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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
再会の世界

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特訓開始

 それから一時間ほどして。

 一行はヒドラの死骸を回収し、開けたところまで来ていた。

 悠莉はまだ長距離を歩くのは辛いため、龍也に運ばれている。


「……主様、主様」


 ユリが運ばれている悠莉の顔を見つつ、ヴェルディーゼの袖を引っ張ってこそこそと声をかけた。

 ヴェルディーゼが振り向くと、ユリは目を輝かせながら言う。


「二人、なんかいい感じじゃないですか? 会話とかはないけど、なんか、こう……」

「応援してるんだね。悠莉は親友でしょ」

「私は傍に居られません。リューくんはゆうちゃんの支えになってくれるかもしれないじゃないですか」

「ふぅん。……この辺りで良い感じなんだけど、声掛けない方がいいの?」

「……それならしょうがないですね。えっと……ゆうちゃんが休める場所……」

「大きめの木があるな。ユリ、ちょっと離れてて」


 ヴェルディーゼが急にそう言い出すので、ユリが首を傾げながら離れた。

 するとヴェルディーゼは、いつの間にか黒い剣を手にし、軽く横薙ぎに振るう。

 木はスパンッと切れて、地面に激突――するよりも前に、空間が開いてそこに収納されていった。

 唐突なことにユリがぽかんとし、困惑しながらヴェルディーゼを見る。


「……え、あの……」

「はい、悠莉はここに。無いよりマシだから。今日はなるべく動かない方がいいよ」

「……あ、ありがとう……?」

「あ、主様? 主様?? もしかしてヒドラ倒して戻ってきた時にあった謎の切り株、主様がやったやつですか!?」

「うん、ずっと立ってるのもな〜って。ユリも座りたい? でも、たまたまここに木があっただけで……」

「そもそも木探してましたよね?」

「そ、そうなの? 全然気付かなかった……ありがとう、ヴェルディーゼさん」

「……あー……はぁ。……だから言わなかったのに。まぁ、お礼のために無理に動いたりしないならそれでいいんだけど……」


 ヴェルディーゼが困った顔でそう言い、ちらりとユリを見た。

 とりあえず、悠莉を休ませられる場所は確保した。

 まだまだ明るいので、特訓をしたいところだが龍也はそこそこ疲れている。


「とりあえず、ユリ」

「はい?」

「魔法使ってほしくないし、武器だけで戦う練習しようか」

「え゛……わ、私ですか? ほんとに? なんで……?」

「そこそこ動いてたのに余裕そうだから。二人はそんなに余裕無さそうだし、もう少しくらい休んでいてもらわないと」

「や、あの……ちょっと予想外というか……や、やらなきゃダメですか……?」

「うん、ダメ」


 ヴェルディーゼに笑顔でダメと言われてしまい、ユリが肩を落とした。

 そして、渋々鎌を持ってヴェルディーゼの前に立ち、あうあうと意味のない呻き声を漏らす。

 相手はヴェルディーゼである、ボコボコにされるのは間違いない。

 普段の模擬戦だって、いかに長く耐え続けられるかがメインとなってくるのだから。

 もちろん、あくまでも模擬戦なので攻撃を怠ると簡単に転がされて怒られるが。


「ほら、ちゃんと構えて。背中丸まってるよ」

「た、楽しそうですね……ああぁ〜……情けないとこ見られるぅ……」

「今現在見せてるよね。ほら、早く」

「ま、待ってください、あと三秒だけ……ふぅ〜。……よし、やります! 絶対ボコボコにされるけどぉっ」

「治癒できないし、怪我はさせないよ。それなりに痛い思いはすると思うけど。その関係でちょっと戦い方も変えないといけないから、気を付けてね?」

「ひぃ……ニコニコしながら鬼畜なこと言ってくるぅ……主様相手じゃ、初見で対応なんかできるわけないのにぃ……気を付けてじゃないですよぉ〜……」


 情けない声でユリが呟き、鎌を構え直した。

 どうやら覚悟が決まったらしいので、ヴェルディーゼが微笑みながら戸惑ってばかりの悠莉と龍也に視線を向ける。


「適当に開始の合図もらってもいいかな? その方が公平だし」

「じゃあ、俺がやる。準備はいいか?」

「はい」

「……用意、始め!」


 短い号令とほぼ同時に、ヴェルディーゼが動いた。

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