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10回目 その3

「「「王様れーじ君♡♡♡」」」


 ……って結局、掛け声は俺バージョン固定なんだよな。

 普通ルールって言ったのに。


 けど、まあ今回は割り箸の結果で――


 杏奈「正室~♡」

 ふわり「やったね~♪」

 鈴音「……ま、またレージ君じゃないのです……」


 はい、杏奈が正室。


「ふっふっふ……♡ では命令! 3番と4番が――両方で同時にれー君をくすぐりの刑♡」


「えぇぇぇぇっ!? 俺2番なんだけどっ!?」

「はぁいっ♡」

「了解なのです♪」


 ……次の瞬間、ふわりと鈴音が左右から俺に飛びかかってきて、わき腹を容赦なくくすぐってくる。


「うおっははははは! やめっ、ほんとやめてくれ! 腹筋が死ぬってぇぇぇ!」

「れーじくん、弱い弱い~♡」

「レージ君……かわいい声出すのです♪」


「こら杏奈っ! お前も止めろよ!」

「やだぁ♡ 命令したのはわたしだもん♪」

 杏奈は床に寝転がって大爆笑してやがる。


 ――くっそぉ……こんなカオス展開になるとは。


 ◇◇◇


「「「王様れーじ君♡♡♡」」」


「ッしゃオラァアア! 王様キタコレッ」


 ついに俺が王様となった。絶対俺だけ王様ゲームなのに、長きにわたり離れていた王座に、ついに戻る事ができたのだ。


 ここぞとばかりに仕返しをしてやるぞ。


「命令っ! 側室1番が2番に……変顔をして写メ送れ!」


「え、わたし1番~♪」

「そして……わたしが2番なのです」


「え~、変顔か~。女の子にそういう命令しちゃいけないんだぞー」

「ごちゃごちゃ言ってねぇで早くやりタマエ」


「う~、後で絶対仕返ししてやるー」


 ――杏奈が本気の変顔で鈴音に顔を近づけ、そのままパシャリ。


「ぶほっ! 杏奈ちゃん……っ! なんて顔を……!」

「えへへ~♪ 個人SHINEで送っとくね♡」

「ちょっ……送らないでぇぇぇ!」


 部屋中が笑い声でいっぱいになる。


「じゃあ次いくよー」


 若干涙目になりながらかけ声をコールする杏奈。これはしばらく笑いのネタになりそうだ。


 しかしあまり笑いすぎると杏奈が本気で傷つくのでほどほど楽しんでから削除するとしよう。


「「「王様れーじ君♡♡♡」」」


「次は~、わたし~♪」


 次はふわりが王様。


「命令っ♡ 正室も側室2人も~……全員でれーじくんに“おでこコツン♡”」


「え、待て。全部って俺以外全員じゃねえか!」

「そだよ~♡ ほら、れーじくん座って座って~♪」


 ……結果。

 三方向から同時に「コツン♡」とおでこを合わせられ、

 俺の頭は軽くボール状態。


「いっでえええええっ!」

「れー君、赤くなってる~♡」

「ふふふ♪ 愛の証拠だよぉ~♡」

「レージ君……ご褒美なのです♡」


「ご褒美じゃねえ! 痛ぇんだよ!」


 また玩具にされちまった。今度は負けねぇぞ。


「「「王様れーじ君♡♡♡」」」


 ――お約束の掛け声が部屋に響く。

 さっきまではギャグで済んでたけど……今回の空気はなにかがおかしい。


 杏奈「じゃーんっ、わたし王様♡」

 ふわり「ふふふ♪ わたしも王様~♡」

 鈴音「……れ、レージ君。鈴音も王様なのです♡」


 ……ん?


「ちょっと待て! 王様って一人だろ!?」

「えー? たまたま割り箸が三本とも“王様”だったの♡」

「そ、そんな偶然あるわけ……」

「いいじゃんいいじゃん♪ 面白そうだよぉ~♡」

「レージ君……三倍楽しい、なのです♡」


 ……嫌な予感しかしない。


「じゃあわたしの命令! れー君は、四つん這いになってリンちゃんの前を通り抜け♡」

「わたしの命令はぁ~……れーじくん、杏奈ちゃんにおんぶしてあげて~♡」

「……鈴音の命令は、れ、レージ君……ふわわんのお膝に頭を乗せる、なのです♡」


「お、おい! 三つ同時にできるかぁぁぁっ!」


 でも三人は「できるできる♡」「工夫すればいけるよ~♪」「やればできるのです♡」とノリノリである。


 仕方なく四つん這いになった俺。

 そこに杏奈が背中に飛び乗ってきて――


「わぁっ♡ れー君たくましい~♪」

「重たいですか?」


 いや、普通に重い! 軽いけど重いっ! 主に1箇所がっ!


 しかも前に進もうとすると、鈴音が真正面にしゃがみ込み、スカートひらひらさせてガード。


「……レージ君、どうするのです? 鈴音、待ってますよ♡」


 さらに横からふわりが膝を差し出してくる。

「ほらほら~♡ お膝枕しなきゃダメだよぉ♪」


 結果――


「どっふぉぅっ!」


 四つん這いのまま崩れて、杏奈ごと前につんのめり、ふわりの足に激突。

 その反動でスカートの中がチラリしそうになる鈴音が慌てて手で抑える。


「きゃっ!? み、見えちゃダメなのですっ!」

「れー君のスッケベ~♡」

「だいじょうぶぅ? ふふふ、れーじくんの顔、真っ赤~♡」


 俺の休日、完全にゲームじゃなく拷問状態だ。


「ちょ、ちょっと落ち着け! 誰か命令をキャンセルしてくれ!」

「やだ♡ れー君可愛いんだもん♪」

「楽しいのにぃ~♡」

「……鈴音も……もうちょっと見たいのです♡」


「お前らぁぁぁぁぁっ!」


 結局、三方向からスキンシップされながら、俺はただただ翻弄されるしかなかった。


 ◇◇◇


「「「王様れーじ君♡♡♡」」」


 再び響く掛け声。

 ……なぜか俺じゃなくて三人がテンション最高潮なのはどういうことなんだ。


 杏奈「じゃ、今度はわたしの命令! れー君、右手は杏奈が独占すること♡」

 ふわり「ふわりはぁ~左手をもらうの♡ ギュッてするんだよ~♪」

 鈴音「……れ、レージ君。鈴音の命令は……お膝に頭を乗せる、なのです♡」


「ちょ、ちょっと待て! それ三つ同時に成立しちゃうやつじゃん!」


「「「それが面白いの♡」」」


 はい、そうですね。


 そんな可愛くて飛びきりの無邪気な笑顔で言われたらなんも言えんじゃないのよ。


「そんじゃ始めよっか」


 右手を引っ張る杏奈。

「れー君、こっち♡ あったかい手、ぎゅってしてたいの♪」


 左手を抱えるふわり。

「だめだよぉ~♡ れーじくんはふわりのだもん♪」


 そして、下から膝を差し出す鈴音。

「レージ君、こちらへ……はい、どうぞ♡」


「いや待て、これ普通にバランス崩れるって!」


 案の定、両腕を引っ張られたまま俺は後ろに倒れ――頭は鈴音の膝にストン。


「ふ、ふふっ……れ、レージ君の重さが、ダイレクトに……♡」

「ずるい! リンちゃんだけ特等席じゃん!」

「じゃあ、わたしも~♡」


 そのまま両側から抱き寄せられる。

 俺は膝枕されながら、右に杏奈、左にふわり、まさにサンドイッチ状態。


「お、重いっ! ちょ、ちょっと待ってくれ、ほんとに潰れる!」


「れー君苦しいの? でも離してあげなーい♡」

「ふふふ♪ ぴったりくっついてた方が幸せでしょ~♡」

「……レージ君……鈴音の太もも、気持ちいいですか?♡」


「お、お前らなぁ……!」


 抵抗虚しく、頬を杏奈にむにっと押され、ふわりにぎゅーっと抱きつかれ、鈴音はもじもじしながらも膝をちょっと揺らしてくる。


「ねぇふわりちゃん、こっち引っ張らないでよ!」

「だって~♡ 杏奈ちゃんばっかりズルいんだもん♪」

「……ふ、ふわわん……動いたら、レージ君の頭が……!」


 揺れた拍子に、俺の顔が鈴音のスカートぎりぎりに近づき――


「やっ……み、見ちゃだめなのですっ!」

「おーっと危ない! これは一発レッドカード!」

「れーじくん、鼻血出てない? だいじょぶぅ?」


 ……完全に俺の尊厳は地に落ちた。


 結局、三人の奪い合いは収拾がつかず、最後は――


「れー君の右手、交代制ね♡」

「じゃあ左手も交代制~♡」

「……膝枕は……鈴音、譲りません♡」


「おい、そこは譲らないのかよ!」


「「「だってレージ君可愛いんだもん♡♡♡」」」


 こうして第10回は、俺が両腕を奪われ、膝枕に囚われる“完全拘束エンド”で幕を閉じた。


 記念とはなんだったのか……。


~ゲーム10回目、終了~

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