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16回目 その2

「今回の正室は――鈴音です!」

 小柄な体でぐっと手を挙げた鈴音。茶色のポニテがぴょこっと跳ねて、宣言通りの勢いがある。


「テーマは、“王宮おもてなしカフェ”。王様をお客様として迎え、三人で交代しながら接客いたします!」

「カフェ?」

「はい。メニューもご用意しました」


 鈴音が差し出したのは、手書きの「王宮メニュー表」。

《ドリンク:甘々ラテ/ほっこりティー/すっきりソーダ》

《フード:あーんクッキー/手作りサンド/ひざまくらデザート》

《サービス:肩トントン/髪なでなで/耳元ささやき》


「ちょ、最後のサービス、カフェで出していいのかよ!」

「王宮カフェなので、特別メニューです」

 鈴音の真顔に、杏奈とふわりが「きゃはは♡」「いいじゃんいいじゃん~」と乗っかってきた。



「王様、甘々ラテをどうぞ♡」

 杏奈がミルクティーをマグに入れて、砂糖を三倍盛り。

「砂糖……多くないか?」

「れー君は甘党王様なんだから、これくらいがちょうどいいの♡」

 にやりと笑いながらスプーンで混ぜて、はい、と差し出す。

 一口飲む。……あまっ。けど杏奈が「どう? おいしい?」って見てくるから「うまい」って答えるしかない。

 杏奈、満点の笑顔。


「王様、“ご満悦ポイント”を記録しました」

 鈴音がカチッとチェック。いや、これ健康診断の続きじゃないのか?


「れーじくんには~、あーんクッキーねぇ~♡」

 ふわりが一口サイズをつまんで近づけてくる。

「ちょ、近い近い!」

「はい、“あーん”♡」

 否応なしに食べさせられる俺。ふわりの手の温度が近すぎて、味がどうこうより顔が熱い。


 これは何度やられてもドキドキしてしまう。



「んー、ちゃんと食べてるれーじくん、可愛い~♡」

「可愛いじゃなくて、普通に食ってるだけだ!」

 ……でも否定の声も弱くなる。


「次は鈴音の番です。“耳元ささやき”を提供します」

「いや、それはカフェの範疇を越えてるだろ!」

「特別メニューですから」

 言い切った鈴音が、俺の耳元にすっと近づく。

「……レージ君。今日も頑張りました。王様でいてくださって、ありがとうございます」

 真剣な声。こそばゆいのに、胸に刺さって仕方ない。

「鈴音、それ……反則だろ」

「カフェは自由です」

 小さく笑うその横顔に、心拍がさらに上がった。


「王様、お味はいかがでしたか?」

 三人が正面に並んで、ぴしっとお辞儀。

「……甘すぎて、俺が太りそうだ」

「最高ってことね♡」杏奈が即座に翻訳。

「じゃあ、三人とも“合格”~♡」

「はい、“満点シール”をいただきます!」鈴音がメモ帳に金色のマークを描く。


 最後に、三人同時に「ありがとうございました♡」と頭を下げられて、完全に客扱いされた俺。

 ――なのに、妙に居心地が良かったのはなんでなんだろう。


 ◇◇◇


「今回の正室は――ふわりです~♡」

 長身のふわりが手を上げると、部屋の空気が一瞬やわらかくなる。195センチの包容力、ほんと反則。


「王様をおひざに乗せて、“いちばん安心させた人が勝ち”ってゲームにしましょ~♡」

「え、俺が膝に? ……重くないか?」

「れーじくんは軽い軽い~。おやつくらいだよぉ」

 ふわりがさらっと言い放つ。杏奈と鈴音は「なにそれズルい!」「小柄の鈴音にもチャンスを!」と即抗議。


「まずはわたしね~♡」

 ふわりがソファに腰を下ろし、両手を広げる。俺は渋々……いや、正直ちょっと期待しながら膝に腰掛けた。

「おお……安定感、すげぇ」

「でしょでしょ~♡」

 太ももはふかふかで、背中には大きな手がぽんぽん。身体ごと包まれる感覚。危険。これは落ち着きすぎる。


「れーじくん、眠くなぁれ~♡」

「寝かしつけかよ!」

 笑った俺の頬を、ふわりが「よしよし」って撫でる。……やばい。完全に幼児退行しかけてる。



「次は私っ♡」

 杏奈がすぐさまソファの真ん中に座り直し、膝をぽんぽん叩く。

「れー君、ほらほら♡ 早く来て!」

 仕方なく膝に乗ると、杏奈はわざとバランスを崩すみたいに揺らしてきた。

「ちょ、おい、安定感なさすぎ!」

「えへへ♡ スリルも楽しんでこそでしょ♪」

 揺れるたびに、黒髪のハーフテールが頬をかすめる。耳元で「れー君の顔、赤くなってるよ♡」とか囁かれる。……狙ってやってる。


「“ドキドキポイント”加算です!」

 鈴音が記録。いや、それ加算するな!



「レージ君、最後は鈴音です!」

 小柄な鈴音が、胸を張ってぽすっと座布団の上に腰を下ろす。

「え、鈴音のおひざ……大丈夫か?」

「大丈夫です! レージ君なら任務遂行可能です!」

 言い切られて、恐る恐る膝に腰を下ろす。

 ……狭い。めっちゃ密着する。

「レ、レージ君! 近いです!」

「いやいや、お前が膝出したんだろ!」

 二人して耳まで真っ赤になって、まともに顔を合わせられない。なのに鈴音は真面目に背中をさすってくれる。

「ど、どうですか……鈴音の“癒やし警護”は……!」

「……効いてる」

「やったぁ……!」

 小声で喜んでるのが可愛い。


「さて、王様。いちばん安心したのは誰のおひざですか?」

 三人がぐっと身を乗り出す。圧がすごい。

「どれも……それぞれ違う安心があって、決められない」

 本音を言うと、杏奈が「ズルい~♡」、ふわりが「わたしは“眠気部門一位”だねぇ~」、鈴音が「なら鈴音は“密着部門一位”です」とか言い出す。


 結局、「三人のおひざ、全部優勝♡」という結果に落ち着いた。

 俺はもう、笑うしかなかった。

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