、今日はやけに刺さる。


「お前がいなくてもチームは強い。……だがな」

 一呼吸置いて、ゆっくり言葉を落とす。

「俺はもう一度、お前がコートに立つ姿を見たい」


 心臓が一拍、乱れた。

 顧問にそう言われるなんて、思ってなかった。


(……反則だろ。そんな直球で言われたら、心揺れるに決まってるじゃねぇか)


「れー君の勇姿、また見たいに決まってるじゃん!」

 廊下の向こうから杏奈の声。水色のリボンをひらひらさせながら、全速力で駆けてきた。


「全国のファン100人軍団が泣いてるよぉ~」

 ふわりが長い脚でゆるゆる追いかけてきて、にこにこ顔で両手をぶんぶん振る。


「レージ君が立ってこそ“本物の大黒柱”です」

 鈴音はきゅっとポニテを揺らしながら、きっぱり言い切る。


 ちょっと待て。なんでお前らまで巻き込んでくるんだ。


「ほらほら、“応援団結成~!”」

 杏奈がポーズを決める。

「“フレー、フレー、れー君♡”」

「“全国制覇~、れーじくん~♡”」

「“勝利宣言。王様必勝”」


 廊下の真ん中で、勝手にチアポーズを決める三人。後輩たちも笑ってるし、顧問すら口元をわずかに緩めている。


(……俺はもう引退したって言っただろ。なのに、なんでこんなふうに囲まれてんだよ)

(でも……悪くない。むしろ、温かい。――こうやって背中を押されると、やっぱり立ちたくなるんだ。あの場所に)


 俺は後輩の頭をくしゃっと撫でて、顧問に軽く会釈した。

「……気持ちはありがとな。けど今はまだ、ちょっと考えさせてくれ」


 その言葉に、杏奈がにやりと笑う。

「ふふん、考えるってことは……“前向き”ってことだね♡」


 ふわりもふわっと微笑んで、鈴音は胸の前で小さくガッツポーズ。

 ……お前ら、ほんと抜け目ないな。


 結局、廊下を歩き出した俺は心の中で呟く。

(……やっぱ逃げ場ねぇな、俺。けど、悪い気はしない)


 背後では、三人と後輩たちの声がまだ響いてる。

「れー君、絶対もう一回立つからね!」

 ……ほんとにそうなるのかもしれない。



 ◇◇◇


 放課後。廊下を歩いていたら、職員室のドアが開いて顧問と目が合った。

「土峰」

 短く名前を呼ばれる。思わず足が止まる。


「少し、時間あるか」

 ……断れない。先生の目は、いつもそうだ。



 雑然とした職員室。コピー用紙の匂いと、コーヒーの香り。

 先生は自分の机に腰を下ろし、俺には隣の椅子を指さした。


「夏でやめたことは、悪いとは言わん。お前の気持ちも分かる」

「……」

「だがな。正直に言う。俺はまだ“土峰を戦力として見ている”」


 ストレート。いつもそう。逃げ場のない直球。


(……俺が欲しかった言葉だ。けど、今聞くと重い。嬉しいのに、苦しい)


「冬の選抜。全国を獲りにいけるチームだ。お前がいれば、もっと確実になる」

「……俺がいなくても、いけるだろ」

 反射で返した。だが先生は眉をひとつ動かすだけで否定。


「違う。お前がいると“チームが変わる”んだ。技術の話じゃない。空気が違う。流れが変わる」


 胸の奥でざわめきが走る。

(空気を変える……俺に、そんな力があったのか?)


「……先生」

「答えは急がなくていい。だが忘れるな。コートはいつでも、お前を待ってる」


 その声は、叱責でも指示でもなく、ただ真っ直ぐな願いみたいで――余計に心を揺さぶられた。


 職員室を出たところで、待ち構えていた三人。

 杏奈が両腕を組んでにやりと笑う。

「れー君、先生に“口説かれた”でしょ?」


「……なんで分かる」

「顔に出てる♡」


 ふわりは横で、ひょいと俺の鞄を代わりに持ち上げる。

「れーじくんの肩、ちょっと軽くしておくねぇ~。心が重くなるときは、物理的に軽くしよ~」


 鈴音はまっすぐ俺を見て言う。

「レージ君。悩むのは当然です。でも……鈴音は、どちらを選んでも応援します」


(……ほんと、この三人には敵わない。俺の弱い部分も、迷ってる部分も、ぜんぶ見抜かれる)



(先生の言葉、後輩たちの眼差し、三人の想い……。逃げてた自分を、もう誤魔化せない気がする)


 まだ、この手にはボールの感覚が残っている。気がつくと朝の練習に出かけている事さえあった。


(でも、怖いんだよな。もう一度立って、また倒れるのが。だけど――それでも挑戦してみたくなるのは、きっと今日みたいに背中を押してくれる奴らがいるからなんだ)


 俺は小さく息を吐いて、三人に向かって言った。

「……もう少しだけ考えさせてくれ。でも、多分――俺は戻る」


 杏奈がぱっと笑顔になって、ふわりが「わぁ~♡」と拍手、鈴音は小さく「了解しました」と頷く。


 帰り道、三人に囲まれながら歩く。

 コートに戻る未来が、少しずつ現実味を帯びていく。


(……やっぱり、戻るしかないな)

 翌朝、布団の中で天井を見つめながら、そう腹をくくった。

 迷いはある。でも、昨日の先生の言葉と三人の顔を思い出すと、背中が押される。

 逃げ続けてた後悔を、ここで終わらせたい。


 俺は携帯を取り、バスケ部のグループチャットに「今日から復帰したい。頼む」とだけ打ち込んだ。

 返事は一瞬で返ってくる。「待ってた」「よっしゃ」「やっとだな」。

 読んだだけで胸が熱くなる。



 体育館の床の匂い、バッシュの擦れる音。

 久々に腕にまとわりつく汗の重さ。

(ああ……やっぱ、ここだ)

 走り出すと、体はすぐ悲鳴を上げる。けど、心臓の奥はむしろ笑ってた。


 練習後、膝に手をついて息を整えていると――。


「れー君っ!」

 杏奈が入口から駆け込んでくる。

「おかえりっ! やっぱり、ここにいるのが一番格好いい♡」

 額にタオルを押し付けてくれる。新体操仕込みの柔らかい動き。


「れーじくん、スポドリ、冷えてるよ~」

 ふわりは195センチの長身で、ひょいっとドリンクを渡す。

 背後に影を落とすくらい近いのに、不思議と安心しかしない。

「無理しすぎないでねぇ~。でも、無理も少しはしていいよ~」


「レージ君、こちら。補給食です」

 鈴音はおにぎりを小さく差し出す。

「カロリー計算済み。練習後の糖質と塩分は必須です」

 真面目な顔なのに、耳がほんのり赤いのが可愛い。


 杏奈は「ストレッチ係」。

 新体操部仕込みで、俺の体を無理なく伸ばしてくれる。

 「れー君、ここもう少し柔らかくしよ♡」と軽く背中を押されると、痛いのに心地よい。


 ふわりは「癒し係」。

 練習後のマッサージはもちろん、でっかい体で壁みたいに寄りかかってくれる。

 「ほら、れーじくん、このまま少し休憩~」と頭を預けると、安らぎ度MAX。


 鈴音は「参謀係」。

 練習メニューを記録し、栄養バランスや休養スケジュールをまとめてくれる。

 「データ上では改善が見込めます」とか言いつつ、嬉しそうにノートを書き込んでる。


(俺は一人じゃねぇ。先生も、仲間も、そして……杏奈たちも。みんなが俺の背中を押してくれてる)

(冬の選抜で全国獲る。もう逃げねぇ。その時――この三人の笑顔を、スタンドで見たい)


 体育館の窓から差し込む夕日が、床に長い影を落としていた。

 その影の真ん中に、俺は立っていた。

 きっとここから、もう一度――。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ファンタジーです】(全年齢向け)
地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~
★リンクはこちら★


追放された“改造師”、人間社会を再定義する ―《再定義者(リデファイア)》の軌跡―
★リンクはこちら★
神のバグで棄てられた俺、異世界の裏で文明チート国家を築く (11月1日連載開始)

★リンクはこちら★
【絶対俺だけ王様ゲーム】幼馴染み美少女達と男俺1人で始まった王様ゲームがナニかおかしい。ドンドンNGがなくなっていく彼女達とひたすら楽しい事する話(意味深)

★リンクはこちら★
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ