表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/134

幕間

 カーテンの隙間から、冬の朝日がうっすら差し込んでいた。


 まだ部屋の空気は冷たいのに、布団の中だけはやたらとぬくもりが濃い。俺の右と左、背中側、全部が柔らかい。――いや正確には、三人に挟まれてる。


 杏奈は右腕にぴったり絡みついて寝ていて、頬がくすぐったいくらい近い。寝顔まで「勝ち誇ってる正室」みたいなのはズルい。

 ふわりは背中に体重をかけて、呼吸のリズムがゆっくり伝わってくる。時々「すぅ~」って間延びした寝息を立てて、こっちまで眠くなる。

 鈴音は左手をしっかり握ったまま寝ていて、眉間にちょっとシワ寄せてるのに、口元だけはゆるんでた。夢の中でも几帳面なんだろうな。


 案の定というか、三人にがっつり密着されてて身動きが取れない。

 

 まるで三方向から布団ごと包囲されてる感じだ。


 ……っていうか、三人とも布団の位置ほぼゼロ距離。これ、どうやって朝起きるんだ?


 少し身じろぎした瞬間、杏奈がむにゃっと目を開けた。


「……れー君、おはよ♡ ……へへ、やっぱ夢じゃなかった」


 そのまま腕にぎゅーっと力をこめてきて、俺は身動きできなくなる。


 今度は鈴音が目を開ける。

「……おはようございます、レージ君。……えっと、その……手を握ったまま寝てしまいました」


「いや、むしろ安心して寝れたから良かった」って言ったら、耳まで赤くなった。


 最後にふわりが、背中越しに「おはよぉ~♡」って声を伸ばす。

「れーじくん、あったかい~。もうちょっと、このまま……いい?」

 背中の圧がさらに増して、完全にサンドイッチ状態。


 ……なんだこれ。朝から胸の真ん中が甘すぎる。


 窓の外では冬らしく冷たい空気が流れてるのに、この部屋の布団の中だけ別世界みたいだ。

 俺は三人の顔を順に見て、小さく笑った。

「おはよう。今日も“王宮”は万全だな」


 杏奈がくすっと笑って、ふわりが背中に頷きを二回。鈴音は小声で「はい」と答える。

 その返事が三重奏みたいに重なって、冬の朝をやわらかく満たしていった。


 寝ぼけ頭で「幸せだなぁ」なんて思ってたら――ふいに杏奈がむくりと顔を上げる。


「……あれ? スンスン……れー君、なんか匂うよ?」

 すん、と鼻を鳴らして、俺の胸元あたりを覗き込んでくる。


 ふわりも後ろからぴとっと顔を寄せてきて、長い髪が頬に触れる。

「んん~……くんくん、ほんとだぁ~♡ なんか、あま~い匂いする~」


 鈴音も控えめに布団をめくる。ふわっと空気が入れ替わって、香りが一気に濃くなった。


「す~、むむ、……! これは……なるほど、そういうことですか」


 頬を赤くしつつ、でも逃さない視線でこちらを見る。


 なんだ? なにをそんなに……と、そこまで思考して自分の異変に気がつき、一瞬で完全に目が覚めた。


 状況を理解して、心臓が爆発しそうになる。


【悲報】俺の青春活火山、噴火


「ちょ、待て待て! 違うんだこれは! いや、違わないんだけどっ」


 三人の表情が一斉ににやっと変わった。


「ふふっ♡ れー君ってば、言ってくれればいいのに~。私達、“サンタさんの追加サービス”くらいできたんだからさ♪」

 にじり寄って、耳元で囁く杏奈。声が甘すぎて背筋がゾワゾワする。

 追加ボルケーノをかましてしまいそうになる。




「えへへ~♡ わたし達に任せてくれたら、“安心ゲージ”も、“甘やかしゲージ”もフルチャージだったのにねぇ~」

 背中をぽん、と撫でながら、あくまでのんびりした口調で刺してくるふわり。



「……レージ君。もし困ったら、“お願い”すればよかったんです。鈴音達は、常に待機していましたから」


 そして鈴音はといえば真面目に言うから余計に恥ずかしい。


 耳まで真っ赤になってるのに、俺を見上げる瞳はずるいくらいまっすぐ。


 俺が必死に言い訳しようとしても、三人は楽しそうに笑って、次々に言葉を重ねる。


「でもね、れー君。昨夜プレゼント交換したでしょ? 今朝のこれは――れー君から私達への“隠しプレゼント”ってことにしといてあげる♡」

 杏奈が勝手にまとめに入る。


「うんうん~。“特別版クリスマス”ってことで、アルバムに追加しちゃお~」

 ふわりが無邪気に笑う。やめろ。確実に黒歴史だ。


「記録……は、さすがに控えますが。心にはちゃんと、保存しておきます」

 鈴音がぽつりと付け加える。だからそれは黒歴史だって。


 三人の目は優しくて、でもちゃっかりからかっていて。俺は顔から火が出そうになりながら、ただ小さく呟くしかなかった。

「……勘弁してくれ」


 ◇◇◇


 俺は深呼吸してから、机の引き出しに忍ばせておいた小さな箱を三つ取り出した。

 夜の空気に、ほんの少しだけ緊張が混じる。


 ちなみにちゃんと着替えた後だからな。


「……実は、俺からも渡したいものがある」


 三人が同時にこちらを振り向いた。驚きの色が入り混じる表情。

 その顔を見た瞬間、胸が熱くなった。



 三つ並べた小箱を、俺は両手で差し出した。


「今はガラス玉だけど、ちゃんと宝石にして渡せるように頑張る。その時までの約束として、受け取ってほしい」


 杏奈・ふわり・鈴音――三人の手が同時に伸びて、それぞれ自分の箱を握る。

「せーのっ♡」

 杏奈の掛け声に合わせ、三人のリボンが一斉にほどかれた。蓋が開く音が重なり……そして。


「――――っ♡♡♡」

 三方向から、空気を震わせるような歓声。


 杏奈は、水色のガラス玉を胸の前に掲げ、瞳を限界まで輝かせていた。

「れー君……っ♡ 水色……私の色……! こんなの、もう、ずるい……っ♡♡ 嬉しすぎて、どうすればいいの!?」

 涙が一粒こぼれた瞬間、彼女はもう俺の胸に飛び込んできていた。


 ふわりは、桃色の光を両手でそっと包み込んで、そのまま頬にすり寄せる。

「わぁぁ……♡ れーじくん……これ、わたしの色だよぉ……っ♡ 胸がぽかぽかして……あったかすぎて、もう溶けちゃう……♡♡」

 声が震えたかと思えば、次の瞬間、大きな腕で俺をふわっと包み込む。体ごと、優しく、でも確かに捕まえられる感覚。


 鈴音は、黄色のペンダントを見つめながら、両手をぎゅっと握りしめた。

「……レージ君……っ♡ これを……鈴音に……ありがとうございます……っ♡♡ 嬉しすぎて……胸が苦しいくらいです……!」

 耳まで真っ赤にして、それでも小さな手を強く俺の指に絡めてくる。


 三人の胸元でそれぞれの色が同時に灯る。水色、桃色、黄色――夜のイルミネーションと呼応するみたいに輝き、まるで世界全体がその瞬間を祝福しているみたいだった。


 同時に抱きつかれ、前後左右から甘さに埋もれる。

 視界いっぱいに、三人の涙と笑顔と光が混ざり合って、胸の奥が一気に熱くなる。


「ありがと……♡ ありがと、ありがと……♡」杏奈が何度も繰り返し、俺の胸に顔を埋める。

「一生の宝物だよぉ……♡ ずっと首にかけてたい……♡」ふわりが俺の背中を何度もぽんぽんと撫でてくる。

「鈴音も……絶対に失くしません……一生、大事にします……♡♡」鈴音は俺の指を離さず、小さく震えながらも、強い目でそう言った。


 三つのペンダントが触れ合って、ちりん……と小さな音を立てる。

 涙と笑顔と「大好き」が一斉に重なり合う瞬間――胸の真ん中が、今までで一番甘く満ちた。




 ――あの瞬間、俺は確信した。

 三人にとっての“最高のプレゼント”は、この関係そのものなんだ。

 そして俺にとっても、間違いなくそうだ。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【ファンタジーです】(全年齢向け)
地味スキル「ためて・放つ」が最強すぎた!~出来損ないはいらん!と追い出したくせに英雄に駆け上がってから戻れと言われても手遅れです~
★リンクはこちら★


追放された“改造師”、人間社会を再定義する ―《再定義者(リデファイア)》の軌跡―
★リンクはこちら★
神のバグで棄てられた俺、異世界の裏で文明チート国家を築く (11月1日連載開始)

★リンクはこちら★
【絶対俺だけ王様ゲーム】幼馴染み美少女達と男俺1人で始まった王様ゲームがナニかおかしい。ドンドンNGがなくなっていく彼女達とひたすら楽しい事する話(意味深)

★リンクはこちら★
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ