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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
クローフィ・ルリジオン

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魅了と暴露されるシュエルの秘密

 リュールとシュエルとともにたっぷりと会話をし、遊び、満足しながら二人は王都へと向かっていた。

 まぁ、たっぷり会話をしたのも遊んだのも、ユリだけではあるのだが。


「Q、シュエルちゃんが明るくなっていました。何故ですか!!」

「明るくなって良かったね」

「白々し! んもぉ、一体何をしたんです? シュエルちゃん、大人びた感じが減ってたんですけど」

「……んー」


 ヴェルディーゼがどうしたものかとどちらとも付かない声を返す。

 それに不満そうな顔を見せるユリを見下ろし、ヴェルディーゼが溜息を吐いた。

 そして、ぽんぽんと優しくユリの頭を撫でる。


「あんまり追及しないで。知られたくなさそうだったから。僕はユリに甘いから、そんなに追及されるとつい白状しちゃうかもしれない」

「それは私の望み通りですけど。……本当ですかぁ……?」

「本当、本当。ね?」


 ヴェルディーゼが柔らかくユリに向かって笑いかければ、くらりとその瞳が揺れた。

 は、と一度浅くユリが息を吐き、ヴェルディーゼの紅い瞳を見つめる。

 吸い込まれそうなほどに綺麗な紅の瞳は、見れば見るほど綺麗で、脳が絡め取られていくようで、考えてしまうことすら手放してしまいたい――と。

 そこでユリがヴェルディーゼから視線を逸らし、その目を見ないままじとりと眉間辺りを見るよう意識して睨んだ。


「絶対なんかしてますよね。こう……頭がぼやーっとして、何も考えられなくなる感じ……高熱を出してるわけでもないのにそんなのおかしいですし。どういうつもりです?」

「おお……ふふ、呑まれなかった」

「変なスイッチオンになってるんですか? 殴ります?」

「あ、いや大丈夫。そうじゃなくて……念のためかな。ああいうのに対処できるかどうか抜き打ちで試したかった」

「はぇー……何でですか?」

「ユリは会ってないと思うんだけど、魅了系の力を使うのがクラシロエスにいてね。ふと不安になっただけだよ」

「魅了系……どんな感じなんでしょうね。それこそさっきみたいな……?」


 ユリが首を傾げ、好奇心に駆られた様子でヴェルディーゼの瞳を見る。

 しかし、先程の魔法は既に解除されているようで引き込まれるような感覚は一切なかった。

 ヴェルディーゼは遠くを見つつ、クラシロエスの拠点でのことを思い返しながら言う。


「僕は効かないから、そういう感覚の話はあんまりわからないけど……効果が強いなら、思考すらできなくなることはあるだろうね」

「なにそれ怖い……そのクラシロエスの人はどうだったんですか? というかその人、倒したんですか?」

「ううん。そもそも魅了も僕に向けられたものじゃなくて、無差別なものだったし……あっちも僕に興味がない感じで、一瞥だけしてどこかに行っちゃったよ。ユリ、気を付けてね。豪華な白ローブを着てたから、たぶん地位が高い。既に目を付けられてるから、そういうのが差し向けられてもおかしくないよ」

「なるほどそれで。……いや、絶対誤魔化すためでもありますよね? 騙されませんよ!」


 にこりとヴェルディーゼが微笑んだ。

 すると、ユリがぼやーっとヴェルディーゼを見上げて笑う。

 ハッとしてユリが正気を取り戻し、ヴェルディーゼを睨んだ。


「もはや遊んでいますよね?」

「面白くてつい。……そろそろ本気で怒られそうだから話すけど、シュエル、クラシロエスに勧誘されてたみたいなんだよね。兎人族は人に近いし、誘われてもおかしくはないんだけど……なんでシュエルだったんだろう。……ああ、いや、でも……」

「……中途半端に大人びているからでは? 完全に推測でしかないですけど……フィルス家の夫妻はもちろん大人ですし、勧誘しても然るべきところに報告されるだけの可能性があるじゃないですか。んで、リュールちゃんは幼いから、両親に相談する。だけど、シュエルちゃんは……両親に迷惑は掛けられないって思考になっても、おかしくはないと思うんですけど」

「……ああ、そうか。リュールが誘拐された時が初めてじゃないのなら……なるほど、辻褄は合うね。……リュールが狙われてるなぁって思ってばっかりで、シュエルにはあんまり意識向けてなかったからな……」


 はぁ、とヴェルディーゼが溜息を吐いた。

 そのままユリを見て、よく見ているなと苦笑いしてからしっかりと褒める。


「ちゃんと観察できてて偉いね。よしよし……」

「ふへぇ。……あの、シュエルちゃんが知られたくなさそうだったっていうのは……本当ですか? 再会しても知らないフリした方がいいですかね」

「んー……まぁ、そこまでしなくてもいいけど、触れないべきではあるだろうね。両親もリュールも……いや、リュールは知ってるかな……目の前で攫われて、そのままシュエルも勧誘されてたんだとしたら……知ってそうだけど」

「なるほど? リュールちゃんが知ってたとしたら……優しい子なので、シュエルちゃんが隠しがっていたら隠すかもしれないですね。まぁ、私前に睡眠薬投げられてるのでリュールちゃんもそれで眠らされてた可能性もあるんですけど」

「あー……いや、たぶん薬は盛られてないかな……怪我は多少してたから、気絶かもね」

「……処します?」

「今から?」

「うぐぅ……今更ですよねぇ……許せないぃ」


 ユリがそう言いながら溜息を吐いた。

 そして、処すことに関しては諦めながらヴェルディーゼに向かって尋ねる。


「王都って、あとどれくらいで着くんです? 全く把握してませんけど、私」

「……そうだね。少し急ぎたいから……あと数日、一週間も掛からないくらい……五日か四日くらいかな」

「おぉ。……ところで、また何か私に隠れて何か把握してたり考えたりしてますね? 話してくださいよ」

「否定はしないけど話さないよ。ほら、行こう。言ったでしょ、急ぐって」

「むー……はいはぁい、急ぎまーす……もー」


 少し不満げにユリが言い、足を早めるヴェルディーゼに付いていった。

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