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12回目 その3

 三人に一斉に抱きつかれ、俺は床に倒れ込んだまま放心していた。

 頬やこめかみに残るキスの感触がじんじんと火照りを増幅させる。

 息が乱れ、頭が真っ白になる。


「……れー君、可愛いって言ってくれてありがと♡」

 俺の胸に頬をすり寄せてくる杏奈。甘い吐息がシャツ越しに伝わり、心臓が暴れる。


「えへへ~、れーじくんのお顔、真っ赤だよぉ♡ もっとドキドキしてほしいなぁ~♡」

 ふわりは後ろから覆いかぶさるように抱きつき、その柔らかな胸の感触が背中を押し潰してくる。温かく、重たく、そして圧倒的。


「レージ君……鈴音のことも、ちゃんと見てくださいね……♡」

 鈴音は俺の太ももにちょこんと跨り、上目づかいで覗き込む。その距離は、鼻先が触れそうなほど近い。


 三人三様の甘い圧力。

 俺の身体は、逃げ場を完全に失っていた。



 杏奈のシャツはまだ少しめくれたまま。くびれとおへそが、視界の端にちらちらと覗く。

「ねぇれー君♡ もっとちゃんと見ていいんだよ?」

 からかうようにウィンクをする杏奈。俺の息が一瞬止まった。


 ふわりは背後から「ん~♡」と伸びをするふりをして、さらに身体を密着させる。

 その拍子に、背中いっぱいを覆うほどの柔らかさがぶるん、と押し当てられる。

「れーじくん、あったかいねぇ♡ ぎゅーってしてると落ち着くよぉ♡」


 鈴音はというと、膝の上で小柄な身体をもじもじさせて、視線を泳がせながらも――

「レージ君……ちょっとだけ……こうしててもいいですか?」

 そう言って、俺の胸に両手を置き、身体を預けてきた。

 小さな重みと、ほのかな体温が直に伝わってくる。


 ――やばい。

 三人同時の密着。視線のやり場がなく、理性の防波堤がきしむ音がする。


 杏奈がふっと俺の耳元に唇を寄せる。

「れー君♡ もしかして……まだ“可愛い”って言い足りないんじゃない?」

 甘い声が鼓膜を震わせる。思わず全身がぞくりと震えた。


 ふわりも負けじと俺の手を自分のお腹に導いてくる。

「れーじくん♡ さっき見てくれたおへそ……触ってもいいよぉ~♡」

 柔らかな指先が俺の手を包み、そのまま自分の腰骨に触れさせる。


 鈴音は、恥ずかしさに頬を真っ赤に染めながら、それでも勇気を振り絞るように。

「レージ君……鈴音のおへそも……触ってほしい、です……♡」

 そう言って、自分で制服の裾をつまみ上げ、ぎゅっと目をつぶった。


 甘い香り、柔らかな感触、熱を帯びた吐息。

 理性は悲鳴を上げ、鼓動は爆音のように響く。


 俺は堪らず叫んだ。

「……杏奈も、ふわりも、鈴音も……ほんっとに可愛すぎるんだよっ♡」


「きゃ~~♡♡♡」

 三人の声がハモる。


「れー君、大好きっ♡」

「れーじくん、ぎゅー♡」

「レージ君……ずっと鈴音だけを見てください♡」


 甘いキスが頬に、額に、唇の端に降り注ぐ。

 もう、心臓がもたない――そう思った時。


 杏奈、ふわり、鈴音の三人が同時に唇を寄せてきて、俺の口元に軽く触れた。


「「「だいすき♡」」」


 柔らかい感触と共に、世界がふわっと甘く溶けていく。



 ――唇に触れた、三人分の甘い感触。

 それが残像のように残っていて、俺は床に倒れたまま動けなくなっていた。


 心臓はバクバク、頭はぼんやり。

 目を閉じても開けても、視界の端には杏奈・ふわり・鈴音の笑顔が浮かぶ。


「れー君……今、すごく幸せそうな顔してるよ♡」

 俺の胸に腕を回して抱きついたまま、杏奈が上目づかいで笑う。

 シャツはまだ少しめくれていて、おへそがちらちらと見えている。その度に俺の視線が勝手に吸い寄せられ、慌てて逸らした。


「えへへ~♡ れーじくん、真っ赤だよぉ。まるでサウナから出たみたい~♡」

 ふわりは背中にぴったりくっつき、頬をすり寄せてくる。その柔らかさが背中を潰すみたいに広がり、呼吸すら難しい。

 でも、不思議と嫌じゃない。むしろ安心感に包まれる。


「レージ君……鈴音のことも、ちゃんと見てくれて……嬉しかったです♡」

 俺の腰のあたりに座った鈴音は、小さな手を俺の胸に置きながら、恥ずかしそうに視線を泳がせている。

 けれど、時々ちらりと俺の目を見上げては――その度に顔を真っ赤にして俯く。


 三人それぞれの温もり。甘い匂い。鼓動の音。

 すべてが同時に押し寄せてきて、頭の中はぐちゃぐちゃになりそうだった。



「ねぇ、れー君♡」


 杏奈が俺の耳元に囁く。

「さっき“可愛い”って言ってくれたけど……もう一回、わたしだけに言ってほしいな♡」


 耳に熱が集中する。

 慌てて口を開く前に、ふわりがのんびりと重ねてきた。


「ずるいよ~、杏奈ちゃん。れーじくん、わたしにも言って♡ “ふわりは可愛い”って~♡」


 さらに鈴音まで、顔を真っ赤にして必死に言う。

「れ、レージ君! 鈴音にも……お願いです。“可愛い”って、はっきり言ってください!」


 ――逃げ場なし。

 三方向からの包囲網に、俺は頭を抱えた。


「わ、分かった! みんな可愛い! 何度でも言ってやるよっ!」


「「「きゃ~~♡♡♡」」」


 三人が同時に歓声を上げ、さらにぎゅううっと抱きついてくる。

 その拍子に、杏奈のお腹が胸に触れ、ふわりの胸が背中に沈み込み、鈴音の小柄な体重が腰にずしりとのしかかる。


 ――呼吸が、できない。

 でも、心地よさに、身体が勝手に力を抜いていった。


「ねぇ、れー君♡」

 杏奈がにやりと笑う。何やら嫌な予感……いや、心臓が持たないという意味でイヤな予感がする。


「ここで終わりだと思ったら大間違いだよ? まだ“正室奉仕”は続くんだから♡」


「そうだよ~。れーじくん、わたし達、もっといっぱい愛されたいの~♡」


 ふわりが後ろから囁く。


「レージ君……次は、鈴音の番にしてくださいね?」


 鈴音が膝の上で小さく身を揺らす。


 くっ、やはりかっ。甘い声に囲まれ、頭がくらくらする。

 杏奈はシャツをもう少しめくりかけ、ふわりは俺の手を自分のお腹に導き、鈴音は俺の胸に顔をうずめる。


 心臓の鼓動はすでに爆音。

 理性は、糸一本でかろうじて繋がっているだけだった。


「ねぇ、れー君♡」


 杏奈が満足そうに笑う。俺はへろへろだと言うのに。


「今日の“おへそ見せ奉仕”……ちゃんと記憶に焼き付けた?」


「えへへ~♡ れーじくん、忘れたらだめだよぉ~」


 ふわりが肩に頭を預ける。


「レージ君……鈴音も、次はもっと頑張りますから……覚悟しててくださいね♡」


 三人の瞳が輝く。

 その視線は、「次のゲーム」への期待を隠そうともしない。


 俺は天井を仰ぎ、深くため息をついた。

「……俺の寿命、確実に縮んでるよな」


 それでも。

 三人が笑ってくれるなら、それも悪くない――そう思ってしまう自分がいた。


~ゲーム12回目 終了~

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