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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
再会の世界

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街と変装

 それから数日が経ち。

 特訓を繰り返しながら移動した一行は、カレータムの街へと辿り着いていた。


「ゆうちゃんたちと会って一番最初に行くのがここだとは思いませんでした……姿を隠したいなら不都合な気が……」

「ごめんね。すぐに出るんだけど、ちょっとギルドで友達がどこに行ったか知りたくて。ちょっと別行動しよっか?」

「……あー……先にギルド行ってもいい? 確か、冒険者登録の維持には魔物を討伐した証が必要なんだよね。道中で倒したのを提出しておきたい。三人で軽く近くを見て回っておいで」

「あっ、そっか! 登録してあるんだもんね。いいよ、行ってきて。……先に行きたいのは、何か理由があるの?」

「一応……ユリは悠莉の知り合いかもってことまでは、知られてるから。問い詰められたくない……」


 ヴェルディーゼがそう答えると、悠莉が苦笑いした。

 そして頷くと、申し訳なさそうに目を逸らしながら言う。


「ご、ごめんね。どうしても会いたかったから……」

「怒ってはない。謝らなくていいよ。ユリ、こっちおいで。もうちょっと変装しておこう」

「え? はい……」


 一応、街に入るのでユリは以前とは違う、黒いローブを纏い、フードを被っていたのだが、それでは足りないらしくヴェルディーゼがユリを呼び寄せた。

 近付いてきたユリの頬を撫でると、ヴェルディーゼは意味ありげに微笑む。

 ユリの黄金色の瞳を捉えたまま、ヴェルディーゼが軽く屈んだ。


「……あれ? あの……顔近っ、んぅ!?」

「……ふふっ。無理をしない範囲で、声を変えろ。それから気配も消して、やむを得ない場合を除いてなるべく悠莉と龍也に会話を任せること。二人との会話もなるべく頷いたりで行うように。これらは全部命令だからね。わかった?」

「あ、ああああっ……あ、あっ……!? あああ……!?」

「ああ……からかいすぎたかな。言語を失っちゃった。まぁ大丈夫、ユリは僕の眷属だから。頭に入ってなくても逆らえないよ」


 ユリが固まって〝あ〟しか言えなくなると、ヴェルディーゼが首を傾げながらそんなことを呟いた。

 そして、顔を真っ赤にしているユリの頬を撫で、ギルドの方を見る。

 どうやら移動しようとしているらしいヴェルディーゼに、そうはさせまいと悠莉がその袖を掴む。


「……ヴェルディーゼさん? 私は二人が恋仲なことをもう受け入れてるけど、あんまり人前でそういうことするの、良くないと思うな」

「そっ、しょっ、そっそうですよ! ななな何急に……きっ……き、す……」


 ユリが挙動不審になりながらも抗議しようとして、自分で口走った言葉に顔を赤くし、尻すぼみになっていく。

 とても唐突にキスをされたユリは唇を押さえ、小刻みに震えながらヴェルディーゼを見上げる。

 からかわれることはあるとはいえ、それも二人きりの場合だけで、人前でされることはほとんど無かったはずだが。


「……。……ユリ」

「ひゃぃ!?」

「ふふ。からかい目的も、あるにはあるんだけど。何より、視線が集まってるから……格好が理由だとしても、許せなくて。ごめんね」

「あ……謝らなくてもいいんですけど。ただ……ゆ、ゆうちゃんたちの前では、ちょっと」

「……可愛すぎるの、どうにかならないかな……はぁ……行ってくるよ。悠莉、それから龍也も……ごめん。流石に自制するべきだった。今後は自重するのは当然として、嫌なら記憶消すなりするから」


 ヴェルディーゼがそう言い去っていくと、ユリが悠莉と龍也の方を見た。

 そして、ぺこりと頭を下げて言う。


「主様がすみません……街を離れたら、改めて私からも言っておきます。……なるべく喋らないよう言われていることですし、もう黙りますね。ちゃんと付いていきますから」

「あっ、うん。と言っても……行くところとか無いよね。買い出しするものって何かあったかな……」

「うーん……あ、ユリさん、調味料、少なくなってきたものとかあるか? あれば買いに行こう。それか、欲しいものとか」


 龍也の言葉にユリがこくりと頷くと、悠莉がそっかと呟いて少し考え込んだ。

 そして、ユリの手を引いてお店へ向かう。


「とりあえず、前に調味料を買ったお店に行くね。近くにあって、そんなに時間は掛からないと思うから、そしたらヴェルディーゼさんを迎えに行こう」

「お、おう。……変装っていってたけど……何したんだろうな? 声を変えて喋るように言うのって、変装なのか……?」

「さぁ……街から出たら聞いてみよっか。あ、着いたよ。何が欲しいの? 買ってあげる」


 ユリが頷いて調味料に駆け寄り、瓶を二つほど悠莉に渡した。

 塩と、そして何かのスパイスのようだ。

 人並みに料理はするが、スパイスなどはポピュラーなもの以外にはあまり知らない悠莉は首を傾げつつ、スムーズにそれを購入し、スキルで収納する。

 そうしてギルドの方へ戻ると、ヴェルディーゼが戻ってきた。


「ただいま。どこか行った?」

「うん、調味料買ったんだ。私達、もう行ってもいい? ユリが大変そうだから、早く行って街から出たいんだ」

「ああ、うん。行ってらっしゃい」

「……ヴェルディーゼさんは、変装しなくて良かったのか? 服は変えてるけど……」

「悠莉よりも先だから、戻ってきても違和感は無いよ。僕は話さなければ気配遮断しておけばどうとでもなるし。ほら、早く行っておいでよ」


 ヴェルディーゼが肩を竦め、そう言って悠莉と龍也を見送った。

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