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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
クローフィ・ルリジオン

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何もかもを話してくれたら

 数日後。

 籠を抱えたユリが森の中の巨大な屋敷に飛び込んだ。


「クーレちゃんクーレちゃんクーレちゃん! 見てくださいこれ! これ美味しそうじゃないですか!?」

「それ毒だよ、ユリ」

「ええ!? こんなに美味しそうなのに!? キノコ食べたかったのにぃ!」

「……あー……毒の処理さえしたら、確か食べられたような……図鑑に載ってたはず……ちょっと調べてみるね」

「えっ、やっ、私がやるので大丈夫ですよ! クーレちゃんはゆっくりしててください!」


 ユリが現在過ごしているのは、クーレの屋敷である。

 約束通り、ユリとヴェルディーゼは十分な量の食料が集まるまでの間、クーレの屋敷で生活していた。

 ちなみに、ヴェルディーゼは現在外で野生動物を狩っている。

 ユリは山菜採りを担当しており、現在は籠をいっぱいにして帰ってきたところである。


「クーレちゃんは病弱なんでしょう? きちんと安静にしてないと駄目ですよ。そりゃ、適度な運動は必要かもしれないですけど……あ、私の血いります?」

「……私は確かに吸血鬼だけど……血が一番好きなわけじゃないし、栄養的にも今は何も問題無いよ? 吸血鬼だって自己紹介した時から言ってるけど、吸血がどんな感じなのか気になってるだけなんじゃない?」

「そ、そーんなことないですよぉ〜……? お話じゃ人によって描写が違うから気になってるとか、そんなことは考えてないですしぃ……」

「……残念ながら、私はお願いされてもやらないよ。後が怖そうだし」

「後……?」


 ユリが首を傾げると、クーレはにこりと笑みを浮かべてくるりとユリに背中を向けた。

 そのまま階段を上っていくクーレにユリが目を丸くしていると、クーレが肩越しにユリを見て無言のまま付いてくるように促す。

 するとユリはおろおろと正面玄関とクーレを何度も見て、申し訳無さそうに言った。


「あの、クーレちゃん……ちょっとだけ、後回しにしてもいいですか……? まだ、主様が……」

「……あ。確かにそうだね、普段は一緒に帰ってきてるのに……あれ? ユリって方向音痴だよね……一人で帰ってこれたの? 成長したね……」

「く、クーレちゃんっ……! うー……いっつも迷ってて、主様やクーレちゃんに誘導されてたのは事実ですけど……! こ、今回も主様が木に印を付けて帰れるようにしてくれただけですけどっ……! ……主様、狩りは終わってるんですけど……印を回収してくれているんです。私のためのものですから、私だけがクーレちゃんと仲良くお話するのも申し訳なくて……」

「そうだったんだ。……急ぐようなことじゃないし……いいかな。私について、もう少し詳しく話そうと思ってたんだ。ほら……私、一緒に暮らしてくれる人が来てくれたのは嬉しいって言ったでしょ? でも……警戒もしてて。でも、この人達なら大丈夫かなって思ったから」


 クーレがそう言うと、ユリが階段を駆け上がってクーレを抱き締めた。

 そして、その場でぴょんぴょんと跳ねながら感極まった様子で叫ぶ。


「クーレちゃん〜〜〜! 嬉しいです! 大好きですよ〜! 親友の次に好きです! つまり一番です!」

「親友が一番好きなの? ヴェルディーゼは?」

「主様も一番です! お父さんとお母さんも一番です! そして! 親友も大好きです! 何もかもを話してくれたクーレちゃんは一番になるかもしれません!!」

「ふふっ、一番の人が多いね。……あ、ヴェルディーゼ、帰ってきたかも」


 クーレがそう言うと、ユリがぴょんっともう一度跳ねて耳を澄ませた。

 そしてすぐにぱぁっと笑顔を浮かべると、階段を駆け下りて正面玄関に向かい、腕を広げて待機する。

 数秒ほど待つと、ガチャリと扉が開いた。


「ただいま――あ」

「おかえりなさい主様! 愛してます!!」


 ユリがそう叫びながらヴェルディーゼに突撃すると、ヴェルディーゼが笑みを浮かべながら軽々とユリを受け止めた。

 そして、そっとその髪を撫でながら言う。


「良かった、ちゃんと帰れたんだね。印を回収しながら追ってたけど……途中でつい見逃しちゃって、心配してたんだ」

「もう! 主様まで私の方向音痴のことについて……うぅ……」

「ヴェルディーゼは1日も掛からずに覚えたのに、ユリはまだ自室も1人で辿り着けるか怪しいくせに?」

「ああ、クーレ。この肉、どうする? 数日じゃ使い切れないだろうし……保存食にする?」

「あ、そうだね。後で作業するけど……今はいつものところで大丈夫。いつもありがとう」

「いや。気にしなくていいよ、力仕事は任せて。病弱なんでしょ」

「……あはは……ここにいれば大丈夫なんだけどね」


 クーレがそう言って肩を竦めるが、ヴェルディーゼはそれでもクーレに気遣うような視線を向けた。

 ヴェルディーゼがそうしていると、抱えられたままのユリがむっとして両手でその頰を包んでくる。

 驚いたヴェルディーゼが目を丸くしていると、ユリは拗ねた様子で呟いた。


「病弱なクーレちゃんを気遣うのはわかるんですけど……私は主様の恋人なのに、あんまり構われてない気がします……もっと一緒にいたいぃ……クーレちゃんも一緒でいいですからぁ……」

「……あれ、そういえば敬語が……ああ、いや。……そっか。まぁいいか……ん、構われたいなら一緒に運ぼう。死体は嫌いでも、生肉は見れるね?」

「はいっ! ……あ、でも、クーレちゃんが話があるって……」

「さっきも言ったけど、急ぐような話じゃないよ。そんなに長くもならないから、行ってきて。終わったら私の部屋に来てくれる? そこで話すから」

「……はい! ごめんなさい、クーレちゃん。でもやっぱり、私は主様が大好きなので……!!」

「知ってるから、満足するまで存分にね。私は……読書でもしてようかなぁ」

「……クーレちゃんも大好きです!」


 満足するまで甘えてくればいいと言ってくれるクーレにユリが一度ヴェルディーゼから降りて抱きつき、ヴェルディーゼとともに歩いていった。

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