2回目 その5
「ぜぇ~、ぜぇ~、ぜぇ~……。り、鈴音、今のは……自分から」
「えへへへ、何のことですか~? 触れたかられーじ君の反則負けですよ。罰ゲームを執行しまーす♪」
「ぐ、ぬぬぅ……は、反論する体力が、残ってない。とりあえずちょっと休憩……」
明らかに鈴音は自分から唇を近づけてきた。
ほんの一瞬だけだったが、柔らかい唇の感触を確かに感じた。
「はぁ、はぁ、はぁ……ま、マジで腕がプルプルする」
普通にやるだけなら余裕でできるが、如何せん条件が厳しすぎた。
「大丈夫、れー君?」
「はぁ、はぁ、え?」
仰向けに倒れ込んで大の字に寝転がっていると、頭上から杏奈の声がする。
反射的に上を向こうとしたら両手で視界を塞がれてしまった。
「うわ、おい何するんだ」
「こらぁ、上を向いたらダメです~。パンツ見えちゃうでしょ」
「さっき見たから同じこと、イテテッ、爪を立てるなってっ。分かったから。見ないからっ」
「んもう。ホントにエッチなんだから」
「誰のせいだ誰の」
「ところで、ファーストキスの味はどうだった?」
「どうだったも何も、一瞬過ぎてよく分からなかったよ」
「へ~。そっか。鈴音ちゃんはどうだった?」
「そうですねぇ。正直鈴音も一瞬だったからよく分かりませんでした。なのでノーカンですかねぇ」
本当はあの感触を覚えている。確かに一瞬だったが、柔らかくてフワフワしてて、女の子との感触は感動的だった。
でもここでそれをハッキリ言うのはちょっと怖いのでやめておこう。
「ん~。それじゃ、罰ゲームはれー君が動かなくて済むやつにしよっか。お題箱はまた今度だね」
そういえばお題箱使わなかったな。
時間的にもそろそろお開きにしないといけないし、またやることは確定しているようだ。
◇◇◇
「あ、あの~、杏奈さん?」
「ん~? なぁにれー君」
あろうことか俺は再び目隠しをされ、更に勉強机の回転椅子のパイプに手を後ろに回した状態で縛り付けられていた。
「なぜ僕は再び目隠しをされて、更には椅子に拘束されているのでしょうか?」
「え~、だって罰ゲームだもん。屈辱的な格好じゃないと意味ないでしょ?」
それにしたってマジで動けなくする必要あるんだろうか?
目隠しをされる直前に杏奈が裸足になっているのが一瞬見えた。
これで何で目隠しされているのかは確定してしまい、柔軟剤と一緒に香ってきた別のにおいの正体にも気が付いてしまったのである。
まあ、あえてなんの”におい”かは言うまい。別に臭いわけでもないし。
ちなみに手首を縛っているのはふわりのニーソックスと思われる。
あいつも裸足になっていた。
「これって王様ゲームだよね。絶対俺だけ王様ゲームだよね? 趣旨がズレてない?」
「そんなことないよー。王様だってちゃんと政治をしないとクーデター起こされるでしょ?」
なんて理不尽な国民だろうか。
これから何をされるのか予想がつかないだけにちょっとドキドキしてしまう。
俺は多分Mッ気はないと思うので、虐められて興奮する趣味はない……はずだ。
しかし相手は三人だ。数に押し切られると戦力としては不十分である。
しかも俺は拘束されているし。
「ふぅ~♡」
「はぅうううんっ⁉ な、なにをするっ! びっくりするじゃないかっ」
いきなり耳に息を吹きかけられた。体の奥にゾクゾクとした感覚が駆け抜けて思わず身をよじってしまった。
「罰ゲームが決定しましたー。名付けて、『五感で感じろ! 感覚当てゲーム』!」
「カンカク当てゲーム? また肩たたきでもするのか?」
「今度はそれだけじゃないよー」
「杏奈ちゃん、準備してきましたよー」
「おかえりー」
「な、なにを準備してきたんだ? 台所に行ってたみたいだけど」
何やらうちの台所で色々と準備していたみたいだが、何をしに行ったんだろうか。
ちなみにふわりは俺の晩飯を作ってくれる事もあるので、勝手知ったる他人の家ってやつだ。
何がどこにあるかは食器の位置まで正確に把握している。
「二人とも準備はいい?」
「「はーい♪」」
それにしても実に楽しそうだ。俺の質問には答えず罰ゲームが始まってしまった。
「まずは~嗅覚から~。今から、あるものを鼻に近づけます。何を近づけているのか当ててみましょう」
「むぅ、よし、ドンとこいっ」
変なものじゃなきゃいいけど……。一体なにを。
「はい、これはなんでしょーか」
「くんくん……ん? これは、消しゴムか?」
「せいかーい。次いってみよー」
よかった。変なものじゃないみたいだ。
「ん~、次は……シャープペンシルの芯だな」
「おお、すごい。こんな小さいものなのによく分かったね」
消しゴムもシャー芯も独特のにおいがするからある意味で分かりやすい。
「いいぞ、ドンドン来い」
「じゃあ次は私から出題するよ~」
「ふわりか。何を出すのかな」
ゴソゴソ……プチン、シュル……
またぞろ何か布が擦れるような音がする。
「んっしょ……。じゃあ出題しまーす。これはなんでしょーか」
確実に今なにかを脱いだよな? 布の擦れる音に、無機質の何かを外した音。
そこから滑らせるようにして脱いだ何か。ふわりの息遣い。
「くんくん……ふわふわとした甘い香水の匂いに、ほんのりとした汗と、皮脂のような……ま、まさかこれは……」
「わかんないかなぁ? じゃあ触覚テストいってみようか」
ふわっとした甘い香りの後に、頬に触れる柔らかい感触。
鼻の奥から入り込んで、男の本能を刺激するようなゾクゾクする匂い。
そしてこの布地の感触は、レースの刺繍のような……。
「ブ、ブラジャー」
「せいかーい♪ ついでに~、はいっ」
「おぼっふっっ、なにをひゅるっ⁉ んぼっ」
何かサラサラした生地が顔全体を覆い尽くす。
「このブラジャーは何カップでしょーか」
「んももっ、ん、こ、この大きさは……」
俺の顔を覆い尽くす大きさ。並のカップ数ではないぞこれは。
「え、Hカップくらいかな?」
「ぶぶー。もっと上でーす」
「じゃあ、じぇ、Jカップとか」
「ん~、もう一声~」
「な、なにぃ? よ、よーし、思い切ってPカップだっ……。いや、流石にそこまでじゃないか」
「せーかいでーす。120㎝のPカップ♡ ちなみにウエストは60㎝だよー」
「マ、マジかよ。じゃ、じゃあアンダーとのサイズ差が60センチ近くもあるってこと……」
現実にそんなサイズがありうるのだろうか。エロゲの世界から出てきた女の子と言われても俺は信じるぞ?
「店売りじゃ売ってないから大変だよホント。外すと重力に逆らえないから形が綺麗にならないのが難点かなぁ」
確かにそれだけの大きさとなると柔らかい脂肪では重量を支えきれなくて下向いていくだろう。
「でもちゃんとバストトレーニングで支えてるんだよー。気を抜くとすぐに垂れちゃうからね~」
聞けば聞くほど下半身に変な熱量が溜まっていく気がする。
しかもさっきからずっとブラジャーを顔に押し付けられて汗と香水の混じった媚薬のような香りが肺の中に入ってくる。
「ほらほらふわわん、次に行かないとれーじ君が野獣になっちゃいますよ」
「はーい」
くっ。もう終わりか。もっと嗅いでいたかったが……。
「そんじゃ次は鈴音から出題しますね。このまま触覚の問題にしましょう」
そうして次に出題するのは鈴音となった。
…………
……
…
「これは、ゆで卵だっ」
「正解~。それじゃ次は最後の出題でーす」
触覚問題は続いていた。
氷、バナナ、ゆで卵と続いた。
一巡したあと、最後に出題をしてきたのは杏奈らしい。
だけど、そこからの行動はハッキリ言って想定外だった。
――――ドスンッ
「おぐっ⁉」
いきなり腰の上に柔らかい感触と共に体重が掛かってくる。
確実に人間の女の子が乗った感触のそれは、手を縛られて動けない俺の腰に太ももを絡みつけて完全に密着していた。
胸板には弾力のある柔らかいものが押し付けられ、思い切り密着した誰かが押し付けてきた。
「あ、杏奈? んぐっ!」
唇に何かが覆い被さってきた。柔らかくて、温かくて、奥からヌメッとしたものが溢れ出してくる。
「お、おい、んみゅ、おもふっ」
「―――――っ♡ ―――――っ♡♡」
ぐちゅぅう~、ヌロヌロッ
頭を搔き抱いて強く強く密着させ、唇を強引に割り開いてくるヌルヌルした何か。
「お、おっふっ、あ、杏奈、落ち着い、んむっ」
「これはぁ、むちゅっ、誰の、ファーストキス、で、しょう、かぁ」
「あ、杏奈っ、だろ? んおっ、落ち着けって」
「ぷはぁ……はぁ、はぁ、はぁ」
目隠しの向こう側で、杏奈はどんな顔をしているのだろうか?
なんだろうか。怒り? 苛立ち? 悲しみ? そこに混じった確かな興奮と、喜び……。
このゲームを楽しんでいる中で、俺は無意識に杏奈を傷つけたのだろうか?
「えへへへ~、正解だよー。れー君の勝ち~。でもまだ終わりじゃないよ~」
「え?」
かと思ったら突然空気が変わり、いつもの杏奈の反応に戻った。
――――ガシッ
「んえっ⁉」
と思ったら今度は別方向から頭を掴まれて、強制的に右を向かされた。
「――――ッ♡ じゅるっ――――っ!!」
「んおっ⁉ な、なんら? さっきとは違う感触、んむっ」
「次はぁ、誰の唇、れ、ひょーかぁ♡ ――――っ♡」
「ふ、ふわり……」
「せいかーい♪」
「今度はこっちですっ」
「ごぼっふっ」
勢いよく掴まれるから首が変な音を鳴らしてしまう。
今度は反対側を向かされ、直ぐに同じような、しかしまったく違う感触が覆い被さってくる。
「――――――――――――――――――――――※擬音が卑猥過ぎるので自主規制」
ヌメヌメでレロレロの舌の感触。小さな舌が蹂躙するように口内に侵入してくる。
「り、りお、ん?」
「正解でーす」
「はひぃ、はふぅ……。み、みんな……ど、どうしたんだよ」
「うふふふ~。今日のボーナスタイムでしたー。私達の、ファーストキス、あげちゃった♡」
三人の顔は見えないけれど、そこには確かな喜びがあった。
俺は嬉しいとか興奮するとか感じるよりも、なんでこんな事をしたのかが気になって戸惑っていた。
だけどすぐに意識を切り替える。
奇妙なルールの王様ゲームを始めた時から、俺はこういう事態を予想していたのかもしれない。
「それは最高のご褒美だな。だけど、流石に今日は終わりにしないか? 色んなものが限界だわ……」
「そうだねー。もうそろそろ帰らないといけない時間だから。今日はお暇しよっか」
太ももとおっぱいの感触が離れていき、興奮が沈静化して落ち着いた空気が戻ってくる。
「そうだねぇ。今日もいっぱい遊んだし、新しいルール追加してまたやろうよ~」
「あ、そうだ。今度の休みにお泊まり会しようよ。広いスペースがほしいな。ふわりちゃんの家借りられない?」
「いいよー。今週末はママが社員旅行でいないから、土日たっぷり使えるよー♪」
「それは楽しみですねー。お菓子いっぱい用意してもっていきましょー」
楽しげな会話をしながらゴソゴソと音がする。
明らかに帰り支度をしている音だ。
「お、おい、まさかこの状態の俺を放置して帰るつもりじゃないだろうなっ!」
――――バタンッ
三人の声が遠ざかっていく。
「おいっ、おーーーいっ! 杏奈さんっ、ちょっとっ! ふわりっ、りおーーんっ! え? マジで帰ったの? うっそだろっおいっ! ちょっとーーーっ!!」
ガチのマジで帰りやがった……。
必死に自力で拘束を抜け出そうとしたものの、如何せんソックスの生地というものは固結びになると中々ゆるまない。
『ただいまーっ。おーい零士~、帰ってる~?』
「げげっ! 母ちゃんが帰ってきたっ! ぬおおおおおっ、いそげぇええっ」
火事場の馬鹿力だろうか。
確実に階段を上ってくる母親の気配に焦りを覚えて必死に藻掻き動く。
――――ガチャ
「あんた何やってるの?」
「い、いや、勉強中に居眠りしたら椅子からコケちゃって」
「バカね~。御飯今から作るからお風呂入っちゃいなさい」
「は、はーい」
扉を閉めて階段を降りていく母親の気配に安堵の溜め息が漏れる。
お~危ねぇ危ねぇ……生きた心地がしなかったぜ。
俺の決死の足掻きにより、『独りSM野郎』の汚名を着せられるという黒歴史はギリギリで回避することができたのだった。
~ゲーム2回目 終了~
※ヒント※ 放置して帰った3人に悪意はありません。ファーストキスが嬉し過ぎてテンションが上がっただけ。
※後書き※
ふぅ~、やり切ったぜ。
色々と限界突破しそうになる表現をギリギリで抑え込んだ(←?)2日目でした。
さあ、これで終わりじゃございません。
3回目のゲームは女の子達のリミッターが更に外れていくかもしれません。
もっと過激に、もっと魅力的に。
更なる王様ゲームにご期待ください。
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