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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
再会の世界

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話してほしいこと

 気配が近付いてくる。

 的確にこちらへと近付いてきているので、あちらはこちらのことを把握しているのだろう。

 は、とユリが浅く息を吐き出して、鎌を握り締めた。


「殺らなきゃ殺られる、殺らなきゃ殺られる、殺らなきゃ殺られる……ふぅ、よぉし……」


 ダン、と地面を踏み締めてユリが駆け出し、魔族に向かって鎌を振った。

 首元に向かって正確に刃が振るわれ、血飛沫が噴き上がるのをユリが鎌を変形させて敵に深淵を纏わせることで止め、ほっと息を吐き出した。


「死んでます、かぁ……? 攻撃してこない……?」


 そろりとユリが深淵を突付いて確認し、視線を彷徨わせた。

 とりあえず、二人を守ることには成功したらしい。

 しかし、これで良かったのかと不安そうにユリがヴェルディーゼの姿を探す。


「お疲れ様、早かったね」

「ひぅっ……!? あ、あるじ、さま……うう……早かったね、じゃないですよ。絶対わざとですよねっ。フィレジア様になるべくさせるなって怒られたくせにぃ……」

「まぁうん……大したのじゃなかったし……あ、はい水。持ってきたよ」


 ヴェルディーゼがそう言って龍也に水を差し出し、ユリの頭を撫でた。

 そして、深淵の塊を見やると、そっとそれに触れる。


「龍也と悠莉は、あんまり慣れてないだろうから見なくていいよ」

「わ、私は見なきゃダメですか……!?」

「そういうわけじゃないけど……ああ、やっぱり……これ、魔族じゃないんだな」

「人じゃないんですか!? だからやらせたんですか!?」

「敵意とかが無くてもやらなきゃいけない場面もあるだろうし。ちゃんとは確認してなかったけど、人型の魔物なら丁度いいかなって」

「そ、それは……」

「人はともかく……僕の立場上、ユリだって神には狙われるからね。僕よりは弱くて、まだ戦いにはあんまり慣れてなくて、何より僕の一番大切な存在だから。僕は必要なことをさせるのに躊躇ったりはしないよ」


 はい、とユリが少し落ち込んだ声で返事をした。

 そして、目を逸らしていた魔族――もとい人型の魔物の死骸へと視線を移す。

 無残にも首を斬られた死体。

 自分がやったのか、とユリが眉を寄せる。

 怒ってやったことはあるので、多少は慣れているが、それでも直視するのは辛かった。


「……うぅ……ご、ごめんなさい……せめて、痛みは感じずに……終わってくれてたらいいんですけど」

「……さて。とりあえず野宿の準備しようか。悠莉と龍也は休んでていいよ、二人でやる。あ、でも必要なものだけ出してもらっていいかな?」

「うん、もちろん! 〝スキル発動、賢者の詠唱・〈保管庫〉〟!」


 ユリの頭を撫でて落ち着かせながらヴェルディーゼが悠莉に必要なものを出してもらい、準備を始めた。

 ユリもヴェルディーゼにくっつきながらやれることをやり、いそいそと準備を進める。


「ユリ、落ち着いた? ごめんね」

「……へっ……? あ、いえ……。……いえ、やっぱりまだ……」

「はいはい、それは甘えたいだけでしょ。後で甘やかしてあげるから、今は準備。……ああ、そうだ。話してもらいたいことがあるから、心の準備もしておいてね」

「あ、バレた……って、話してもらいたいこと……? な、なんかありましたっけ」

「わかってるくせに誤魔化さない。ヒドラと戦う直前くらいに、悠莉と龍也に何か言いかけてやめたでしょ。後で話すって言ったんだから、話さないとダメ」


 すっとユリが目を逸らした。

 あの時、ユリはとあることに気が付いて、だが戦う直前だったから集中を乱さないようにと話すのをやめた。

 そのまま、なんだかんだでタイミングを失ってしまって――積極的には話せないことだったから、丁度いいからと言わなかったのもあるが――まだ、何も話していなかった。

 とても、言いづらいことなのだ。

 確定でもなく、詳しいこともわからないから、話していいのかどうかもわからなかった。


「……なんで主様はその会話知ってるんですかぁ。遠くにいたのに……」

「遠くにいても聞こえるし、そういうのは僕だって気付くよ」

「それでも私に話させるんですか?」

「うん。……そういうの、慣れておいてほしいから……心底嫌だけど、仕事が二つ重なったら、ユリに片方を任せるつもりでいるからね」

「わ、私が、お手伝いじゃなくて一つの世界を……? そんなこと考えてたんですか……」

「ルスディウナさえ殺……じゃなくて、倒したらユリは大抵の存在から自分の身を守るくらいのことはできるようになるからね。本当に、心っ底、嫌だけど。やれたのにどうしてやらなかったって過激派が集団になって襲ってくる方がよっぽど危ないし面倒……」

「なんですかそれ」


 顔を顰めながらヴェルディーゼが言うので、ユリが苦笑いしながらその頭を撫でた。

 よくわからないが、とにかく面倒な集団がいるらしい。

 とりあえず、ヴェルディーゼはユリの手料理が好きなので料理でもすれば落ち着くかとユリが火を起こしたりと準備に入る。


「ユリ、今日何作るの?」

「えっと〜、お肉を煮ます! 今日は時間が早めなので!」

「おお……美味しいの?」

「美味しいので待っててくださいね〜」


 途端に上機嫌になったヴェルディーゼにニコニコと微笑み、ユリは料理の準備を進めた。

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