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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
再会の世界

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カマ掛け

 それから。

 悠莉と龍也がギルドに向かうと、ユリはヴェルディーゼと手を繋ぎながらも、必死に目を逸らしていた。

 まだ恥ずかしがっているらしい。

 完全にやりすぎたな、なんてことを想いつつ、ヴェルディーゼはユリの手を引いて引き寄せる。


「へ、ぅあ」

「二人きりだね。ふふ……嬉しいなぁ」

「い、いや……二人きりでは、無いのでは……人、たくさんいますよ」

「見えてないから実質二人きり。大丈夫大丈夫」

「全然大丈夫じゃないぃ……あ、あの、まだ恥ずかしいので離してください……」

「だから引き寄せたんだけど。大丈夫、何もしないよ。ただ近くにいてほしいだけ。ね?」

「ね、じゃないですよぉ……」


 捕獲して離してくれないヴェルディーゼにユリがぷるぷると震え、ぎゅっと目を閉じる。

 ――閉じ込めてやろうか、と不穏な考えを抱きつつ、ヴェルディーゼはユリを抱き締めたままその場で二人が戻ってくるのを待った。

 しばらくすると、悠莉と龍也が戻ってくる。

 想定よりも長く時間が掛かっていた。

 友達の行方を聞くだけならば、ここまでは掛からないはずだが、なんてことを思いつつ、ヴェルディーゼがユリを抱えたまま二人の方へ近付いていく。


「おかえり。とりあえず街から出る?」

「うん、そうしよう。ちょっと時間が掛かっちゃって、ごめんね。出たら説明するから」

「急ごう。話さないといけないことがあるんだ」

「わかった。それなら、ユリはこのまま抱えていこうか」

「えっ」


 ヴェルディーゼがそう言い、二人に先導されながら急いで街を出た。

 そこからもうしばらく歩いて、人の通りが少なくなってくると、ようやく三人は足を止める。


「うん……この辺りでいいかな。ヴェルディーゼさん、結莉を降ろしてあげて?」

「……ああ、うん。そうだね、名残惜しいけど」

「惜しまないでください……や、やっと解放された。こほんっ……それで、ゆうちゃん、リューくん。何があったんですか? 話があるって言ってましたけど……」

「うん……えっと、どこから説明したらいいかな……」

「簡潔に言うと、ユリさんの推測が合ってたかもしれないんだ!」


 困った顔をする悠莉に代わり、龍也が先ずそう告げた。

 ユリの推測が合っていた――つまりは、この国には裏切者がいるかもしれない。

 そんな可能性が、信憑性を帯びてきたらしい。


「そ、そうなの。えっと……私たちね、王城の友達に会おうと思ってたんだ。だけど、その子は凄く活動的だから、先に居場所について質問して来たんだけど……今、王城はきな臭いことになってるって。その子にも、簡単には会えないかもって……言われたんだ」

「……龍也と悠莉の立場でも?」

「ああ……詳しいことは聞けなかったんだが、そうらしい。今、王城は立ち入りが厳しく制限されてるらしいんだ。勇者と賢者でも、入れるかどうかはわからない。ただ……様子を見る限りじゃ、厳しそうだって」


 ふむ、とヴェルディーゼが軽く目を伏せた。

 裏切りに関係あるかどうかは置いておいて、少なくとも何かがあったのは確実。

 二人の友人とやらに城の外で会えればいいのだが、偶然出会いでもしない限りそれも厳しそうだ。

 そもそも、相手にコンタクトを取る手段そのものが乏しい。


「……二人とも。確認しておきたいんだけど……友人とやらは、今の城に確実に出入りできる人物?」

「うん、そうだよ。絶対お城にいる。……今の状況で外に出ることができてるのか、わからないけど」

「……。……何のために隠してるのか知らないけど、王族だよね?」

「え……な、なんでバレたんだ!?」

「だって今の王城に出入りできて、外出できてるのかどうかもわからないんでしょ。で、悠莉と龍也が親しいって言えるくらい会話の機会があった人物。世界を救う鍵となる重要人物に、城の人間とはいえ世話係とかの立場じゃそう簡単には話しかけられない。できたとしても、バレたら……解雇か、あるいは何らかの罰が下るか……僕には知る由もないけど。それから、その程度の人間が、二人に頼りにされるほど城の情報に詳しくなれるのか……」


 ヴェルディーゼはそう言って肩を竦め、二人を見た。

 二人は苦笑いしていて、それを否定するつもりが無いことがわかる。

 まぁ、龍也が反応してしまった時点で、誤魔化すつもりなど無かったはずだが。


「うん……あの子は王族だよ。結構自由な立場なんだけど、優秀だから公務にもそれなりに関わっててね。城の色んなことを知ってた。活動的で、結構街にも出たりしてたんだけど……だからこそ、今は閉じ込められたりとかしちゃってるかも。……やんちゃなところもあるから」

「……ふぅん……若干カマ掛けてたけど、やっぱりそうなんだね」


 悠莉の説明にヴェルディーゼが悪戯っぽく笑いながら言うと、二人が目を丸くした。

 それらしいことをあんなにも並べ立てていたのに、カマをかけていたらしい。

 ユリも少し驚いた顔をすると、そっとその頬を摘む。


「主様。ちょっとだけ、性格悪いですよ?」

「ごめんね。……カマ掛けてたって言っても、確信が持てなかっただけだから。僕はただ、他の世界に基づいた常識から推測しただけ。この世界の常識が違えば、もちろんそうじゃない可能性もあった。全部推測だったから、確信なんてものは無かったんだよ」

「それなら、全部わかってますみたいな顔で言わなくても……私たちはただ、あの子が王族の身分を良くは思ってなかったから、言っていいのか悩んでただけなんだよ。……まぁ……だからって、説明せずにいた私たちも私たちなんだけど。ごめんね」

「それは別にいいけど。じゃあ、とりあえず歩きながらどうその友人に会うのか、作戦会議しようか」


 ヴェルディーゼがそう言い、軽く息を吐き出した。

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