表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
乙女ゲームの世界

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

96/257

次の仕事と暗示

 それから、数週間が経過した。

 その間、ヴェルディーゼは二件ほどの仕事をこなしたが、ユリは同行させてもらえていない。

 銃が存在する世界だと聞かされて、重度のトラウマのあるユリも納得してヴェルディーゼのことを見送っていたわけだが、それでも不満はある。


「うぐぐぐぐ……寂しいし、クーレちゃんのところから帰ってきた時に疎外感があって嫌って話したのにぃ……」

「選べないんだから仕方ないでしょ。銃が視界に入るだけでダメなんだから、どうしようもないよ」

「でも、でもぉ! どうせ今回も、銃が存在するからダメなんでしょう! ふんっ」

「寂しかったからって、そんな風に決め付けない。今度は行けるから」

「……え、本当ですか!?」


 ヴェルディーゼの言葉にユリがぱっと目を輝かせた。

 期待に満ちた瞳に苦笑いしつつ、ヴェルディーゼが頷いて書類の束から紙を一枚抜き出してユリに差し出した。

 ユリがそれを受け取り、不思議そうに首を傾げながら書類に視線を落とす。


「えーっと……仮名称、乙女ゲームの世界……? えっこれまさか世界の名前ですか!? 仮とはいえとても世界の名前には見えないんですけど!」

「名前がある世界もあれば、名前が無い世界もある。けど、名前の無い世界は管理しづらいから……便宜上ね。初めて世界を作るからって、地球の並列世界の一つにあったゲームを参考に創世神が作り上げたらしいよ。参考というか……ほぼそのままだけど」

「……は、はぁあ……それで乙女ゲームの世界ですか……そりゃ乙女ゲームまんまならそうなりますよね……はあ……え、行くんですか? 恋愛に巻き込まれたりしません? 主様、顔いいし……」

「ユリも大概だと思うけど……とにかく行くよ、仕事だから世界の崩壊は止めないと」


 仕事、とユリが鸚鵡返しに呟いた。

 そして、じぃっとヴェルディーゼの顔を見つめ、苦虫を噛み潰したような顔をする。


「……変装……しませんか……?」

「どうして? 嫌だよ、窮屈だし」

「ぜ、ぜ、絶対狙われますっ! 私の恋人なのに! ヒロインもとい主人公が主様ルートに入ったらどうするんですか!!」

「大丈夫だよ、告白されても断るから」

「いやぁああっ、告白される前提ぃ! 嫌だ嫌だ嫌だぁ……私の主様が……」

「……とにかく行くから。ユリも、告白されてもうっかり頷いたりしないでね」

「主様以外の男性を異性……というか、そういう対象として見ることはないです。もはや興味はないので」


 すん、と酷く落ち着いた顔でユリが言い切った。

 本当に一切の興味のなさそうな顔にヴェルディーゼがそれでいいのかと微妙な顔になりつつ、ユリの顔を覗き込む。

 はにかみながら首を傾げるユリは、確かにヴェルディーゼ以外の男性に興味は無さそうだが。


「ユリの言う〝ヒロインもとい主人公〟に告白されたら?」

「……ッ、靡きかねないことは否定できない……! わ、私の生涯の最推しは恋人でもある主様ですけど! 一瞬、そう一瞬だけ! 浮かれてイエスと返事をしてしまう可能性はッ……! 無きにしもあらずっ!」

「……暗示入れていい……?」

「主様が急に闇堕ち顔に……ハイライト戻ってきて……あ、あの、暗示とは……?」

「僕以外に告白されたら断ることしかできなくなるように……」

「なにそれ怖い。まぁそれだけならいいですよ。ものすっごい深刻な顔してますし……」


 ユリがそう言いながら笑って手を広げた。

 ヴェルディーゼが破顔してユリに手を伸ばし、その頬を撫でる。

 ぐるり、とユリの目が回った。


「……あ、う」

「あ、ごめん、強すぎた」

「……う、……大丈夫です……目が回るぅ……」


 ユリが頭を抑えながら呟くと、ヴェルディーゼがユリの額に触れた。

 すると一瞬で目の回るような感覚が収まるので、ユリが目を丸くしてヴェルディーゼを見上げる。


「ごめんね、僕の魔力は強すぎるから……やりすぎると、最悪死ぬ」

「えっこわ」

「ああ大丈夫、ユリは適性は深淵魔法だけだけど、才能はあるし親和性も高いから。あと、僕の眷属であるユリは単純に僕の魔力と相性がいい」

「おおー……あの、それで……暗示は……」

「ん、問題ないよ。例え相手がどんな存在であれ、ユリは僕以外の告白は断ることしかできないから。他には何もしてないから大丈夫」


 ヴェルディーゼが笑顔で言うと、ユリが頬を引き攣らせた。

 それにヴェルディーゼが不思議そうな顔をするので、ユリはもじもじと体を揺らしながら言いづらそうに言う。


「あ、あのですね……やった本人から他には何もしてないとか言われると、逆に怪しく感じます」

「……ああ。なるほど……あ、でも、僕からの告白にはユリは受け入れることしかできないんだけど、これって〝他〟に入るかな」

「バッチリ〝他〟だと思いますけど、どうせ私にそれ以外の選択肢は無いのでいいです。ところでそれ命令で良かったのでは?」

「命令は……意思とは別に強制で断らせることになるし、融通が効かない。演技でもダメになっちゃうからね。暗示は意思ごと捻じ曲げてるし融通も効くよ」

「それはもはや洗脳の域では?」

「ふふっ」


 静かな笑い声に、ユリがひゅっと息を呑んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ