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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
再会の世界

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不意打ち勝利

 初手から攻撃を仕掛けてきたヴェルディーゼを視界に捉え、ユリがギリギリで跳ね上がる。

 可能な限り、防御目的でも攻撃を受けてはいけない。

 ただし、空中も無防備だ。

 即座にヴェルディーゼが付いてきて、ユリの方へ手を伸ばしてくる。


「真顔なの怖いんですよぉっ」


 と、そんなことを叫びつつユリがヴェルディーゼを蹴って地面へ戻った。

 焦り、早くなる呼吸をなんとか制御しながらユリが着地直後のヴェルディーゼへと鎌を振るう。

 いつものヴェルディーゼならここで無理矢理に鎌を受け止めて――と、そこまで考えたところで、今回は戦い方を変えると言っていたことを思い出す。


「ぁ……っ」


 ヴェルディーゼにサッと回避され、ユリが一瞬だけ姿勢を崩した。

 そんな大きな隙を見逃してくれるわけもなく、足を掛けられてユリが転び、背中を強打する。

 更に手から抜けてしまったらしい鎌をさらりと回収し、ヴェルディーゼがユリに鎌を突きつけた。


「はい、終わり。……うーん……」

「背中痛いっ、めっちゃ痛いっ。強打したっ」

「そりゃ手付かなきゃ痛いでしょ。まだやれる?」

「……や、やれなくは、ないですけど……ちょっと休憩……ほら、評価とか、ね? 話してくれてる間にちょっと休みますから」

「まだやれる?」

「拒否権が無い……!?」

「…………はぁ。まぁ、そうだね。判断ミスが目立ってたかな。唯一良かったのは蹴って地面に戻ったところ。やらなければこっちで地面に叩き戻すつもりだったから。以上、他には言う事なし。悪い意味で。特筆すべきところがない」

「ひぃぃ……地面に叩き戻すぅ……? 骨折れちゃう……」

「神は頑丈だよ。たぶん今のでも痣だってできないよ」


 ニコニコと微笑みながらヴェルディーゼが言うので、ユリが頬を引き攣らせた。

 怪我はさせないが痛い思いはする、とは言っていたが、人間だと怪我をするが神なら大丈夫、というラインのことはするとは思っていなかったので。


「主様……鬼畜……」

「そっか。ほら立って。まだ時間も体力もあるよ」

「ギリギリまで私の体力削るつもりですね!? 嫌だよ〜……ううぅ。はぁい、行きます……」

「次はもっと攻撃してね。次、先手は譲ろうか。好きなタイミングでいいよ」


 ヴェルディーゼがそう言うと、ユリが頷いた。

 そして、息を吐き出すと、ヴェルディーゼをじっと見つめて、踏み込む。

 鎌を構えて攻撃態勢に入り、そのまま――蹴りを放つ。

 やはり、正面突破では無理だ。

 なら、不意打ちでもなんでも使って、ヴェルディーゼの意表を突かなければならない。


「……ふふ。なるほどね……」

「あぅ!?」


 ヴェルディーゼがユリの足を掴んで投げ飛ばした。

 飛ばされた先でユリが即座に立ち上がり、果敢にヴェルディーゼへと立ち向かっていく。

 速度を乗せてユリが駆けていき、ヴェルディーゼの手前で速度を緩めて次は斬撃を放つ。

 ヴェルディーゼが避けたその先でユリが蹴りを放つ、と見せかけてまた鎌を振るってみたが、持ち手を掴まれてしまった。


「ううぅ……っ」

「そう、まだ武器を手放さないよね」

「そぉ、ですよぉ……っ、バレてますよね……!」

「やってごらん」

「……ッ」


 ユリがパッと手を離すと、引っ張られていた鎌は、まだ力を込めていたままだったヴェルディーゼの腕ごとその身体にぶつかった。

 即座にユリがヴェルディーゼに飛び付き、足にしがみつく。


「えっ」

「なんでもやってやりますよオラァ〜〜〜!!」

「わっ、ちょっと!」


 ユリが無理矢理体重を掛けて押し込み、ヴェルディーゼを地面に倒した。

 そのままヴェルディーゼに抱きつく形で拘束すると、目を輝かせて言う。


「これ私の勝ちですよね! そうですよね!? 倒してますし!」

「……」

「あ、主様? あの……何か言ってください。ま、まさか怒らせ……」

「……はぁ〜……」

「ひぅ!?」

「……怒らないよ。そうだね、今回はユリの勝ち……なんだけど……。……」


 ヴェルディーゼが腕で目を覆いつつ言い、途中で口を閉ざした。

 ユリが首を傾げてヴェルディーゼを眺めていると、その耳が若干赤くなっていることに気付く。


「……あれ? もしかして照れてるんですか……?」

「照れてる……というか。……なんか……人前でこんな風に情熱的に抱きつかれると思ってなかったし……ちゃんと意表を突いてきたし……なんというか、もう、色んな感情が混ざり合って、なんか恥ずかしくなってる……ユリが可愛すぎるのもそうだし……」

「じょ、情熱的っ……かわ……ぅぅぅ〜……」

「これで……えっと……何回目だったかな。ユリが勝ったのが……」

「……五回目くらい……? です……」

「ん、そっか。おめでとう、よく頑張ったね」


 ヴェルディーゼがそう言ってユリの頭を撫で、悠莉と龍也を見た。

 悠莉は優しい表情でユリのことを見つめており、龍也はどんな顔をしていいのかわからない様子で目を逸らしている。


「……そろそろ……龍也は行けるよね。悠莉も、治癒くらいはできるようになったかな」

「あ、ああ。俺は大丈夫だ」

「私も、ちょっとした怪我なら治せると思う」

「よし。じゃあユリは見学で、次は龍也。こっち来て、剣もしっかり構えてね」


 ヴェルディーゼが剣を取り出しつつそう言い、龍也に指示を出した。

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