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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
クローフィ・ルリジオン

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荒れる精神

 ぽふ、とユリがベッドに飛び込む。

 地球ほど発展しているわけではないので、寝具の質に不安があったものの問題はなさそうだ。


「いや、柔らかくなかったら危ないでしょ。飛び込むなら触って確かめてから飛び込まないと」


 ユリの思考を読み取ったのか、ヴェルディーゼがとても真面目な顔でそう言った。

 しかしユリはそれを聞き流し、ぽふぽふと毛布を堪能する。

 そして、最後に毛布を抱き締めてころりと転がり、ヴェルディーゼを見上げた。


「……クーレちゃんのところのって、質良かったんですね……あの屋敷よりはもしかしたら質が良くない可能性もあるかも? とは思っていましたけど……粗悪ではないにしろ……うーん。……まぁ、支障はないからいいですけど。はぁ、屋敷よりも質の良い可能性も考えてたのになぁ……」

「そう? 本当に支障ない? ユリ、一緒に寝ないと悪夢を見て寝られないでしょ」

「うぐ……寝具は関係ないですから! こだわりの強いタイプでもないですし……主様と一緒に寝ればいいんですよ。そのために2人用のお部屋にしたんですし!」

「それはそうだけどね。僕がいないと、何をしても悪夢を見るから……ぬいぐるみも抱き枕も、実体のある幻覚だって試したのに」

「……や、やっぱりそれはどうにかすべきですよね……あれ? クーレちゃんのところの隠し通路で寝た時……夢を見た記憶の欠片もなかったですけど。……もしかして克服!?」


 ぱあっとユリが笑い、今夜は一人で寝てしまおうかと考え始める。

 それにヴェルディーゼは優しく微笑み、ユリの肩を軽く叩いた。

 優しい表情にユリが本当に克服できてしまったのではと期待する。


「全然大丈夫じゃないよ」

「……ふぁえ?」

「むしろ悪化してるよ。森の中ではくっついて寝てたから全然大丈夫だったけど、今一人で寝ようものならたぶんとんでもない悪夢を見るよ」

「……だったらこの優しい表情は!? そしてなんでそんなことがわかるんです!? いえ、私も主様ならたぶんわかるだろうとか思って見上げてましたけど!」

「抱き締められて寝てる時のユリは大抵精神が穏やか。そうじゃないと荒れに荒れるんだけど……ユリ、もう眠いでしょ」

「はい、そうですけど……?」

「寝てる時に攫われたからだろうね。普段から眠くなってくると精神が荒れ出すんだけど……悪夢を見てる時ほどじゃない。その兆候みたいな感じで荒れ出すんだ。ただ、クーレの屋敷を出てからは……寝る前は悪夢を見る時よりも精神が荒れてる」

「……おおぅ……」


 原因はまず間違いなくクーレだろう。

 ユリは考えないようにしているが、クーレは完全に生死が不明。

 ユリはクーレをとても大切に思っているので、今も引きずってしまっているのだ。

 クーレをとてもとても心配している自分にユリが苦笑いし、息を吐く。


「……どうにか、戻れないでしょうか。あの森に……屋敷に。せめて、遠目からでも……クーレちゃんの姿だけは、確認したいです」

「……少なくとも、精神が落ち着くまでは駄目。万が一のことがあったら、それこそユリの状態は悪化する。時間だって経ちすぎてる。今も戦ってる、なんてことはないはずだよ。相手側は人間だったし。そうじゃなくても、人に近い種族だったからね」

「よ、よく見えましたね……!? なんか白いローブ? みたいなやつだって着てましたし、見えたのだって一瞬のはずなのに……」

「伊達に最高位邪神なんて大仰なもの名乗ってないよ。視力だって桁外れみたいだからね……」

「はえー……」

「ほら、寝るよ。隣来て」


 ヴェルディーゼがベッドに寝転がり、ユリに隣に来るよう促した。

 高校生にもなって大人の人と一緒に眠るのは恥ずかしいので、克服したのなら一人で眠りたかったのだが悪化しているとなれば仕方がない。

 それに、好きな人と眠れること自体はユリも歓迎である。

 若干の羞恥はやはり感じなくはないが、それはそれ。

 嬉々としてヴェルディーゼの隣に向かい、いそいそと横になった。

 ヴェルディーゼが何かしたのか、明かりが消えて部屋が暗くなる。


「……寝れる?」

「ん、んん……ちょっと、寝辛いかも……しれません。ゴワゴワした感じ……」

「そっか。じゃあ、ユリが寝るまで起きてるから。話したければ話してもいいし、静かにしてたいならそれでもいいよ。どうする?」

「だ、大丈夫ですよ……? 私のせいで主様が寝れないのは申し訳ないですし……」

「大丈夫、神は本来睡眠を必要としないから。急にやめることもできないから、ユリはまだ必要だけどね。神にとっても必要じゃないだけで、効率の良い休息ではあるし。寝ても短時間だけど」

「……そうなんですか……んん、じゃあお言葉に甘えて……えっと、主様のことが知りたいです」


 少しだけ何の話をするか考え、ユリがそう言った。

 するとヴェルディーゼは戸惑ったように目を丸くしたまま固まり、少ししてから首を傾げる。

 聞けば、ヴェルディーゼはあまり自分の話をしたことがないらしい。


「自分の話をしたことがないって……主様は最高位とかいう凄い階位の神様でしょう? なのに、ですか?」

「そもそも基本的に他人に近付かないし近付かせないからねー……僕の話か。難しいな……ユリから質問してもらってもいい?」

「もちろんですよ。じゃあ……強さの秘訣、とか? 主様、尋常じゃない強さしてるじゃないですか。いろんな武器だって使えますし……なので、その辺りを聞きたいです!」

「いいよ。といっても……んー。……ユリの鎌と深淵魔法しか使えない体質みたいに、僕は少し使うだけでなんとなく効率の良い戦い方とか、自分に合った使い方とかわかっちゃうからね。それの影響が大きい気はするけど」

「……私ではなく、主様がとんでもチートの持ち主でしたか……」

「深淵魔法についてはユリも大概な才能してるけどね。もう少し使いこなせば化けるよ」

「むぐぐ……主様に近付ける気がしないです」


 のんびりと会話をしながら、夜が更けていく。

体調不良により、しばらく投稿をお休みします。

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