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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
クローフィ・ルリジオン

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解決手段と最終目標

 森を進んでいた最中、ヴェルディーゼがふと足を止める。

 それを見たユリは首を傾げ、同じように止まってから尋ねた。


「どうしたんですか、主様。急に立ち止まって……」

「……ずっと魔力で周囲を探ってたんだけどね。この下、違和感のある空洞がある。今は誰もいないけど、人がいた形跡……かな。……ちょっと古びてる?」

「……こんなところに?」

「そう、こんなところに」


 ユリとヴェルディーゼが顔を見合わせた。

 しかしユリは地面を見て黙り込み、ヴェルディーゼはどこか遠くを見据えて思案する。

 見つけた空洞は、放棄されたクラシロエスの拠点の可能性がある。

 しかしそうではなかった場合、ただの不法侵入となるわけで。


「……クラシロエスの拠点じゃなかったら、墓荒らしみたいな真似になりかねないけど……古びてるし、人の気配は全く無い。どちらにせよ、随分前に人はいなくなってるはず。……行こうか」

「ひぇ……い、行くんですか。……いやまぁ……そうですよね……」

「世界の汚染をこれ以上悪化させないために来てるからね。その原因はほぼ確実にクラシロエスだろうし」

「察してたけど初耳ですぅ……原因ってクラシロエスなんですか。というか来た目的も半分忘れてましたよ」

「まぁうん、ユリは僕が何も言わなければ忘れるだろうね」

「ひどい。で、どう対処するんです?」


 ユリがそう尋ねると、ヴェルディーゼがジッと地面を眺め始めた。

 何やら唐突に考え事を始めたので、ユリは邪魔をしないようヴェルディーゼの考え事が終わるのを待つ。


「……行こう。歩きながら説明するよ」

「はぁい。それで、どうするんですか?」

「クラシロエス壊滅……は、規模的に厳しそうかな。ってなると、集団洗脳辺りになっちゃうんだけど……はぁ」

「集団洗脳……」

「そんなにやりたくはないけど、仕事だからね。……けど……念の為、首魁は捕捉しておきたいな。集団洗脳って言っても、簡単な暗示みたいなものを魔法で広げるだけだからね。切っ掛け一つで解除されかねない」

「主様なら強力な洗脳くらい魔法でできそうなものですけど……あ、世界への影響とかってやつですか?」

「うん。大規模な洗脳なんて下手したら世界の汚染を倍にしかねないからね。それこそ世界が壊れちゃう。難儀なものだよ。……この世界の神にもっと格があれば楽できるのに……」

「そういうシステムなんですね……」


 ヴェルディーゼ曰く、創世神に神としての格があればあるほど、世界の許容値も増え、世界が頑丈になるらしい。

 今回は低位の神の世界に来ているので、ヴェルディーゼはかなり遠回りをしているようだ。


「例えば僕が全力で世界を創った場合、僕がそこで魔法を撃ったところで世界が揺らぐことはない。けど他の神は……はぁ、全力じゃなくても僕は他の神を簡単に殺せるからね。そんな神が創った世界じゃ僕にとっては脆すぎるから、そう簡単に魔法を使えない。だからなるべく影響が出ない方法で解決しないと」

「主様ってあのお城がある世界以外にも世界創ってるんですか?」

「創ってないし創るつもりもないよ。僕は全ての世界の管理者で最高責任者。ただでさえ無数の世界を管理してるのに、仕事なんて増やしたくないよ」

「そう考えると主様って他の神全員の上司的な人なんですよね。……ひぃ、なんで私そんな人の恋人枠に……」

「だから嫌われてるんだろうね。世界に何かあれば僕が警告とかしないといけないし……神は何か色々ぶっ壊れてるの多いし……あ、ユリ。足元に気を付けて、そこ入り口」


 ヴェルディーゼがそう声を掛けると、ユリがビクッと震えてヴェルディーゼの腰にしがみついた。

 なんでそんな人の恋人に、などと言っているが普通にそれ以外に無いくらい距離が近いユリにヴェルディーゼが無言で目を細めて微笑む。


「え……な、なん、なんですか? なんか……あぅ……顔がいい……」

「なんでもないよ。入ろうか」

「はい……」


 ユリがこくりと頷くと、ヴェルディーゼが地面に向かって魔力を叩き付けた。

 ギョッとした顔でユリがヴェルディーゼを見上げる。


「なななな何してるんですか!?」

「いや、魔法使えないから魔力で……ほら、地面見て。扉壊したよ」

「壊し……えっ、魔力で!?」

「うん」

「こ、このチート……」


 ユリがそう呟きながらそっと壊れた扉に触れる。

 すると、サラサラと扉が崩れた。

 ユリが固まってヴェルディーゼを見上げる。

 ヴェルディーゼは当然みたいな顔をして扉があった場所を見つめていた。


「どうしたの? 早く行こう?」

「え……あ、はい……」


 心底不思議そうな表情でヴェルディーゼが言いつつ先へ行こうと促してくるので、ユリが何とも言えない顔をしながら付いていった。

 中は薄暗く、土埃が舞っておりそれを吸ってしまったユリが軽く噎せる。

 軽く背中を擦ってからヴェルディーゼが結界を張ってやり、周囲を見回した。


「……全体的に古ぼけてるね。怪しげな魔法陣があるのが気になるけど」

「うわほんとだ地面になんかある。……んー……機能はしてなさそうですね、この魔法陣」

「……成長してるなぁ」

「今更こんなことで私の成長を実感しないでください。教わったら魔法陣の構造くらい理解できますよ。結構複雑ですけど、ファンタジーな感じが学んでてすっごく楽しいですし」

「神としての必須条件ってだけで、魔法陣の構造ってそう簡単に理解できるものじゃないんだけどね。まぁいいや……何かあるかな」


 ヴェルディーゼがそう言いながら周囲を眺める。

 すると、無造作に放置された手帳を発見し、パラパラと捲った。


「あ、主様何か見つけました?」

「うん、手帳。えーと……ん」

「主様?」

「……〝最終目標クロイレ、捕捉〟……?」

「さ、最終目標とかいうあからさまにやばそうな言葉が……!?」


 ユリがそう慄きつつ、ところでクロイレって誰だろうと内心で首を傾げた。

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