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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
クローフィ・ルリジオン

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餌付けと本

 宿で朝食を取り、ユリ達は街を歩いていた。

 昨日は疲れていたので宿を探すのに集中していたが、今日は既に宿でしっかりと休んだ後である。

 ユリは笑顔を浮かべながら散策を楽しんでいた。

 ちなみに、服はしっかり着替えている。


「楽しいですね、主様! 結構発展してるように見えますけど……どうなんでしょう? あっ果物売ってますよ! そういえば朝のやつも美味しかったですよね〜!」

「……楽しそうだね」

「あ、あれ? 主様、楽しくないですか……?」

「そういうわけじゃないんだけど……ユリ、もう少し落ち着いて……」

「わあ店主さん、この果物くれるんですか? ……え、これがコナレなんですか!? へぇ……!」

「……はしゃぎすぎだし……なんでそんなに物貰ってるの……?」


 ヴェルディーゼが困惑しながらそう言うが、ユリにはあまり聞こえていないらしい。

 声を掛けられては無料で商品を受け取り、大慌てしている。

 そろそろ荷物も多くなってきて危ない頃合いである。

 ヴェルディーゼが溜息を吐きながら足早にユリの隣に立ち、強引に荷物を奪う。

 ユリが目を丸くし、ヴェルディーゼを見上げてにへらと笑った。


「主様、ありがとうございます。たくさん貰ったはいいけど、そろそろ前が見えなくなってきていて……」

「だったら断ればいいのに……はぁ。食べ物系もそこそこあるね、朝ご飯を食べたばかりだけど……入りそう?」

「多少なら入ると思います。結構歩きましたし! 来たばかりの時に大きな村をそのまま発展させたくらいの規模、って言いましたけど……実際歩いてみると広いですね」

「そうだね。……というか、よく大きめの村くらいの広さなんてわかったよね。馴染みなんてないだろうに……」

「一時期民族とかに興味が湧きまして。その一環で、村の規模とかも調べてました。見に行ったことはないので、その発言に関してはほぼ勘なんですけどね」

「ふぅん……あ、これ美味しそう。食べる?」

「食べます!」


 ユリがそう言いながらヴェルディーゼが差し出してくれた謎の果物にかぶりついた。

 屋台のお婆さんがくれた、一口大にカットされたものだ。

 ゆっくりと咀嚼すれば、優しい甘みが口の中に広がり、ユリが頬を押さえた。


「ん〜っ! 甘くて美味しいですよ! 主様もどうぞ!」

「……ん、美味しいね。……それから、ユリ。ずっと言ってるんだけど……もう少し落ち着いて」

「むぐ……ふぁいっ? 果物を食べさせながら、もぐもぐ……んぐ、言わないでください……」

「……」

「あぶ。……おいひい、れすけど……ごくんっ。……やめてくださいっ!」

「……餌付け楽しい……」

「餌付け!?」


 ヴェルディーゼが何かに目覚めかけていた。

 こくりと唾を飲み込み、串に刺さった果物とユリを交互に見つめている。

 若干ヴェルディーゼの視線が怪しくなってきたので、ユリが慌てながら周囲を見回し、頬を引き攣らせながら言った。


「え、えっとあの、そう、えーっと……! そそそそそそういえばっ! 何だか視線を感じます、ねっ……!? 周りの人は見てないのに、なんででしょうね……!?」

「……ふふっ。そうだね、なんでだろうね」

「あれからかわれてただけ!? あと言う気無いんですねそれ!」

「なんのことかな。……さて……どこに行こうか。この世界についての情報を集めたいんだけど……図書館とかあるかな。でも、クーレのところにあった以上の情報が書かれてるものじゃないと意味は無いし……」

「……図書館があればありそうですけどね。図鑑はよく見てましたけど、クーレちゃんのところに置いてあった本は森に生えてるものとかについてのものが主でした。だから、私達もよく食べられてるっぽいコナレとかも知らなかったわけですし……常識についての本も、そこまで多くはありませんでした。……問題は、図書館があるのかどうか。そして、一般常識について書かれた本があるかどうか、ですかね……」


 ヴェルディーゼの様子が普通に戻ったので、ユリが真面目にそう言った。

 クーレの屋敷には、確かに本がたくさんあった。

 しかし、少なくとも一般人ではなさそうな雰囲気を纏うクーレの屋敷を基準にするのは良くないだろうとユリは考えていた。

 クーレが特別なだけで、そもそも本があまり出回っていない可能性もある。

 それなら図書館があるとも考えづらいので、今日の散策は無駄になってしまうだろう。


「本があまり出回っていない場合、常識についての本なんて余計に少ない気がするんですよね。誰もが知るような情報について書くより、図鑑だったりを書く方が有益でしょうし。……そもそも識字率がどんなもんなのかも……うあー、考えたらきりがないです」

「……宿屋で聞くべきだったかな。でも、今更戻るのも面倒だし……いいや、このまま散歩しよう。……ふふ、デートだね」

「でっ……!! デート……!!! 何しますか主様! カフェとか行きますか!」

「……行ってもいいけど、図書館とか、本が売ってそうな場所を探すのが本題なのは忘れないでね……?」

「ひゃあぁああ、主様とデート……! ひゃ〜! どこ行きましょうねっ!」


 ぽっ、と頬を染めて黄色い悲鳴を上げるユリを見て、ヴェルディーゼが深い溜息を吐いた。

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