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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
クローフィ・ルリジオン

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不発の原因

 一歩ずつ足を進めては、ユリが名残惜しそうに街を振り返る。

 そうすれば、もう既に遠いところにはあれど、確かに焼けてしまった街が見えてユリがしょんぼりと肩を落とした。


「……気にしない方がいいと思うけど」

「そ、そうは言ってもですね……はあぁ。クーレちゃんとももうお別れで寂しいですし、街は燃えちゃって悲しいし……はあぁ」

「……あ、そうだ。ユリを攫おうとした愚か者はぶちのめしておいたから」

「はい? ……え、ぶちのめして……え? ……い、いつの間に、いやその前にぶちのめすってそれどういう……え??」

「夜に散歩に行ったって言ったでしょ。その時に」

「お、え、おぉ……へぁ〜……」

「ふふ、間抜け面。ぶちのめした、の詳細な説明だけど……たぶん、聞かない方がいいだろうね。ユリのことだから、気に病んで悪夢を見るかもしれないし」

「ほぼ答えなんですけどそれ。絶対やばいじゃないですか。あ、あの、その……や、殺りました?」

「ふふ」


 曖昧にヴェルディーゼが笑うので、ユリがキッとヴェルディーゼを睨んだ。

 ユリ的には、曖昧にされると余計に怖いので。


「大丈夫だよ」

「何が大丈夫なんです……?」

「大丈夫だよ」

「……わかりましたもう聞きません。わかりましたから」

「んー」

「うぎゃぁ〜」


 ヴェルディーゼがユリを抱き締めて歩き始めた。

 初めてアークルズの屋敷に行った時、その帰りの際の甘えん坊モードを彷彿とさせる態度である。

 軽く持ち上げられ、ユリが抱き締められたまま運ばれる。


「……ふぅ。ネックレス……どうしたら上手く発動するんだ……?」

「あ。そういや……これってなんなんです? 何の効果が……?」

「敵意とか悪意に反応する結界とか、魔力に反応する結界とか、色々。魔力もしっかり込めてるのに……なんでちゃんと発動しないのかな。はぁ……」

「……んー。クラシロエスの一件は、敵意とか悪意がなかったんじゃないですか?」

「そもそも他人の影響でユリに異変が出た場合治癒と結界が発動されるはずなんだけどね。強い恐怖を抱いた時も結界が発動するはず……」

「……うーん……? 原因、よくわかりませんね……とりあえずそれで悩んで私を抱き締めているのはわかりました。もう少し楽な姿勢で抱えてほしいです。直立状態で抱えられるのは辛いです」


 ユリがそう要求すると、スッとヴェルディーゼが横抱きに切り替えた。

 そして、周囲を見ると近くにあった岩に腰掛けてユリのお腹辺りに顔を埋める。

 ユリが顔を真っ赤に染め、固まった。


「……ぁひゃ……!?」

「なんでちゃんと発動しないの……攫われなかったのは、本当に奇跡みたいなもので……睡眠薬だって盛られて……盛られて?」

「あ、あぅ……そ、そういえばっ。私そういえばあの時、全く眠くなってなかったですね?」

「……そういえば解毒だけ作用してる? なんで……?」

「謎が深まりましたね。ところで話は変わりますが離れてくださいくすぐったいですぅっ」


 ユリが顔を赤くしながら言うので、ヴェルディーゼが仕方無く顔を上げた。

 そして、ユリを膝の上に座らせながら悩む。


「うーん……発動にはユリの魔力も使ってないはずだけど……そもそもそれだと、解毒だけ作用してたことがおかしいし……」

「んと……もしかして。もしかしてですけど……解毒って深淵魔法関係あります? で……それ以外の仕掛けには……?」

「少しだけね。深淵魔法はユリと相性が良いから、無理なく入れられるなら入れてる。解毒はメインではないにしろ、深淵魔法の要素を多めに込められたかな……逆に、他のにはあんまり込められてない。でも、それは解毒だけは発動した理由にはなるかもしれないけど、他が発動しない理由には繋がらないし……」

「……あ、主様からのプレゼントじゃないですか。これ」

「うん、そうだね」

「それが嬉しくて……主様がお風呂に入ってる時とか、主様が傍にいない時にちょくちょくこれ触ってたのって、関係あると思います……?」

「………………………………なるほど」


 長い沈黙の後にただ一言ヴェルディーゼが言うと、ユリが震え上がった。

 ユリがたくさんネックレスに触れたことでユリの魔力がネックレスに影響を及ぼしてしまったとしたら、ユリに非があるかどうかで言えば無いわけではない。

 しかし、わざとではなかった上、他者に迷惑を掛けているわけでもないのでそれで責められるべきかと言えば否である。

 しかし、他者に迷惑は掛からなかったが周りの人に多大な心配を掛け、ユリ自身は大怪我を負い、攫われかけてもいる。

 もしユリ自身が自分を追い詰めていたとすれば、ヴェルディーゼは心配が故に多少はユリを責め立ててくるだろう。

 そこまで予測したユリは、それが恐ろしくてジタバタと暴れる。


「……はぁ〜。……ごめんね、逃げないで」

「ひきゅぅっ!」

「小動物みたいな鳴き声……別に責めたりしないよ。僕が悪いからね」

「……え!? え、や、そんなことないです!」

「それを用意したのは僕なんだから。……はぁ、全然上手く守れてない……ねぇ、もう少し甘えさせて」

「え、あぇ……へ、ふへ、あ、主様ってばぁ、甘えん坊なんですからぁ……んんっ。じゃ、ちょっと休んで行きますか。……そういえばお昼時ですね。ちょっと休んだらご飯にして、また少し休んでから出発しますか」

「ユリの作るご飯は久しぶりだね。楽しみにしてる。……けど、もう少し……」

「はいはぁい。いいですよー」


 ユリがとても嬉しそうに頷くと、ヴェルディーゼがユリの首に顔を埋めた。

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