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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
クローフィ・ルリジオン

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疎外感

「……すぴー」

「……暢気」


 幸せそうな顔をして眠るユリを見て、ヴェルディーゼがぽつりと呟いた。

 諸々の後処理でゴリゴリとすり減っていった精神は無事に回復し、回復後にも健やかな寝顔をしているユリを見て癒やされることもできた。

 ヴェルディーゼとしては、その辺りは大満足ではあるのだが。


「ユリって、僕が思ってる以上に僕のことをよく見てそうなんだよね……」


 その内容までは見抜かれないものの、隠し事をしているとバレることは多かったし、そこまでは行かなくとも必ず怪しまれた。

 だからこそ、クレリスのことはユリを帰らせてから処理したわけだが。


「何かがあったことは、流石にバレてないっていうのは希望的観測すぎるよね……創世神とのやり取りで疲れたってことで誤魔化すしかないか。嘘ではないし……はぁ。……よく見てくれてることは嬉しいけど、色々バレるとちょっと困るなぁ」

「……んぅ」


 一応、ヴェルディーゼならば認識に少し手を加えて、ユリが何にも気付けないようにすることは可能ではあるのだが、あまりやりたくはない。

 そんなことをしてバレたら後が怖いので。


「……ん、ん……主様……?」

「あ、おはよう、ユリ。ありがとう、よく眠れたよ」

「ふわぁ……っ。おはようございます……よかったです……」

「まだうとうとしてる? 寝る?」

「……寝ないです……」


 目を擦りながらユリが言い、のそりと身体を起こした。

 そして、目を細めて幸せそうに微笑むと、ぺたりとヴェルディーゼに貼り付く。

 ぱた、と上機嫌に足を揺らせば、ヴェルディーゼは不思議そうにしながらもユリの頭を撫でた。


「どうしたの、ユリ。寂しかった?」

「そりゃあ寂しいですよ、一人で帰らされちゃうんですもん。……でも、そうじゃなくて……主様が、まだなにか考えてたみたいなので。私のことが大好きな主様は、こうすれば癒やされるかなって思っただけです」

「……やっぱり、よく見てるね。まぁ別に、ユリの行動は大抵可愛いから、わざわざそんなことしなくても癒やされるんだけど……」

「でも、私知ってますよ。主様は自分のために私が何かすると喜びます。膝枕然り、その行為そのものもそうですけど私が主様のことを思うことそのものに主様は喜びます」


 ユリがドヤ顔で言うと、ヴェルディーゼが苦笑いした。

 そして、そのままユリの髪を撫でると僅かに首を傾げて言う。


「それで……僕は元気になったから、今度はユリの元気が無い理由を聞こうか。何か気になることでもあった?」

「うぐ、鋭い……いざ話すってなるとなんか……緊張するんですけど」

「……何? 地球に帰りたい?」

「え!? できるんですか!?」

「不可能ではない、かな。パラレルワールドがたくさんあるから、そこの特定から手を付けないといけないけど……」

「……その割には、お父さんとお母さんの様子とか、あと親友のゆうちゃんの様子とか知ってましたよね?」

「どの世界でも反応が変わらないからね。そもそも今のユリは……いや、ややこしい話だからいいや。それで?」


 本題は、と視線で尋ねられ、ユリがハッとした。

 そして躊躇うように視線を彷徨わせると、俯きながら小さな声で言う。


「……その、疎外感……が」

「疎外感?」

「や、役立たずの分際で我儘だってことはわかってるんですけど! ……でも、こう……何もかもが、私を置いて進んでいってる感じがして……何か役に立ちたいのに、その機会すら奪われている感じがして……楽しかったんですけど、そこは嫌だったな、と……」

「……役立たず、ねぇ?」

「ひぃ……や、役立たずではないです、はい……あ、あはは……」


 役立たずという言葉に反応し、ヴェルディーゼが圧を掛けた。

 そんなことを言うなということらしいので、ユリが怯えながらそれを撤回し、引きつった笑い声を上げる。

 それにヴェルディーゼが頷き、足を組んで満足そうに笑った。


「ユリは僕の食事係兼癒しだからね」

「あれなんか増えてる。主様、私のご飯気に入ったんですか……? ……いや、まぁ、気に入ってはいたと思いますけど、そんなことを言うほど……?」

「食事は必要ないから、他人に振る舞われる料理なんて毒の可能性がある面倒なモノでしかないからね。まぁ、善意で出されたなら毒でも食べるけど」

「えっ……あ、えと……本題に戻しましょう! それでその……疎外感を、ですね。どうにかしたいわけでして……も、もちろん、もっと役に立てるよう私もできることはしますけど……!」

「……せめて、機会は奪わないでほしい、ってことだよね。いいよ、支障が無い範囲でなら配慮する。それでいいね?」

「はい……さ、流石にそれ以上の我儘は言えません。できる範囲で大丈夫です。……あと、あの……」


 ユリがそっとヴェルディーゼを見上げ、口元をまごつかせた。

 そんなユリにヴェルディーゼが首を傾げていると、彼女はとても心配そうな顔で首を傾げる。

 そして、その手を握り、酷く悲痛に満ちた表情で言った。


「毒は、食べなくていいですからね?」

「……え、そんなに気になった?」

「主様は善意とはいえ毒の入ったものを振る舞われて、それを私が食べたらどうします?」

「……あー、うん。なんでもかんでも受け入れたりはしないから大丈夫……必要な時にしかやらないから……」

「ならいいです。いや必要な時もできればやめてほしいんですけど。……こほんっ、とにかく甘えます! はい! 不安になりながら話したので疲れました! 甘えます!!」


 ユリがそう宣言し、勢いよくヴェルディーゼに飛びついた。

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