12回目 その2
杏奈が俺の目の前でお腹を見せつけ、笑顔で挑発してきたその瞬間。
隣から、のんびりとした声が割り込んできた。
「……杏奈ちゃんだけずる~い。わたしもやる~♡」
ゆったりとした口調。だけど、その一言で空気が一気に変わった。
振り向けば、ふわりがいつもの柔らかな微笑みを浮かべて、長身をゆっくりと立ち上がっていた。
「ちょっ、ふわりちゃん!?」杏奈が慌てて声を上げる。
しかしふわりは聞いていない。大きな体をしなやかに動かしながら、俺の方へと近づいてくる。
「れーじくん♡ 杏奈ちゃんばっかり見せてるの、ずるいよぉ~♡」
俺の目の前に立ったふわりは、にこにこと笑いながら両手で制服のシャツをつまむ。
そして――おっとりした動作で裾を持ち上げた。
……視界が、一気に埋まった。
杏奈の引き締まったお腹とはまるで違う。
ふわりの195cmのスケールが生み出す、柔らかでたわわな迫力。
おへそは小さく可愛いのに、その周りを彩るラインは迫力と包容力で満ちている。
「どうかなぁ~♡ れーじくん、わたしのお腹も見てくれる?」
にっこり笑うその声が、頭の奥をとろけさせる。
俺の視線は勝手に吸い寄せられ、理性が警告を鳴らす。
「ま、待て待てふわり! ちょっと近い、近すぎるっ!」
「えへへ~♡ 近いほうが、ドキドキするでしょぉ?」
ふわりが少し身をかがめる。
俺の身長164cmに合わせるように、上から覆いかぶさってくる巨体。
その瞬間、俺の視界は完全にふわりのお腹で塞がれた。
肌の甘い匂い。
圧倒的なスケール感。
息をするのも忘れてしまうくらい、心臓が跳ねる。
「れーじくん、杏奈ちゃんのと、わたしの……どっちがドキドキした?」
ふわりの声はあくまで優しい。だけど内容は、小悪魔的な二択。
俺は反射的に叫ぶ。
「そ、そんなの比べられるわけねぇだろっ!!」
杏奈がすかさず割り込む。
「ほらね! やっぱり私のが一番なんだよっ♡」
「ちょっと杏奈ちゃん、それは早とちりだよぉ~」
二人の笑顔が、俺を挟み込むように迫ってくる。
俺の理性は、もう限界ギリギリだった。
杏奈とふわりが俺を両側から挟み込むようにお腹を見せつけてきて、視界も理性も限界に追い込まれていたその時。
――ガタッ。
椅子を大きく引く音が鳴った。
見ると、顔を真っ赤にした鈴音が立ち上がっていた。
「……レ、レージ君! 鈴音も負けません!」
声が震えている。けれど、その瞳は真剣そのものだ。
「ちょっ……鈴音!?」
「だ、だって……! 杏奈ちゃんもふわわんも、そんなに大胆に……レージ君に見せつけるなんて……! ずるいです!」
そう叫ぶと、鈴音は制服のシャツの裾をきゅっと握りしめた。
一瞬だけためらったあと――勢いよく、ぺろっと持ち上げる。
露わになったのは、149cmの小柄な身体に宿る健康的で引き締まったお腹。
華奢なのに、しっかり鍛えた名残を感じさせる、陸上少女らしいライン。
中央で小さく光るおへそが、眩しいくらいに俺の目に飛び込んでくる。
「ど、どうですか! レージ君! 鈴音のおへそも……可愛いですか!?」
小さな肩を震わせながらも、必死に俺へと迫ってくる鈴音。
頬は真っ赤で、目尻にはうっすら涙まで浮かんでいる。
その姿に俺の心臓は再び跳ね、理性の糸がどんどんほつれていった。
「ちょ、ちょっと待って鈴音! そんな勢いで来たら……!」
「見てくださいっ! レージ君! 杏奈ちゃんやふわわんに負けないくらい……鈴音だって、本気なんですからっ!」
俺の胸元に飛び込むように、お腹を突き出して見せてくる鈴音。
杏奈とふわりが驚いたように顔を見合わせ、次の瞬間には二人も負けじとさらに身を寄せる。
「ほらほら、れー君♡ どれが一番可愛い?♡」
「れーじくん、視線が泳いでるよぉ~♡」
「レージ君! 鈴音を選んでください!」
三人のお腹が同時に俺の目の前に迫り、もはや視界が修羅場。
左に杏奈の締まったくびれ、右にふわりの迫力ある曲線、そして正面に鈴音の健気で可愛いおへそ。
「や、やめろぉぉぉぉぉっ! 俺の理性を殺す気かぁぁぁぁ!」
俺の悲鳴は、三人の笑顔にかき消された。
杏奈、ふわり、鈴音――三人の幼馴染みが同時にお腹を見せつけて迫ってくる。
俺の目の前は、締まったくびれ、包容力あふれるライン、健気な小さなへそ……と、三者三様のお腹で埋め尽くされていた。
「れー君♡ 私のお腹が一番でしょ?」と杏奈が挑発的に笑い――
「れーじくん、こっちも見てほしいなぁ~♡」とふわりが優しく囁き――
「レージ君! 鈴音のお腹だって負けません!」と鈴音が必死に主張する。
俺の視線は右へ左へ、そして正面へと泳ぐばかり。
どこを見てもアウト。いや、アウトどころかゲームオーバー級だ。
何故だ。おへそなんてこれまで何度も見ているはずなのに、どうしてこんなにもドキドキしてしまうんだろうか。
「ちょ、ちょっと待ってくれ! 俺は一体どこを見ればいいんだ!?」
悲鳴のように叫んだ俺に、三人の表情が同時ににやりと変わった。
――嫌な予感しかしない。
「じゃあ決めた♡ れー君が『可愛い♡』って言うまで、この作戦は終わらないからねっ!」
「そうだよ~。わたし達、王様に“可愛い奉仕”してるんだもん♡」
ふわりがにこにこの笑顔で迫っている。クッ、可愛い。
「レージ君、鈴音達のことを……ちゃんと口に出して褒めてください!」
鈴音が顔を真っ赤にしながら叫ぶ。
「な、なんだよその無茶ぶりはぁぁぁぁ!」
三人は容赦なく迫ってくる。
杏奈はお腹をつんと突き出し、俺の鼻先ぎりぎりまで近づけてくる。
ふわりは背中から抱きつくように覆いかぶさり、圧倒的なスケールで俺を包み込む。
鈴音は正面からぐいっと割り込んで、俺の膝に手をつき、上目づかいで訴えてくる。
「れー君♡ 早く言わないと……もっと近づいちゃうぞ♡」
「れーじくん、わたし、止まらないよぉ~♡」
「レージ君! ほら、はやく!」
「わ、分かった分かった! 言うから、頼むから距離を詰めないでくれぇぇぇ!」
俺は両手を上げ、観念するように叫んだ。
「杏奈も! ふわりも! 鈴音も! 全員可愛すぎるぅぅぅっ♡」
一瞬、沈黙。
そして次の瞬間、三人が同時に声を上げた。
「「「やったぁぁぁぁ♡♡♡」」」
ドンッと同時に抱きつかれ、俺は椅子ごと後ろにひっくり返る。
頬に、額に、唇の端に、次々とキスの嵐が降ってきた。
「れー君大好きっ♡」
「れーじくん最高~♡」
「レージ君、ずっと一緒です♡」
もう抵抗する余地なんてどこにもない。
俺は完全に三人のおへそ見せ&“可愛いって言って作戦”に完敗したのだった。




