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11回目 その1

 放課後の教室。最後のチャイムが鳴り響くと同時に、俺たちは自然と顔を見合わせた。

 杏奈がぱっと立ち上がり、両手を腰に当ててニヤッと笑う。


「れー君、今日も行くんだよねっ?」


「もちろんだよ~。ね~、れーじくーん♪」


 ふわりが机の上に頬を乗せたまま、俺に向かって微笑みかける。柔らかな笑顔に、胸がじんわり温かくなる。


「はい、私も異論ありません。今日も楽しみにしていましたから」


 鈴音はきっちりとした口調で言いながら、でも耳の先が少し赤い。


 俺は思わず苦笑いを浮かべる。

「いいぞ……っていうか、なんだろうな。わざわざ確認しなくてもいつも来てるだろうが」


 それをあえてするって事は、今日も当然【例のアレ】をやるつもりなんだろう。


 なんだかんだで楽しみにしてしまっている俺なのである。


 ◇◇◇


 いつもの集まり。いつもの時間。だけど今は以前とは何かが違う。


 誰も漫画を読まないし、誰もスマホを弄らない。


 気がつけば床で円で座って、いつものように割り箸を手に持っている。


 今日も始まる【絶対俺だけ王様ゲーム】


 既に11回目を迎えている。


「今日は特別ルールを採用しまーす」


 今日も、だろうが。と心の中で思うだけで口には出さない。何しろいつもの事だからな。


「んで、今日はどんなルールなんだ?」


「えへへ、今日はね、正室になる順番を決めるんだよ」


「ん? いつもと何が違うんだ?」


「今日正室になった人はね、王様を独り占めできるんだ」


「なる……ほど。独り占めね」


 つまり、今日は正室になった子と一対一で時間を過ごすってわけね。


 たまにはそういう日も悪くない。いや、むしろ今までずっと3人一緒で迫られていたから、かなり新鮮かもしれない。


「いくよー」

「「「王様れーじ君♡♡♡」」」


 並んで座り、それぞれが引いた割り箸を前にして、まずは誰が正室になるのか――その瞬間を待つ。


「それじゃあ……運命の時間だねっ! せーのっ」

 杏奈が勢いよく割り箸をかかげる。赤い印は――


「……わ、わたし……だ♪ ふふ、うふふふふふふふふふふふふふふふふふふ」

 ふわりの小さな声が部屋に響く。なんか笑い方が怖いんですけど。


 その瞬間、杏奈と鈴音が同時に声を上げた。

「おお~っ!」

「おめでとうございます、ふわわん」


 ふわりは手にした割り箸をぎゅっと握りしめ、頬を染めながら俺に身を寄せてきた。

「れーじ君……今日は、わたしが正室だよ。ちゃんと、つとめるからね♪」


 俺の腕にからみつく彼女の体温が、じわりと伝わってくる。

 ああ……これは、ギャグどころじゃない。しっとりとした、甘い夜になりそうだ。


 杏奈も鈴音も、口元を緩めながら見守ってくれている。

「ふわりちゃん、がんばってっ」

「今日は全力で応援させていただきます」


 部屋の空気が、ほんわかと優しいもので満たされていく。

 俺はふわりの肩を抱き寄せながら、思わず心の中でつぶやいた。


 今日は、何かが違う予感がした。


「れーじ君……今日は、わたしが正室だから……いっぱい甘えてほしいな♪」


「お、おう……」

 どうにも照れくさいが、その声の柔らかさに抗えない。


 杏奈がにこにこしながら身を乗り出す。

「ふわりちゃん、めいっぱい頑張ってねっ! わたしたちは今日は見守り役だしっ」


「はい、ふわわん。遠慮なく、れー君を独り占めしてください」

 鈴音はしっかりとした声で告げるけど、その表情はどこかあたたかい。

 ……こいつら、完全に応援モードだな。


 ふわりは俺の肩にもたれかかりながら、ぽつりと呟く。

「……こうして隣にいるだけで、胸がどきどきして苦しくなるんだよね」


 その言葉に俺は思わず心臓が跳ねた。

「俺も……だよ」


 ふわりは小さく笑って、顔を上げる。

 潤んだ瞳で俺を見つめながら、ほんのり唇を尖らせ――


「れーじくん……ちゅって、してもいい?」


 その声に、部屋の空気がしんと静まり返る。

 杏奈も鈴音も、微笑みながら俺たちを見守っていた。


「……いいぞ」


 俺が応えると、ふわりは嬉しそうに「えへへ♡」と笑い、そっと唇を重ねてきた。

 柔らかく、あたたかく、長い長い口づけ。


「ん……ちゅ……れーじくん、大好きだよ……」


 心の奥まで響いてくるその一言に、俺は言葉を失った。


 既に何度もしている行為なのに、今日は何かが違う。

 俺の中の何かがいつも以上に満たされるような感覚があった。


 ◇◇◇


「ふわりちゃん、なんか幸せそうだねっ」

 杏奈が目を細めて頷く。


「ええ、とても素敵でした……。ふわわんは、れー君の前だと本当に柔らかい顔をしますね」

 鈴音も小さく微笑む。


 ふわりは照れ隠しのように俺の胸に顔を埋めて、か細い声で囁いた。

「……ふたりに見られてるの、ちょっと恥ずかしいな……でもね、それ以上に幸せなんだ♪」


 その声が、俺の心をやわらかく包んでいった。


 いつものようにベッドに座った俺に、地面で膝立ちするふわりがしな垂れかかってくる。


 ふわりは俺の胸に身を預けながら、吐息を絡ませて囁く。

「……れーじくん、……ね、いっぱい、してあげたいの♡」


 その声音は耳元をくすぐるようで、背筋がぞわりと震えた。


「し、してあげたいって……何を?」

「ふふ……ぜんぶ♪」


 そう言うとふわりは、俺の膝の上にちょこんと座り、両手で頬を包んでくる。距離はゼロ。見上げる大きな瞳に吸い込まれそうだ。


 身長差は30センチもあるのに、座高の差はほとんどない。

 ふたりの長い足がミッチリと密着して体温を伝えてくる。


 スカート越しに伝わってくる中心部の熱量。それは俺の中に流れるものを1箇所に集めてしまう。





「れーじ君……今日だけは、わたしに身を委ねて?」

「……ああ」


 言い終わるより早く、唇が重なった。

 最初は触れるだけ。けれどすぐに、ふわりは角度を変えて深く食い込み、甘い吐息を漏らしながら舌先を絡めてきた。


「ん……ちゅ……れーじ君……♡」

「ふわり……」


 頬が熱い。心臓が暴れる。

 だけど、逃げる気はまったくなかった。


「ふふっ……まだまだだよ?」

 唇を離したふわりは、俺の首筋に顔を埋め、柔らかく噛みつくように触れてくる。


 大きな体は俺を覆い隠し、タプンと脂肪の詰まった膨らみを押し付けてきた。


「はぁむっ、かぷぅうう♡」

「……っ!」

 甘い痛みと、くすぐったさに、思わず息が漏れた。


「……れーじくんの反応、かわいい♡」

 そう囁きながら、ふわりは俺の胸元に手を滑らせる。シャツの上からだけど、その優しい掌の動きに、全身の感覚が研ぎ澄まされていく。


 杏奈と鈴音は――黙って見守っていた。

 杏奈は頬を赤く染めながらも、きらきらと瞳を輝かせ、

「おお~ふわりちゃん、だいたーん♡」



 鈴音は真剣な顔で、でも少し潤んだ瞳で呟いた。

「……ふわわん、すごく綺麗です。レージ君……とても幸せそう」



「れーじくん、もう一回♡ んちゅ♡」


 長い睫毛が触れる距離で、深い口づけをされた。


「……れーじくん」

「ん?」

「わたしね、ずっと思ってたの。れーじくんは頑張り屋さんだから、誰かがちゃんと休ませてあげなきゃって……」


 そう言ってふわりは俺の頬を撫で、優しい眼差しを向ける。

 大きな体で包み込まれ、守られるような感覚に、胸が熱くなる。


「だから今日は、なにもしなくていいよ♡ わたしが全部してあげるから」

「……ふわりちゃん……」


 その言葉に、胸の奥で何かがほどける音がした。

 ふわりの優しさに甘えたくて、俺はそっと目を閉じた。


「ん……♡」


 再び唇が触れる。

 長い長いキス。

 深く、柔らかく、すべてを受け止めるように。


 気づけば、彼女の心臓の音が聞こえる距離で抱きしめられていた。

 そのリズムに同調するように、俺の心臓も早鐘を打つ。


「れーじ君、好きだよ♡」

 耳元で囁かれ、背筋が震えた。

「……俺も……好きだ」

「えへへ……♡ じゃあ、もう一回だけ……ね?」


「んちゅ……♡ ん……っ……♡」


 永遠に終わらないかと思うほどの、濃密な口づけ。

 ふわりの体温に包まれながら、俺はただされるがままに甘やかされ続けた。



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