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2回目 その1

 2日後の夕方。


 今日はアルバイトもないのでいつものように4人集まる日だ。


「ただいまー、って誰もいないか」


 親は今日も仕事に出かけて留守だ。まあこれは我が家の日常だから問題ない。


 むしろいない方が色々と都合が良いってもんだ。


「お邪魔しまーす」

「おじゃましまぁ~す♪ あたっ」


「お、おい大丈夫かふわり」


 背丈の高いふわりは我が家の玄関で頭をぶつけてしまうことがある。


 この頃はなかったのに久しぶりに見たな。もしかして浮かれてるんだろうか。


「えへへ~。楽しみ過ぎてボンヤリしちゃった」


「気を付けてくださいよふわわんったら。イチゴタルトが崩れちゃったら悲しいですからね」


「私の心配してよリンちゃーん」


「とりあえずお茶煎れるから部屋で待っててくれよ」


「「「はーい♪」」」


 いつもの慣れた光景。しかし今日は心なしか皆ウキウキしているように見える。


 階段を上る足取りも軽やかだ。


(あれ?)


「ふんふーん♪」


 トントントン、と軽やかに階段を上っていく3人の姿……下から覗くと軽蔑されるので決してしないが、全員のスカートが心なしか短いような……?


 パンツ見えちゃうぞあれじゃ。制服のスカートは今時の女の子らしく短く履く人は多いけど、普段はロングスカートで通しているふわりまでいつもより若干短かくて太ももの裏側が見えてしまった。



 え? 女子のスカート丈を把握してるのはキモい?


 誤解だ。いつも一緒にいるからこそ今日の違いに気が付いたってことだ。


 常にスカートに注目していたわけではない。

 


 ないからな?




「お待たせ―」


 お盆に乗せたお茶を持って2階の部屋に入ると、杏奈が部屋の中をゴソゴソと這い回っていた。


 ベッドの下に顔を突っ込んで何をやっているのか。

 お尻を高く上げてるせいでパンツ丸見えになっている。


(今日はパールホワイトのレースか。なんかエロいな。勝負下着みたいだ)


 淡々と事実を確認するが、少しでも心乱すと青春のホワイトドラゴンが滅びのバーストストリームしてしまいそうになるので必死だ。


 そうなれば杏奈の思うつぼな気がするのでここはガマンである。


「何してるんだ杏奈。パンツ見えてるぞ」

「えっと~、エロ本の大捜索をね」


「お前らがしょっちゅう来るのにそんなもん隠すかよ」


 そんな分かりやすい所に隠すわけないだろ。今時紙媒体でエロを求める奴なんているのだろうか。


 ちなみに秘蔵のブルーレイなら本棚にカムフラージュして隠してあるので見つかる心配はない。


 こいつらあの手この手で探しだそうとするからな。こっちも知恵がつくってもんだ。


 一本だけだし、そうそうバレることはあるまい。


「多分あの辺じゃないかな~」


 本棚を指さして鋭い指摘をするふわり。何故バレるんだ。


「そ、そんな事より今日もやるんだろ?」

「誤魔化した~。当たりかなぁ」


 人のシークレットファクターを暴かないでほしいな。




「今日は前より色々持ってきたよー。趣向を変えてお題箱も準備してみましたー」


「お題箱?」


 そういえば前回は小道具ほとんど使わなかったからな。


 今日もゲームをやる気満々のようである。


 俺? 楽しみにしてなかったと言えば嘘になる。


 すみません、めっちゃ期待してました。


「それじゃあ張り切って始めよっか」


「その前にタルト食おうぜ。俺楽しみにしてたんだからさ」

「それは作り手冥利につきるな~」


「あ、じゃあタルト食べるのもお題に含めちゃおうか」

「どうやって?」


「それは後のお楽しみ。早速始めよっか。はい、割り箸持って」


「「「王様れーじ君♪」」」


「最初の赤は~、今回も私だね。お題箱は用意してあるけど、タルトは早いうちに食べちゃおうか。先に私が考えてたご奉仕始めるね」


 何をするつもりなんだろうか。

 食べ物で遊ぶようなことはしないでほしいけど。


「それじゃあ正室と側室全員で、順番に一切れずつ。王様に食べさせてあげてくださーい」


「「はーい」」


 なるほど。確かに普通に食べるより美味しくなりそうだ。


「じゃあ一通り食べたら王様から食べさせるってことでいい?」


「いいよー♪ はい、あーんして♡」


 天国であった。今日は以前よりも戸惑いも少なく、平和に始まっている。


 フォークに刺したタルトの粉が零れないように手を添えながら小さな一切れを運んでくれる。


「んぐ……んんぅ、やっぱりふわりのタルトは美味いな」


「えへへぇ。今回はちょっと良いチーズ使ってるんだぁ」

「最高に美味いよ。いくらでも食べられる。よし、じゃあ俺から杏奈に」


「うん、あーん♡ あむっ♪ んんん~~♡ 美味しいぃ♡」


「美味いよなこのタルト。でもなんで四つん這いになって食べるの?」


 何故だか杏奈はエサをねだるワンコのように四つん這いになって口を開いている。


 端的に言って、なんかエロい。


「ワンワン♪ ご主人様、ケーキ食べたいわん♡」


「よーしよし。そんじゃあ美味しいケーキ食べような杏奈ちゃん」


「わんわん♡ ご主人様優しいわん♡」


 急激に奇妙なテンションで犬真似をし始める杏奈に面食らうが、その心情に思い当たってノリに付き合う事にした。


「ほら杏奈ちゃん、もう一口食べようね」

「わぅん♡ はむはむ♡ 美味しいぃ♡ 心が癒やされるぅ」


「杏奈、今日なんかイヤな事あっただろ」

「くぅん……。やっぱり分かる?」


「お前が奇行に走る時は大抵ストレス抱えてる時だからな。今日は何があった?」


「変な人に声かけられて意味分かんないこと言われた」


「それじゃよく分からんけど、鈴音、なんか知ってる?」


「あ~、サッカー部の保杉(もてすぎ)君に告られてましたね」


「モテスギって、あ~、あいつか。確か隣のクラスだったな。告られたってマジかよ」


 モテスギ コマルってな冗談みたいな名前だが、顔は良いし爽やかイケメンで女の子にめちゃくちゃモテてる奴だ。


 去年のバレンタインデーには1人1人受け取って長蛇の列が出来てたし、マジで学園内にファンクラブがある。


 名は体を表すっていうけど、その名の通り女の子にモテる要素はちゃんとある、が、杏奈は記憶すらしていないって事か。


「モテスギって去年同じクラスだったぞ」


「覚えてないもん。アンタ誰って聞いただけなのにキレられたんだもん」


 そりゃモテスギも可哀想に。アイツ二年の時に同じクラスだったし、確かしょっちゅう話しかけてた記憶がある。


 杏奈の記憶には名前も姿も全く残ってなかったって事か。


 男としてはプライドズタズタだろう。ちょっと哀れだ。


「そりゃしょうがないな。ほら機嫌直してケーキ食べような」

「わんわん♡ たべるぅ♪」


 しかし、キレたモテスギには悪いが杏奈はこうなのだ。興味の無い人間は記憶に一切留めない。


 俺にはどっちが悪いかってジャッジはできないが、巡り合わせが悪かったとしか言えないな。


「わうーん♪ タルト美味しいぃ♡」


 そうして小さく一切れずつフォークに刺してタルトを食べさせ、杏奈のストレスがなくなるまで付き合った。


 他の2人もそのことが分かっているので、自分の番が回っても杏奈には文句を言わないし、逆に気遣って邪魔しないようにしている。


「はぁ~、美味しかった。れー君ありがとね。ふわりちゃんも、とっても美味しかったよ。リンちゃんも覚えててくれてありがと」


「どういたしましてぇ~」

「気にしないでいいですよ~」


「それじゃ次はふわりちゃんが食べさせる番だよ」


「はーい♪ それじゃれーじくん、私が食べさせてあげるね~」


 杏奈のストレスが消え、俺達は引き続き王様ゲームを楽しむのだった。

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