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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
クローフィ・ルリジオン

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更新再開します。

 髪を梳かれる感覚に、ユリが薄く目を開く。

 すると、目の前で寝転がるヴェルディーゼがユリの髪を優しく梳いており、ユリがにへらと笑みを浮かべた。


「……あ。起こしちゃったかな」

「だいじょうぶ、です……ふへぇ……おはよう、ございま……むにゃ……」

「まだ眠いね。……もう寝た?」

「お……おき、て……起きてま……す……」


 うつらうつらとしながら、ユリがかろうじて返事をする。

 ほとんど眠っているのは明らかだが、ユリが起きていると言い張るのでヴェルディーゼはちゃんと目が覚めるまで髪を梳くことにした。

 ユリの艷やかな髪は、軽く梳くだけでどんどんと整っていく。

 しばらくすると、薄目を開けていたユリが完全に目を閉じて再び眠ってしまった。

 ふ、とヴェルディーゼが唇を綻ばせ、手はユリの髪を梳いたまま周囲を見回す。

 そこには何もなく、誰もいないが、それでもヴェルディーゼは何かを捉えているらしい。

 いくつかの場所で視線が止まり、まだ次へと視線が流れていく。


「……5、かな。敵意がないからいいけど。どうせ重要な話は聞かせてない」


 ボソリとヴェルディーゼが呟き、再びユリに視線を落とした。

 自分が恋に落ちた、愛おしい少女。

 愛はある、恋もある。

 それなのに、抱く感情はどこか冷めていて。

 甘い言葉を吐けば。

 甘い視線を、言葉を、向けられれば。

 それらは酷く甘美で、強く自分の感情を自覚する。

 だがそれも一瞬。

 ふとした瞬間には冷めて、冷静に彼女のことを見つめている。


「……」


 静かな部屋で、今日もヴェルディーゼは独り思考に耽る。



 木が軋む音に、ユリがまた目を開く。

 隣を見ると、ヴェルディーゼがベッドに腰掛けて窓から外を眺めていた。

 その横顔はとても退屈そうで、ユリがゆっくりと身体を起こしてその背中に抱きつく。


「おはようございます、主様。どうしたんですか?」

「おはよう。考え事をしてたら、眠れなくなってね。気持ちよさそうに寝てるのに邪魔もしたくないから、ずっと景色を眺めてた。早朝からだから、あんまり代わり映えしなくて……退屈だった。綺麗な景色は嫌いじゃないけど、人が動いてるところなんて見たって忙しないなぁとか思うだけだし……」

「そうなんですか。なんかすみません……ええっと、今は……んー……お昼ではなさそうですね? でも、ちょっと起きるのが遅かったかも……」

「……大体9時くらい。遅くはないよ。まぁ、普段に比べたら遅いかもしれないけど……折角まともなベッドで久しぶりに寝たんだから、それくらい許容範囲でしょ。……二度寝だってしてたし」

「……二度寝……? ……あ、あー……かろうじて、何か……覚えてる、ような?」


 曖昧にユリが言うと、ヴェルディーゼが苦笑いした。

 やはりほとんど起きていなかったらしい。

 そうだろうとは思っていたので、ヴェルディーゼは驚く様子もなくユリの頭を撫でる。


「……ほら、着替え。そろそろ朝食に行かないと」

「あっ……! わかりました! すぐに着替えますね。……振り向いちゃ駄目ですよ?」

「そんなことしないから、さっさと着替えて」

「はぁーい」


 そう返事をしながらユリがヴェルディーゼから手渡された服に着替え、ヴェルディーゼの前へと回る。

 そして、その場でくるりと回ってキラキラとした目でヴェルディーゼを見上げた。

 渡したのはヴェルディーゼなのだが、感想を求めているらしい。


「……僕の見立て通り、似合ってるよ」

「ふへへぇ……そうですか、そうですかぁー! 似合ってますか!! ……それはそうと……スカート短くないですか?」

「そんなことないよ」

「そうですかね……外歩いても大丈夫そうなくらいの長さとはいえ……短くないですか? 太ももガン見えですよ?」

「そんなことないよ。馴染めるようにだよ」

「馴染めるように……ま、まさか、街の人達はこんな格好をっ……!? むむむ……そんなことないじゃないですか! 履いてる人もいますけど! でもむしろズボンの方が多い!! 癖ですか! 癖なんですか!!」

「……大丈夫。素材とかは合わせたから」

「もう誤魔化す気ないですね!?」


 わざわざユリが外を眺めて確認すると、ヴェルディーゼは諦めてそんなことを言い始めた。

 趣味全開の服を作ってユリに手渡していたらしい。

 センスは良い上、ヴェルディーゼからの贈り物ということになるのでユリの心の中は幸福でいっぱいだ。

 しかしそれはそれとして、短いスカートにユリが何とも言えない顔になる。

 そして、息を吐いて顔を上げるとヴェルディーゼに向かって言った。


「……どこですか! どこが癖なんですか! ミニスカですか! 足ですか!? 生足が好きなんですかぁ!?」

「違う」

「じゃあどこですか!!」

「恥ずかしがるユリ」

「うあぁっバレてた!! なんでバレっ……読心がありましたね! うぎぁー!!!!」

「騒がし……ほら、行くよ。僕はともかく、ユリにはしっかり栄養を摂ってもらわないと」

「へぁ……っ、待ってくださいこのままですか!? ちょ、ちょっと! 待っ……この格好で……!?」

「行くよー」

「やぁあっ、抱えないでぇ!? 素足! 触ってんの素足ですよ照れとかないんですか!? ありますよね降ろしましょう! ねっ!?」

「朝ご飯は何だろうね?」

「無視しないでください!?」


 顔を赤くして降ろしてと訴えるユリが可愛いので、ヴェルディーゼは笑顔で訴えを無視してユリを抱えたまま食事に向かった。

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