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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
クローフィ・ルリジオン

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一般常識を学ぼう

 更に数日後、食料は潤沢に集まり、森に自生する食べられるものも把握し終え、2人の出発の時期が近付き始めていた。

 ユリは寂しそうだが、仕事で来ている以上は我儘を言うわけにも行かない。

 なので、準備はもちろん行いつつも、ユリは存分にクーレと仲良くしていた。

 ヴェルディーゼは優秀なので、ユリがちょっと遊んだところで何かが変わることはないのである。

 ユリとしてもあまり迷惑は掛けたくないので、流石に頼り過ぎないよう自重はしているが。


「さーてっ、今日はたくさん働きますよ〜! 主様はのんびりしてもいいですからね! 寂しいからって、私ばかり遊んで……ちょっとだけ頼り過ぎてしまいましたから」

「別にそんなことはないけど……まぁ、ユリがそう言うなら頑張ってもらおうかな」

「はい! 何をすればいいですか!? 食料は既に集め終えて、食べられるものも調べました。……働くとは言ったものの……仕事って、もうほとんどないですよね」

「そうだね。目標は達成してる、後は時期を見るだけ」

「思ってた何倍もやることが無いっ!? うう、ごめんなさい……」

「別にサボってたわけでもないし、黙認してたのは僕だよ。遊びすぎだって思うならとっくの昔に連れ出して働かせてる。雑用くらいしてくれないと、連れてきた意味も無いし……まぁ、癒やしにはなってるからそれはそれでいいんだけど……よく労ってくれてたしねぇ」


 申し訳無さそうに肩を落とすユリの頭を撫で、ヴェルディーゼが苦笑いした。

 遊んでばかりだったとユリは反省しているが、実際のところはそうでもないのである。

 ヴェルディーゼよりかはクーレと話をしたりと和やかに楽しんでいたが、クーレもだからこそ隠し事をしていたと打ち明けてくれたのだ。

 それもある意味成果であり、ユリが反省する理由などない。

 それに、ユリはしっかりと働いてくれていた。

 森に行けば迷うが、知識の蓄えが比較的多かったので森に出ればしっかり得た知識を活かして山菜の採集を行ったり、罠を仕掛けたりもしていたのだ。

 反省する必要など微塵もない。


「……それで……何をするんですか? するべきことが思い当たりません……」

「準備は終わってるからね。一般常識を学ぼう」

「……へ?」

「一般常識を学ぼう」

「き、聞き取れなかったわけじゃないですけど……一般常識くらい……」

「通貨とか、色々違うよ? 法律も、抵触しかねないものは学ばないとね。幸いクーレはこっちの特殊性については認知してる、探るつもりもない。するべきことを終わらせた今は絶好の機会なんだよ」


 言われてみれば当然だと、ユリが嫌そうに顔を顰めながらも学ぶ意味を理解する。

 異世界の通貨が円なわけもない。

 もちろん円の他にもドルなどの地球に存在するものであるわけもなく、更に言えば国ごとに違うのであればその辺りも必要に応じて覚えなければならないだろう。

 法律までも覚えなければならないのであれば、かなり勉強する必要がありそうだとユリが更に眉間に皺を寄せる。


「……勉強するくらいなら、いっぱい働きたいです……」

「あ、勉強嫌いなんだね。とはいえ必要なことだから、早く行くよ。本はクーレから借りておいたから」

「……もしかして、私が働くって言い出さなくても勉強させられてました?」

「もちろん。大丈夫、僕も一緒にやるからね。何でどう判断してるのか知らないけど、クーレ曰くもうしばらくは待機した方がいいらしいし。ゆっくりやろう」

「うぅあああああ……! いやぁあ……うー……神様パワーでどうにかできないんですかぁ。主様が教えてくださるのなら、多少はやる気も出るのに……」

「なら……僕と勉強会って言ったら?」

「……ん、んん〜……んんんんんん〜……! ……やる気は出ませんが嬉しいです!」

「出ないんだ」


 結局ユリのやる気は出せなかったものの、会話をして気を紛らわすことで駄々を捏ねる前に借りた部屋に移動することはできたのでヴェルディーゼがユリを部屋の中に入れてさっさと扉を閉めた。

 そこでユリがはたと足を止め、バッと振り向く。

 そして、唇を噛んでから涙目でヴェルディーゼを見上げてキッと睨み付けた。


「謀りましたね!? 駄々捏ねて少しでも勉強の時間を減らすつもりだったのに!!」

「……おかしいなぁ、これでも名門校に通ってたはず……頑張ったとは聞いてるし見てたけど、勉強嫌いでも入れるもの……?」

「う〜っ……こうなったら、爆速で終わらせて解放されるしかないですね……嫌だけど……長引くよりはいいですし。……本借りたんですよね、どれからやりますか。あ、内容別々の方がいいですか? 頭に叩き込むだけなら、別々でも良い気はしますけど」

「好きな方でいいよ」

「……続く気がしないので一緒にやります……比較的興味があるので、お金辺りからやってもいいですか?」

「うん、いいよ。じゃあこれだね。2人でやるなら……ほらユリ、膝に乗って。ふふ……んん。やっぱりいいね……」


 ヴェルディーゼがユリを膝の上に乗せ、満足げに笑みを浮かべた。

 ユリも嬉しそうに笑い、ぱたぱたと足を揺らす。

 それを見下ろしつつヴェルディーゼがユリの腰に腕を回して抱き締め、離れられないようにする。


「んふふー……と、嬉しく思いつつやっぱり怖いので離れてもいいですか!?」

「どうして?」

「腰! 腕! 回すなァ!」

「口調」

「……ま……まわ……わ……回すなです!!」

「強引に行ったな。いいけど」

「……腕は!?」

「解放なんてしないよ。逃げようとしてるし」

「ぎくっ……ば、バレてた……はぁい、やりまぁす……あの、あの、勉強から逃げようとしてるから抱き締めたんですよね? 逃げ出させないために終わるまで抱き締め続けるのはまだしも、終わったら解放してくれますよね?」

「……ベッド、広くて寝心地が良さそうだなぁ……ふふっ、ねぇ?」

「……く、クーレちゃん! クーレちゃん!? 助けてぇ!! 主様に襲われるぅー!!!!」


 ユリが叫ぶが、ヴェルディーゼの結界によってその声は届かず、助けが来ることはなかった。

 回すなの敬語はすぐに思い付いたけど、回さないでくださいだと却下されるのが目に見えてるからどうしても命令形が良かったユリちゃん。

 なお結果は変わらない。

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