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最高位邪神と転生眷属のわちゃわちゃはちゃめちゃ救世記  作者: 木に生る猫
再会の世界

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恋愛相談と包丁

 龍也から相談があると聞き、ヴェルディーゼが魚を正面に、横目で龍也の姿を捉えながら耳を傾ける。

 すると龍也は、ぽつぽつと語り始めた。


「その……ヴェルディーゼ、さんは……ユリさんと、ちゃんと結ばれたんだろ。どう、やったんだ……?」

「……ああ。悠莉が好きなの?」

「うっ……!? な、なんでわかっ……」

「わかりやすいし。……僕のはあんまり参考にならない気がするけど……まぁいいか。死んだユリを生き返らせて、手元に置いて……少しした頃、ユリが攫われたんだ。そいつは僕を殺すためにユリに拷問をして、その精神を擦り減らした。それでボロボロになった頃にようやく助けに入れて……それで、ユリは恋に落ちて、見事に両想いになった。……ほら、参考にはならないでしょ。まさか自分から彼女を危機に陥らせるわけにはいかないだろうし」


 淡々とヴェルディーゼはユリが恋に落ちた理由を語り、肩を落とした。

 偶然悠莉が危機に陥らないと、この方法は使えない。

 あまり参考にはならないだろう。


「……もっと言えば。これはユリが可愛い夢見る乙女だっただけで、悠莉がそうとは限らない。というか、ユリよりは現実的な思考をしてる気がするし……恋愛観がどうなってるかどうかは、流石に僕にはわからないけど。こっちは相談するならユリに聞いてみたら? ……というか、ユリがなんかコソコソ言ってたのって、悠莉への恋心がバレたからだよね?」

「うう……そうだよ。……でも、ヴェルディーゼさんの方が、口が堅そうだったから……それに、ちょっと相談しづらかったし」

「ふふっ。ユリはすぐポロッと言いそう? あれでも言っちゃダメなことは言わないよ。気持ちはわかるけどね。念を押すことを考えると、僕も正直大切なことは……」


 言葉を途中で止めて、ヴェルディーゼが苦笑いした。

 もし、もしも聞かれたら、ユリがとても怒りそうな発言である。

 ユリは、ヴェルディーゼに隠し事をされたくないらしいので、どうしても漏らされてはいけないこと以外はちゃんと伝えるつもりではあるが――なんて、ヴェルディーゼがユリのことで思考がいっぱいになりかけて、軽く頭を振って思考を切り替える。

 とりあえず今は、引き受けたからには龍也の相談に乗らなければならない。


「……そうか。危機を……助ければ……」

「わざとそんな状況に追い込もうとしてないよね。嫌われるだけだよ」

「し、してない! ただ……機会が無いわけではないと思ったんだ。悠莉姉ちゃんより、俺の方が戦いには向いてるし……役割的に、悠莉姉ちゃんを守る立場だからな」

「ふぅん? ……とりあえず、それ以外についても話すけど。中々難しいとは思うんだけど……その呼び方、恋仲になりたいならやめた方がいいんじゃない?」

「え? あ……」

「それじゃあ、弟扱いされるだけ。異性としては、見られづらくなると思うよ。……僕は、ユリが初恋の相手だし。言えるのはこれくらいかなぁ……」

「……参考に、なった。ありがとう。……魚、そろそろ量もいい感じだから、そろそろ戻ろう」

「あ、そう? じゃあ戻ろうか」


 龍也が戻ろうと声を掛けると、ヴェルディーゼが魚を眺めるのをやめて立ち上がった。

 そして、一緒にテントのある方へと向かっていくと、テントを片付けている二人の姿が見えてくる。

 先にユリが二人の姿に気が付いて、満面の笑みを浮かべながら駆け寄ってきた。


「おかえりなさいっ、主様! リューくんも! 朝食の調達に行ってきてくれたそうですね、お疲れ様でした! 今、お料理の準備をしますからね! ……ん、お魚……捌かなきゃですよね。髪の毛汚したくないな……」

「あ、結莉。私の貸してあげるね。持ってないでしょ?」

「いいんですか? ありがとうございます!」


 悠莉がリボンを取り出しながら言うと、ユリが笑顔を浮かべながらそれを受け取り、軽く手で髪を整えてポニーテールにした。

 ヴェルディーゼがジッと露わになったユリの首筋を見つめる。


「……ちょっと、主様? 見すぎですよ、その視線やめてくれませんか?」

「いや、下心とかじゃなくて。普段見えないから……やっぱり肌綺麗だね」

「……え、えへへ」

「その髪型も可愛い……けど、それより纏めちゃった方が良いんじゃないの? 魚捌くんだよね、揺れて血とか付かない?」

「髪の毛長いからお団子にするとちょっと重くて嫌なんですよね。慣れてるので大丈夫です」

「なら……いいんだけど」

「あ、そうだ主様。お魚捌くと手が生臭くなっちゃうんですけど……消臭とかって、どれくらいの負担が……」

「いいよ、やってあげる」


 ヴェルディーゼがそう言って微笑むと、ユリが嬉しそうに笑った。

 そして、袖を捲ると意気揚々と魚を捌いていく。

 どうやら手慣れているようで、その手の動きには迷いがなかった。


「……ユリ。包丁持ってて大丈夫?」


 ふとヴェルディーゼが尋ねると、ユリが首を傾げた。

 そして、ユリがハッとすると、包丁がその手から離れそうになる。

 ユリは、鎌以外の武器は使えない。

 武器になるものを持っている状態で、それを武器だと認識してしまったら――


「ふひゃあっ!?」


 吹き飛びそうになった包丁をユリの腕ごと押さえて、ヴェルディーゼが息を吐き出した。

 すぐ傍に見えるユリの表情が、見る見る内に顰められていく。


「……主様。意識させないでください。魚ごと吹き飛ぶところだったんですけど」

「ご、ごめん。気になって……」

「……むぅ」


 ユリがヴェルディーゼを睨み、少ししてから溜息を吐いて作業を再開した。

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