5回目 その1
「おはようみんな」
「お、おはよう」
「おはよー。朝ご飯できてるよー」
「いい顔で寝てましたね」
「う、うん。なんだか良いような良くないような、不思議な夢を見ていた気がする」
主に生殺し的な意味で。何故だか下半身がズキズキして今にも爆発しそうだ。
昨日から青春大暴走がブレーキブレイク寸前なのだ。
これ以上何かをガマンすると体に良くない。しかし女の子と常に一緒の状況ではこれを解消する手段がないのだ。
あとでこっそり処理するか? いや、なんとなくそれは悪手な気がする。
「お待たせー」
俺の思考はふわりの朝ご飯の香りで打ち消される。
出汁の利いた味噌汁の食欲をそそる匂いと、ほかほか御飯の湯気が邪悪な思考を浄化してくれた。
「良い匂い~。ふわりちゃんのごっはん~♪」
「いっぱい食べてねぇ。でも食べ過ぎると歩くの大変になるからね」
ほかほかの白御飯と味噌汁。たくあんと焼き魚。納豆、海苔、そしてふわり特性の出汁巻き卵。
普段の我が家ではこうはいかない。
「んんっ、美味いっ。この卵焼きが本当に最高だな」
「えへへ~、今日は凄くイイ出来だったんだよ」
「うーん、ふわりは本当に料理上手だな。嫁に欲しいくらいだ……あっ」
「れー君がふわりちゃんを口説いてるーっ」
「い、一般論としてだな」
「にへへへっ。いいよー。れーじくんが年収3000万稼いでくれる旦那さんになるなら」
「ハードルがべらぼうに高ぇ!」
なんて冗談を交えながら楽しく過ごす朝の模様。
今日も楽しくなりそうだ。
◇◇◇
◇◇◇
◇◇◇
ザワザワ……
――なんだあの美女軍団
――めちゃくちゃカワイイ
――背高っ。モデルさんかな?
――つか胸でけぇ~
――あの子背小っちゃい。お人形さんみたい。
――対比がヤベェな
――あの男なんだよ。両手に花か?
――兄弟とかだろ
――釣り合ってね~
――おい、声かけようぜ
――男邪魔だな
周りの喧騒に紛れてヒソヒソと聞こえてくる周りの声。
羨望と嫉妬にまみれた視線と呟きが耳に届いていた。
優越感? いいえ、戦々恐々としております。
「「「王様れーじ君♪」」」
テンション高く割り箸を引く女の子達。
今日は外にお出かけするとの事で、正室決めはアプリで行なう事にしていた筈だが、外でも臆することなく割り箸を使っていた。
三人の中で何かが変わったのか。
俺達の住む町で1番賑わっている商店街へとやってきたので、人の目は多い。
しかし彼女達はまったく人目を憚ることなく割り箸でゲーム続行を選択した。
「じゃ、じゃあ最初の正室は鈴音ですねー」
喜んでいるのと同時に緊張の面持ちに変化する。
そう、喜んでいる。
はっきりと彼女が喜んでいるのが分かる。
なぜか、分かる。彼女の気持ちが分かる。
なんというか、こう……そうだな。
例えて言うなら、【喜ぶ】って種類の音みたいなものが有ったとして、そいつが鈴音から心臓に響いてくる……みたいな。
そっと差し出した俺の手を怖ず怖ずと握り絞め、嬉しそうに身を寄せてきた。
今日の鈴音はオレンジのカーディガンに白のキャミソール。
プリーツのロングスカートを合わせている。
いつもの元気印な溌剌としたイメージとは少し変わって大人っぽいコーディネートをしていた。
「うへっ、うえへへへへっ……れーじ君。お外ではエッチな事禁止ですからね」
「まるで帰ってからならOKと言わんばかりだね」
「そ、そうは言ってませんけど」
「ダメなの?」
「ちょ、ちょっとだけなら。ほっぺにチューくらいなら許してあげます……」
柔らかい手で包む込むように繋いでくる鈴音に身を寄せ、熱い息遣いが間近に感じるくらい近づいた。
「昨日はもっと凄いことさせてくれたじゃん」
「そ、それは、勢いというか……テンションというか。とにかく、心の準備をさせてほしいです」
「こーらっ、ちゃんと側室もいるんだからこっちを無視しないでよー」
「分かってるって。交代のタイマーは俺がやればいいか?」
「余った側室がやるよー。まずは私がやるねー」
「じゃあふわり頼む」
「任されたー」
「はい、じゃあ両手に花~スタート~♪」
そんな明るい声ではしゃぐ杏奈の合図と共に、王様ゲームデートが始まった。
◇◇◇
「えーと~、ちょっと提案でーす」
最初の5分が経過し、正室の鈴音は引き続き手を繋ぎ、反対側をふわりに交代した杏奈が待ったをかける。
「どうした杏奈」
「あのですねー。想像以上に一人は寂しいデス。後ろから三人がイチャイチャしているとこを眺めるのって何気に辛い。なのでルールの変更を提案します」
「堪え性のない奴だな」
まだ始まって20分も経っていないのに、もうルールの変更を提案してくる。
相変わらず超絶フリーダムな奴だ。
だけど杏奈の心が大分不安定になってきているみたいだ。
それもまた【分かる】。どういう訳か、【分かる】のだ。
そのことを察したのか、ふわりがフォローを入れてくれた。
「あ~、でも今思ったんだけどさ。確かに一人で後ろをついて歩くのってなんか寂しいよね。仲間はずれみたいで。側室同士で手を繋いで歩くってのはどうかなぁ」
「なるほど。そいつは名案だな」
「えへへ~、れーじくん残念。ハーレムタイムは終了だよー」
「残念ではあるが仲間はずれを作るのはよくないからな。何も歩くだけが楽しみじゃないし」
今日の本懐は楽しいお買い物デートだ。とにかくこの四人で楽しい時間を過ごすことが最大の目的であり、俺の使命だろう。
「じゃあ交代の儀式だ。鈴音、ほっぺにチューの時間だぞ」
「はうっ……み、みんなが見てますよ」
「いいじゃないか。見せつけてやろうぜ」
「うう……ええいっ、女は度胸。だったらこうですよっ」
「んむっ⁉」
ザワッ……
周りの注目が集まる。大胆な行動に出た鈴音にちょっとだけ面食らった。
「んっ、んんっ」
「んちゅ、んちゅぷるりゅるるっ……ふはぁっ♡」
「わっほう♡ リンちゃん大胆♪」
「いいなぁ。私達も次はキスは唇にしよっか」
「さんせー☆」
突然唇にキスをされて面食らったが、一瞬だけひるんですぐに切り替える。
鈴音の腰を抱きしめ、吸い付いてくる唇を離さないように頭を抱え込んだ。
「はひぃ、はひぃ……心臓が破裂するかと思いました」
「あんま無理しなくても」
「勢いではありますけど無理ではないです……ふぅふぅ」
「俺は嬉しいからいいけどさ」
「鈴音もちゃんと嬉しいですから問題、ないです」
「はーい、じゃあ次の正室決めましょーっ」
「じゃ、じゃあいきますよ」
「王様れーじ君♪ 次はわたしーっ♪」
「じゃあ側室同士で手を繋いであるこっか」
「そ、そうですね」
そうして正室と王様、側室2人で手を繋ぎながら買い物デートを続行することになった。




