幕間
あまりにも非現実的な王様ゲームから開けて次の日。
昨日の出来事がまるで夢だったかのように意識が浮き上がっている。
「はぁ……昨日は凄かったな」
三年生のこの時期からは、少しずつ学園でやることも少なくなっていく。
俺達幼馴染み四人は既に行く大学の指定校推薦を決めているので、残る学園生活は消化試合みたいなものだ。
既に部活も引退しているし、放課後にやることといったら小遣い稼ぎのアルバイトか、昨日のように皆で集まってまったり過ごすくらいだしな。
「おはようれー君」
「おはよう杏奈」
「昨日は眠れた?」
「まあそうだね。ちょっと興奮冷めやらぬって感じだ」
「えへへ、またやろうね」
「え、またやるの?」
「え、ダメ?」
「いや、むしろウェルカムだ」
「よかった。私も昨日はスッゴく楽しかった。あ、でもおっぱいはちゃんとご褒美タイムじゃないとダメだからね」
「お、おう」
むしろご褒美タイム、またあるのか……。
思わずそこに目が行ってしまうではないか。
「ふふ、熱い視線を感じるぞー。頑張ってね。新しい趣向考えてあるから」
「それは楽しみ過ぎるな」
学園への通学路を二人で談話しながら歩いていると、一際目立つライトブラウンの髪色をした女の子が見える。
「あ、ふわりちゃんおはよう♪」
「おはよ~二人とも~。昨日は楽しかったね~。またやろうねぇ」
ふわりもヤル気満々であった。体を揺らすだけでぶるんと揺れる暴力的な何かは相変わらず凶悪だ。
「ふふふ~。視線が熱いよー。今度は私のも触れるかもねぇ」
「それはもう頑張るしかないじゃないか」
「なにが~とは言わなかったけど、何を触りたかったのかなぁ」
今日のふわりはめっちゃからかってくるな。昨日は大盛り上がりのうちに幕を閉じただけあって、ふわりもかなり自分を解放した事だろう。
なんて事を話しながら進む事しばらく。
学園近くの路地を曲がったところで見知った顔が走ってきた。
「おはようございま~す」
「あ、おはようリンちゃん。王様ゲームまたやろうねって話してたんだ」
「ほへっ、ま、またやるんですか?」
「え、ダメ?」
「だ、だめではないですけど……」
「今度はもっと面白い趣向凝らすからね」
「お、お手柔らかにお願いしますね」
これが俺達の日常である。幼馴染み達四人で談話をしながら学園に通学するのであった。
◇◇◇
「羨ましいぞ零士ぃいいっ!」
「うわっ、な、なんだよ。ビックリしたなぁ」
教室に入るといきなり後ろからデカい声を掛けられてひっくり返りそうになった。
「なんだよじゃねぇぞコラッ。我が校きっての美少女達を侍らせるハーレム野郎めが。貴様はどこのラノベ世界の転生者だ」
「濡れ衣もいいところだ。あいつらは幼馴染みだから一緒にいるんだって何回言わせれば気が済むんだ」
悔しそうに歯ぎしりするクラスメイトは、遺憾ながら友人の1人だ。
こういうやり取りはわりと日常なので既に慣れっこである。
コイツが言うように俺の周りには有り得ないほどの美少女が勢揃いしている。
ラノベ世界からの転生者と言われても否定しきれないところがあるのが辛いところだ。
いや、普通だよ? 俺普通の人間だからね。ただ単に生まれた環境が幸運過ぎるだけなのだ。
周りを美少女に囲まれているというのはいい事ばかりではない。
いらぬやっかみも受けるし、嫌がらせもされる。
杏奈の事が好きなちょい悪ヤンキー達の一団に囲まれてボコられそうになった事もある。
教室の反対側では当の杏奈がクラスメイト達と楽しそうに会話している。
あいつは周りの視線にはかなり敏感な体質なので、俺が少し視線を送るだけですぐに気が付いてくれる。
「あ、おい、喜多川さんが手を振ってるぜ。お前らアレで付き合ってねぇんだよな?」
杏奈に手を振り返しながらいつも通りの質問に辟易する。
このやり取りも既に数え切れない。
「付き合ってねぇって。何度も言わせるな」
あいつが誰と付き合うかなんてアイツ自身が決めることだ。俺がどうこう言う問題じゃないが……。
杏奈が男と付き合うってな事になったら、ちょっと寂しいし嫌な気持ちになるのも事実。
ハッキリいって自意識過剰だと分かりきっているが、考えずにはいられない。
俺は心のどこかで今の環境を壊したくないと考えているのだ。
あの中の誰かと付き合えば、他の誰かとの関係性がきっと変わる。
3人が3人とも俺と仲良くしてくれる今の環境が気に入っているから、このバランスに甘えてしまっている。
相手の幸せのために喜ぶ事ができない自分の浅ましさに嫌気がさすけど、俺にとってあいつら3人は、同じくらい大切な……。
いや、綺麗な言い方はよくない。手放したくない相手なんだ。
「いやぁ……カワイイよな喜多川さんに甘蔵さんに桜岡さん。あれで全員彼氏いないって本当かよ。誰に告白されても全部断ってるって話だぜ」
実は杏奈って、アレでかなり排他的な性格をしているからな。
いや、杏奈だけじゃない。ふわりも鈴音も、程度の違いはあれど人見知りで他人を寄せ付けない排他的な性格をしているのだ。
日常で支障をきたさないのは仮面をかぶっているからで、俺の家に集まるのもそいつを脱ぎ捨てられる空間が自宅とあそこしかないからだ。
「おーい、ホームルーム始めるぞー。席に着け」
教員の声で我に返り、席に着いた。既に進路が決まっているだけあって授業は退屈そのものだ。
しかし卒業まで成績を落とすのは本意ではないので授業は真面目に受けるのが俺の心情である。
『おっぱいはちゃんとご褒美タイムじゃないとダメだからね♡』
杏奈のおっぱい、すっげぇ柔らかかった……。あれが女の子の感触なのか。
吸い付くような感触と、手の平にズッシリと乗っかる重量感。
そして女の子特有の甘い匂い。
どれもこれも本能を刺激するパワフルな体験であった。思い出したら体が熱くなってきたぞ。
またあんなことできるとか考えるだけで興奮が募ってくる。
「土峰ッ、おい土峰ッ! 土峰零士ッ!」
「え?」
「授業中に何をニヤついているんだ?」
「あ、いやその……顔に出てました?」
教室中が爆笑に包まれ、大恥をかいてしまった。
杏奈の方を見ると懸命に笑いを堪えて口元を押さえている。
あれは絶対後でからかわれる奴だ。
◇◇◇
「授業中に何を思いだしてたの~?」
「きっと昨日のことだよねぇ♪ 特に最後の方のあれとかぁ」
「れーじ君ってば不潔ですね。顔がスケベ丸出しでしたよ」
「不可抗力だ……」
放課後の帰り支度をしながら、俺は幼馴染み達の総攻撃を受けていた。
俺の妄想ニヤニヤ事件で教室は爆笑に包まれ、杏奈は笑いを堪えすぎて引き付けを起こしていた。
ふわりも俺の二つ隣の席なので顔はよく見えていたようで、口元を押さえながら体を震わせていたのだ。
前の席にいた鈴音に至っては教師に吊し上げを喰らっていた最中に大爆笑していたからな。
「それじゃ、今日は俺バイトだから」
「うん。また明日ね」
「ばいば~い」
「バイト頑張ってくださいねー」
幼馴染みの集まりは頻度は高いけど毎日というわけではない。
特に学園生活も残り少なくなり、段々と時間が空くようになると家の中で無為に過ごすのももったいない。
充実した学生生活を贈るためには、ある程度資金が必要なる。
というわけで、週に二~四回ほどはアルバイトに入っているのだ。
扶養制限があるので派手に稼ぐことはできないが、謙虚に生活していれば月に数万円の収入で十分に充実できる。
「あ、れー君」
「どうした?」
「明後日はバイトないよね? また皆で行って良い?」
「ああ、いいよ」
「れーじくん、何か作っていくけど、リクエストあるぅ?」
「そうだな。イチゴタルト頼めるか。クリームチーズの奴」
「また難易度の高いリクエストだね~。いいよ~。頑張って作るね~」
「ああ、ふわりのタルトは絶品だからな。頼んだぜ」
3人に別れを告げ、俺はアルバイト先に急いで向かうのだった。
そして2日後の夕方、再び王様ゲームをやることになったのである。
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