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18回目 その2

「れーじくん……次は、わたしの番だよ~♡」

 ふわりが、まるで最初から決まっていたかのように、すっと俺の腕を抱えて自分の膝の上へ。

 さっきの“お膝取り合戦”からの流れで、誰も止められなかった。


「お、おい、ふわり? まだ勝負ついてな――」

「ううん~♡ もう決着はついたの。だって……“正室ふわりターン”が、自然な流れなんだもん~♡」

 本人がふわっと笑って言うと、ほんとにそういう空気になってしまうのがすごい。


 太ももの感触が、杏奈や鈴音とは全然違う。

 やわらかい、でも芯がしっかりしていて、しかも“安心感”が倍増してる。

 座っただけなのに、体の重さが全部ふわっと消えるような錯覚。


「れーじくん、背中も寄せて~♡」

「え、ちょ――」

「いいのいいの。はい、ぎゅ~♡」

 背中ごと大きな腕に包み込まれた瞬間、心臓の鼓動がドンっと跳ねた。


「ほらぁ……落ち着くでしょ?」

「……反論できねぇ」

「よかったぁ~♡ “安心度プラス三”だね」

 ふわりは冗談めかして言うけど、その笑顔が完全に本気のやさしさなんだよな。


「ずるいよ、ふわりちゃん!」

 杏奈がむっと頬を膨らませる。


「レージ君を独占は許可してません!」

 鈴音も正義感丸出しで詰め寄る。


 けど――ふわりはニコニコ顔のまま首をかしげる。

「うふふ~♡ 今日は“お膝タイム延長券”が出たんだよ。ほら、王様ゲームは“王様の心拍が落ち着くまで終了しない”ってルールでしょ~?」

「……そんなルール、あったか?」

「今できた~♡」


 緩いようで、実はめちゃくちゃ強引。

 杏奈も鈴音も“文句はあるけど強く否定できない”空気になって、結局俺はそのままふわり膝に固定されてしまった。


「れーじくん、目ぇ閉じて」

「え、なんで」

「“お膝スイッチ”押したから、次は“ほっぺサービス”だよ~♡」

 両手で頬を包まれて、ふわりの顔がゆっくり近づいてくる。

 ……そして、柔らかい唇が片方の頬に軽く触れた。


「はい、右♡」

「……っ」

「はい、左♡」

「お、おい」

「最後に、おでこ~♡」


 ――キス三連コンボ。

 ふわりのペースに完全に呑まれて、言葉が何も出なかった。


「ふふふ~♡ “甘やかしポイント”、満点だね」

 にっこり笑うその顔が近すぎて、胸の奥まで熱が残ってる。


 杏奈と鈴音は、見てるだけで顔が真っ赤。

「こ、これは……反撃ターンを準備しないと……!」

「鈴音も……参戦準備です!」


 その場に火花が散り、再びカオスが加速していくのは、もう時間の問題だった。



「れーじくん……もうちょっと、こっち寄って~♡」

 ふわりが大きな腕を回して、俺の体をさらに自分の胸元へ引き寄せる。

 柔らかい――って単語で片づけていいのか分からないくらい、全部が包み込まれる感触。


 俺の身長が164、ふわりは195。並んだ時点で“抱っこ感”があるんだけど……こうやって膝の上に収まると、完全に包容されてる。

 視界いっぱいにふわりの胸元。少し上を見なきゃ顔も見えない。

「わたしねぇ、れーじくんをこうして“ギュッ”ってしてるとね、もうぜんぶ大丈夫って思えちゃうの~♡」


「……俺が言うセリフじゃないか、それ」

「えへへ~♡ じゃあ、ふたりで言おうね」


 大きな掌が俺の後頭部を支えて、自然に頬が胸に沈む。

 鼓動が近いのに、やわらかい層に包まれてるせいで音が丸く響く。

 人肌の音響装置みたいだ。心臓ごとチューニングされてる気がする。


「れーじくん……見上げて~♡」

 胸から顔を上げた瞬間、ふわりがふわっと顔を下ろしてくる。

 次の瞬間――唇が、そっと触れる。


 長くも短くもない、でもしっかり“キス”。

 息が触れ合って、体温がほんの少し高くなる。


「……ん♡」

 耳に落ちる甘い吐息で、膝の上なのに全身がぐらっとする。

「わたしの“正室ターン”はねぇ……れーじくんを、とことん甘やかすんだよ~♡」


 そう言いながら、また額にキス、頬にキス、唇にキス。

 小刻みに何度も降らせるから、抵抗も忘れて、ただ受け止めてしまう。


「れーじくん、もっと“寄って”いいんだよ~♡」

 ふわりの胸に頬を戻す。布越しに感じる柔らかさ、奥で響く鼓動、甘い香り。

 ――安心感と同時に、ドキドキも増していく。


「ねぇ、れーじくん。聞こえる? 心臓の音」

「……聞こえる」

「わたしね、れーじくんが近くにいると、ちょっと速くなるの。……うふふ~♡ だから、れーじくんも速くなってて嬉しい」


 ぎゅっと抱きしめられる。

 体の大きさの差で、俺は完全に守られてるのに、同時に抗えないくらい“捕まえられてる”感じ。

 ――これが、ふわりの強引さだ。


「れーじくん……このまま眠っちゃってもいいんだよ~♡」

 耳元で囁かれて、力が抜けそうになる。

 膝の上の包容感、胸元の柔らかさ、唇に残る熱――全部が眠気と甘さを混ぜ込んでくる。


「……ふわり」

「なぁに~?」

「反則だろ、これは」

「えへへ~♡ 正室ターンだから、反則もルールにできるの~」


 負けを認めるしかない。

 俺はふわりの胸元に顔をうずめて、静かに息をついた。

 その瞬間、ふわりが俺の髪をゆっくり撫でる。

「だいじょうぶ~。れーじくんは、わたしがいっぱい守るからねぇ♡」


 安心とドキドキを同時に押し付けられる、この圧倒的な“お膝ターン”。

 杏奈や鈴音が割り込む前に、ふわりはしっかり自分の時間を刻んでいた。



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