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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
再会の世界

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ヴェルディーゼの甘々尋問

 するりと、長い指がそっとユリの指を撫でる。

 それにぴくりと反応し、顔を真っ赤にするユリは、涙目でヴェルディーゼのことを見上げていた。


「ほら、早く。僕に……ユリの大好きな主様に、全部話して?」

「ひ、ぅ……こ、声が甘いよぉ……」

「うん。わざとやってる。普段はしないようなことした方が、ユリの心が揺らぐから」

「……わ、わかりましたから……そんな声で話さないで……手も離してください……」

「話してくれたらね」

「……な、にから……話せば……?」

「それはもちろん、皇帝のこと。求愛されてるんでしょ。知ってるよ、それくらいは把握してるし、悠莉からも聞いた。ただ、それにユリがどんな対応をしてるかは知らない。……だから、教えて?」


 あくまでも優しく、ヴェルディーゼは促す。

 しかし、その目は笑っておらず、紅い瞳には強い嫉妬が浮かんでいた。


「……どんな、対応って……主様がいるんですから……お断りさせていただいてます、けど……?」

「へぇ。……お断りねぇ……どんな風に?」

「えっと……はっきり恋人がいるって伝えました。あと……その……結構、ピリピリしてたので。……耳腐ってんのか、とは言いかけました……ハイ」

「え……そんな失礼な言動して大丈夫だった? 処罰とか……処罰してたら殺すけど……」

「まぁなんか大丈夫そうでした。嫉妬が激しすぎて行動が過激になってますよ主様」

「ユリだって……誰かが僕に失礼な真似したら、怒るでしょ?」

「怒ると殺すは別物ですよ。私も侮辱されたら我慢できませんけど。……あ、処罰でもアウトな気がしてきました。主様の感情は正当なのでは……??」


 若干冷静になるユリを見下ろし、ヴェルディーゼが目を細めた。

 少し混乱しているような気もするが、少なくとも照れてはいない。

 ふむ、と吐息のような声を零し、ヴェルディーゼはそっと猫を撫でるようにユリの顎の下をくすぐる。

 ユリが再び照れて固まったので、ヴェルディーゼは満足そうに微笑んだ。


「……対応については……特に不満点は無いかな。うん。異性に目付けられてる時点で、僕としては不満でしょうがないけど」

「あ、あのぉ……なんでわざわざ私を照れさせるんですかぁぁ……?」

「ふふっ。……ユリはただ、僕を見て、僕の行動にだけ反応していればいい。……そう思ってるんだけど、それは難しいでしょ? だから……僕が満足できるまで、ユリには僕の望む反応をしてもらおうと思って。ねぇ、そんな顔、ユリは僕以外じゃしないよね」

「し、しませんから、これはやめてください……恥ずかしい……」

「さて……次は何を聞こうかな。あ〜……ああ、そうだ。なんかシルヴィアに渡したよね。何渡したの? なんとなく魔力は感じたけど」


 首を傾げてヴェルディーゼが尋ねると、むっとユリが唇を噤んだ。

 きゅ、と引き結ばれた唇を眺め、ヴェルディーゼがそっと指でそれをなぞる。

 ヴェルディーゼがユリを抱き締めて距離を詰めれば、ユリは身体を小さくして俯いた。

 完全に遊ばれてるな、なんてことを思いつつ、ユリはそわそわと視線をあちこちに巡らせる。


「……話してくれないの?」

「う……。……お、怒らない、ですか? 心配で、渡しちゃったんですけど……ちょっと、許可なくやるのは……あれだったかなぁ……って」

「さぁねぇ、内容による。でも、理不尽には怒らないよ。……なにしたの?」

「その……シルヴィアに……ちょっとした、餞別みたいな感じで。……深淵をぎゅっと固めたものを渡しました……えっと、シルヴィアは凄く幸運らしいですし……近くで深淵がばら撒かれても、生き残れるんじゃないかと思って……万が一の時のために……き、危険性は説明したんですけど! ……その……この世界の人に、神様の魔法を渡すのは……不味い、でしょうか……?」

「……なるほど。シルヴィアに深淵を圧縮したものを渡したんだね? あくまでも、シルヴィアの身の安全のために」


 ヴェルディーゼがそう確認すると、ユリがこくこくと頷いた。

 軽く目を細めて、ヴェルディーゼは少しの間思案する。

 その行為は、進んでやっていいことではない。

 しかしそれは、場合にもよるものだ。

 王国の城はほとんど魔物の巣窟に成り果てており、そして、民たちのために王国へと戻ったシルヴィアの身の安全は、確かに危ぶまれる。

 その呼び名の変化からして、彼女たちが友人になったことも窺える。

 そんな事情も考慮し、ヴェルディーゼは一度目を閉じてから結論を出した。


「……今回は咎めない。ユリの気持ちは、理解できるものだからね。そして、シルヴィアを生かすという点においては良い判断でもある。世界を救ったらシルヴィアに会って、使っていなければこっちで処分しよう。今はそれも僕の管理下に置けるから、大丈夫。……僕たちがいなくなった状態でそれがこの世界にあっちゃいけないけど。神の魔法……特に深淵は、人の手には余るから。……今度からは、なるべくそういうことはしないように」

「はい……あ、あの、世界への影響とか……その、私……その時、なんにも考えられてなくて……今日、冷静になってからやっと……」

「言ったでしょ、僕の管理下に置いておけるって。任せて。ちゃんと細工はしてあるみたいだし……何も問題なんてないよ。報告してくれてありがとう。……さてと……あんまりユリをいじめすぎちゃいけないし、まだ足りないけど一旦この辺りで切り上げようか。改めて……強引な真似してごめんね、ユリ」

「……そんなに何回も謝らなくても大丈夫ですよ。囲まれてるってわかって、すぐに私たちを安全なところへ送る判断をした主様、格好良かったですし……えへへ」


 はにかむユリにヴェルディーゼは眩しそうに目を細めると、優しくその頭を撫でた。

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