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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
クローフィ・ルリジオン

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制限緩和の理由

「はぁああああうぅあっ、主様ってばぁ〜!」

「やめて。離れて」


 つい先程までの落ち着いた態度はどこへやら、テンションマックスの状態でヴェルディーゼを撫で回すユリと、先程までの不安をどこかに投げ捨てて塩対応でユリに言うヴェルディーゼ。

 そんな二人は、しかしその実全く以てその内側は変わっていなかった。

 ユリは甘い瞳でヴェルディーゼを見つめているし、ヴェルディーゼはやめるように言いながらもその服を掴んで離さない。

 そんなだから、ユリはテンションが上がりまくっているのだが。


「だぁ〜いすきですよ〜!! 主様ぁ!」

「耳元で叫ばないで、うるさいよ。……僕は愛してる」

「ふへひひひ……私の方が愛してますけど?」

「そんなはずないよ。ふふ」

「あ? お? やんのかおら。オラオラ」


 ユリが謎の喧嘩腰で言い、ヴェルディーゼを挑発する。

 別に迫力はないのでどうということはないのだが、どうしたものかとヴェルディーゼが苦笑いを零した。

 それは、ユリがそんな風にふざける度に軽くなる心に対するものでもあるし、ユリのおふざけにどう対応するかという話でもある。

 ヴェルディーゼは軽く悩んで、しかしすぐに結論は出なかったので、


「はっはぁ、怖くてどうすることもできませんか! 主様ってば弱ぁ〜い! くひ、ふひひひひ……! なら主様はさっさと私の甘やかしを受けて――わぎゅ!?」


 段々調子に乗るユリを片腕だけで押し倒して黙らせた。

 騒ごうとするユリの口をそのまま片手で塞ぎ、ヴェルディーゼが笑う。

 その表情は、調子に乗って煽りに煽ろうとしたユリのそれよりもずっと邪悪なもの。


「……なら、僕の片腕だけで封じられてるユリは、どれほど弱いんだろうね? 確かめてみる?」

「ひゅ」

「……ん、ほら起きて。そんなに怖がらなくていいから」

「こっ、怖がってなんかぁ、ないっ、ですけどぉ……!?」

「そう? まぁ、ユリがそう信じたいならそれでもいいけど」

「優しくなったふりして攻撃してくるのやめてくれません!? というか言葉よりも顔ですよ、顔! 獲物を狙う顔はその、あの、無理です!」

「……嫌い?」

「わかってて聞いてますよね! あーはいはい好きです好きです大好きですとも!!」


 口は解放されたものの、片手で押さえつけられているユリがジタバタと暴れながら叫んだ。

 それを横目で眺めつつ、ふっとヴェルディーゼが目元を緩める。

 そして、ユリを解放して彼女が身体を起こしてから、ヴェルディーゼがユリを自らの膝へと引き寄せた。


「わきゃぅ。なんです……って、これじゃ私が甘やかされちゃうじゃないですか! いやだいやだ! 私が主様を甘やかすんだっ!! いやだ〜!」

「暴れない。……本当に敬語が減ったなぁ」

「え、今更ですか? ……あれ、命令って今どうなってるんでしたっけ。えと、敬語関連の命令は……」

「人前だと敬語になる。……はず、なんだけどね。まぁ、原因はわかってるからいいけど」


 ヴェルディーゼがユリの頭を撫でながら言うので、それを嬉しそうに受け入れながらユリが首を傾げた。

 ユリは人前でも割と敬語を崩しているはずである。

 絶対であるはずの命令が何故機能していないのかと、ユリが軽く眉を寄せてヴェルディーゼを見上げる。


「……一つは、僕が前以上にユリに心を開いていること。その結果、ユリにありのままでいてほしいという思いに沿う形で命令が変質した。あるいは、ユリの方がその思いに応えたのかもね。ユリに読心の手段が無い上に自覚が無さそうな以上、本能みたいなものだろうけど」

「せめて無意識にしてくれません? 本能はなんか野生児みたいです。アニメとかに出てくる野生児っぽい人好きではありますけど……私はそういうタイプじゃないというか……理性的な私を見てほしいというか……」

「……理性的?」

「マジのガチの困惑した顔されると傷付きます」


 ユリが少し落ち込みながら言い、そっと息を吐いた。

 そして、続きを促すようにヴェルディーゼを見つめる。


「……二つ目は、そもそもここにユリが敬語をやめたところでとやかく言う存在がいないこと。僕がユリに敬語を強制する理由はそこにあるからね。その必要がないのなら、制限だって緩くなるんだろうね」

「曖昧な言い方が気になりもしますがなるほど。三つ目はあります?」

「うん。最後に、ユリの感情の変化。好意も段々大きくなってるし、僕の強さに目を輝かせることもある。主に向けるべき敬愛に近い感情が生まれ始めてる。……まぁ、それ以上に恋が強いから……敬愛がそれを上回ることはないと思うけど」

「なるほどなるほど理解しました。えへ。つまり……愛情パワーってことですね!」

「……違うとも合ってるとも言いづらいことを……」


 ヴェルディーゼがげんなりした顔で呟くと、ユリがむっと頬を膨らませた。

 そして、手を伸ばしてヴェルディーゼの頭を撫で、当初の宣言通り甘やかしつつ言う。


「そんな顔しないでください。そりゃあこう言ったら主様なんて返すのかなって気になって言ったところはありますけど」

「愛してるって返すかどうか迷ったよ。我ながら一瞬とはいえ血迷ったと思う」

「主様!?」


 血迷ったなどと言い始めたヴェルディーゼにユリが目を剥いた。

 そのまま怒りをその表情に色濃く浮かべ、ユリがじたばたと暴れる。


「そーんーなーこーとーよーりーぃ! 主様主様、私は甘やかさせてくださいってお願いしたんですよ? 寄り道してばっかりです。さぁほら受け入れやがれください」

「ああ、そうだったね。……一時間だけだよ」

「クソッ丸一日って付けるんだった。まぁいいです、それはまた今度やります。じゃあじゃあー、主様、楽な姿勢になってくださいねー!」


 ヴェルディーゼが甘やかしを受け入れる態勢に入ると、ユリは途端に上機嫌になり、弾んだ声を出しながら甘やかすための準備に入った。

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