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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
クローフィ・ルリジオン

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嫌がらせ

 数時間後、眠っていたヴェルディーゼが目を開く。

 すると目の前に心地良さそうに眠るユリがおり、ヴェルディーゼが驚いたように目を丸くした。

 それはもう幸せそうな顔をしているので、ヴェルディーゼが仕方無いなと言わんばかりに微笑みながらその髪を撫でる。


「すやあ……すぴー……んひ……」

「……いつから寝てたんだろう。すぐ寝ちゃったからわからないな……」


 ヴェルディーゼが寝付いたその瞬間からである。

 しかしそれを知らないヴェルディーゼは、もしかして寂しかったのだろうかと目を細める。

 そして、その瞳が徐々に不穏な色を持ち始め、髪を撫でていた手がユリの首筋へ向かう。

 そっと撫でればユリが小さく声を上げ、身を捩った。

 するりと、ヴェルディーゼが苦しくない程度にユリの首を掴む。


「……今絞めたら、ユリは……」


 そこでハッとし、ヴェルディーゼがユリから手を離して自分の頭に手を触れた。

 必要のないはずの呼吸を繰り返し、感情を落ち着かせてからこれ以上あんな考えをしないようにとヴェルディーゼが真面目にこれからの行動について考え始める。


「……全く。創世神が協力してくれればもう少し楽に進められるのに……」

「……ん、んん……あるじ、さまぁ……?」

「……おはよう」

「ぅ〜……? ……ぅんん。……すやぁ」

「あれ、また寝た……?」


 幸せそうな顔でユリが目を閉じるので、ヴェルディーゼが不思議そうにそう言った。

 そして、普段通りの思考を意識しつつその髪を撫でるとその口元が更に幸せそうに綻ぶ。

 ヴェルディーゼが少し考えてからユリの思考を覗き、ぺしりとその頭を叩いた。


「寝たふりしないで。別にそんなことしなくても撫でてほしいなら撫でてあげるよ」

「えへ……バレちゃいました。じゃあ撫でてください。……あの、どれくらい経ちました?」

「……数時間くらいかな? 2、3時間とかだと思うよ」

「そうですか……じゃあ大丈夫かな……いやでも……うーん。……あんまり寝てるとクーレちゃんに申し訳ないですからね。頭を使った上に休ませてくれなかったので少し疲れていますけど……まあ、いいです。……あ、それより。神がどうのこうの言ってませんでした? 目覚めたばかりで聞き取れませんでしたけど……」


 ユリがそう言うと、ヴェルディーゼが困ったように微笑んだ。

 そのまま無言でユリの頭を撫で、そこから魔力を浸透させる。

 目を丸くしたユリが自分の頭を撫でているヴェルディーゼの手に触れ、パチンと魔力を弾いた。

 へら、とヴェルディーゼが笑ってユリを見下ろす。


「あっ珍しい顔……ふひひ。……と、そうじゃなくて。今の感じは記憶の操作ですか? 聞かれると都合が悪い、ということ……?」

「……。……ごめん、なんか今不安定で。具体的に言うとユリに酷いことしたい」

「えぇ……痛いのは嫌ですよ。苦しいのも嫌ですからね! わかりましたか!」

「わかったところでしたいのは酷いことだからなぁ……より方向性が定まっちゃった気がする。……はぁ、とりあえず説明しちゃうね。創世神が非協力的で、凄くやりづらいんだ。魔法で補えるとはいえ、情報も自力で集めないといけない。……創世神は、最初から知ってるような基本情報しか教えてくれなかったんだよねぇ……はぁ。だから適当な位置に転移することにもなって、こうなってる。僕にとってはいつものことだけど……」

「な、なんでそんなに嫌われてるんですか……一応世界を救いに来てるんでしょう……?」


 ヴェルディーゼは普段から嫌われている、恨まれているとは言っていた。

 ユリもそれは覚えていたが、それでも基本情報しか与えないという嫌がらせに関しては理解できない。

 これまでのヴェルディーゼを見ていた感じでは、別に何か嫌われるようなことをしているわけではない。

 そもそもこの世界のために来ているのにその仕打ちは何なのだとユリが頰を膨らませる。


「プライドがあるんじゃないかな。……僕に頼らざるを得なくなったのはあっちのせいだけどね?」

「ほんとそうですよ。なんなんですかっ。なんなんですか! 主様を出動させておいて!」

「あるいは、知り合いを僕が殺したのかもしれないけど……僕は、必要の無い殺しはほとんどしないからなぁ。その場合、あっちが何かやらかしたことになるね」

「ひぇ、殺し……」

「仕事だからね。進んでやりたいとは思わないから、勘違いしないでね?」

「例え主様が殺人鬼の狂人でも、私は構いませんけど。……うーん、それにしても……主様の本気を出せたこともないですし、主様が仕事で殺された人は楽に死ねてそうですけど。何発も銃を撃たれるよりっあああセルフ藪蛇ぃ! うぐぅう……っ、主様……」


 自分で死んだ時のことを口にし、ユリがトラウマのせいで頭を抱え始めた。

 どうやら死んだ時の光景がフラッシュバックしてしまったらしい。

 震える手がヴェルディーゼの方へと伸ばされ、助けを求められるのでヴェルディーゼがユリに呆れたような視線を向けつつ抱き締めてその背中をさする。


「と、トラウマが……根深い……」

「わかってたのになんで自分で口にしちゃったの」

「えへぇ……怖いもの見たさと創世神様への不満です。辛い死に方をしなかっただけマシだと思うんですよ! まぁ知人を殺されたとも限りませんが!」

「そうだね。……まぁ、いいよ。いつものことだし。切り替えよう……よし。……そろそろ部屋出ようか、いつまでも動かないでいるのは良くない」

「えー……まぁ、はい。クーレちゃんともお話したいですし、わかりました。行きましょう、主様」


 少し不満そうにしつつもユリがそう言い、ヴェルディーゼの手を引いて部屋を出た。

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