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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
クローフィ・ルリジオン

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理の反逆者

「もぐもぐむぐもぐ……ん」


 口の中いっぱいに、ユリがクッキーを頬張る。

 口の端にクッキーの粉が付いていたので、ヴェルディーゼが無言でそれを拭いた。


「美味しい?」

「んぐっ……ふはぁっ、美味しいです! 領主の家紋とかどうでもいいくらいには美味しいです!」

「そっか、良かったね」

「主様も一口どーぞ! さて、次は何をしようかな……ふへへへ……」

「……ユリ、屋台回りたいだけだよね? 一応、祭りの本題はそこじゃなくて、英雄に感謝を捧げることなんだけど」

「ぎゅぐぅっ……そ、そそそそそーぉんなことないですけどぉ? え〜〜?」

「誤魔化しが下手だね……別にいいけど。それくらいの方が、僕としても楽しみやすい。本格的に参加するのは面倒だからね」


 ヴェルディーゼがそう言うと、ユリがあからさまにほっとした顔をして息を吐いた。

 祭りに参加しておきたいと言いながら、していることはただの屋台巡りである。

 もっとも、祭りが始まる前からそんな雰囲気は物凄く出ていたのでヴェルディーゼとしてもただの再確認のようなものだったのだが。

 とはいえユリはヴェルディーゼに呆れられてしまうと思っていたようで、安心した今はふにゃふにゃとした笑顔を浮かべている。


「えへへっ……異世界料理、わくわくしませんか? そりゃ、宿でも料理は出ますけど……屋台とは違いますし!」

「楽しめてるならいいよ。……ただ……はぁ」

「どうしました?」

「……なんでもないよ。ほら、次はどこに行くの?」

「何にしましょう。食べ物は美味しくて雰囲気が楽しめて凄くいいですけど、折角なら記念品も欲しいですね。邪魔にならない小さいやつ。どこかに付けられると望ましいです……うーん、そういうの、どこに売ってるんでしょうか……」

「祭りに限らず売っていそうではあるね。どこかに付けられるのかどうかはともかく……だけど。雑貨屋でも探してみる?」

「はいっ! 良いものあるかな〜」

「……全く、暢気だね」

「はい?」

「なんでもないよ」


 何事かを呟いたヴェルディーゼに首を傾げつつも、ユリは常に楽しそうに笑みを浮かべて道を歩いていった。



 暗い部屋の中、白いローブを纏った者達が整列して立っている。

 白いローブの者達の視線の奥では、他の者よりも豪華な白いローブを纏った者が立っていた。


「我らは、理の反逆者」

「「「「「「我らは、理の反逆者!」」」」」」


 豪華な白ローブを身に纏った者が口にすると、他の白ローブがそれを繰り返した。

 それを聞きながら、豪華な白ローブを纏った者は続ける。


「屋敷を襲った同胞らは、良き成果を持ち帰った。であれば、我らも動く時」


 カンッ、と豪華な白ローブの者が杖を地面に叩き付けた。


「次なる標的は、英雄が救った地。我らの祝福を拒みし地。彼の場所は祭りに浮かれている。しかし、だからこそ英雄の末裔は我らを警戒している。祭りも終わり、警戒が緩んだその瞬間に。我らは、祝福を拒んだあの地を掌握する! 全ては、この世界の浄化のために!」

「「「「「「浄化のために! 浄化のために!」」」」」」

「この異常な理の破壊のために!」

「「「「「「破壊のために! 破壊のために!」」」」」」


 雄叫びが響き渡り、けれど、その声が外に漏れることはなく。

 計画を知り、警告できる人間は、どこにもいなかった。

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